「スニーカー」
汽笛は遠くに聞こえ
茂みの中に鈴音の虫たち
宵闇に響く賑やかな
賑やかな静寂
星はこぼれ落ち
過去へと余韻を残し
未来へ消え去る
うなじをくすぐる風に
季節の囁きを聴けば
振り向いてみても
待ってはくれない
置き去れた感情は
鈍くくすぶり
連れ去れた希望に
追いすがろうとも
その影を踏むことはない
でも、絶望は感じない
オキザリスが眠った側では
宵待草が思い思いに月へ語り
待ちくたびれた芙蓉の花が
恥ずかしそうに顔を隠すと
キミガヨランの微笑みを誘う
金木犀の艶やかな香りに振り返ると
明日がそこまで迎えに来ていた
さぁ帰ろう
夜露に濡れたスニーカー
一歩踏み出せば
星が一筋夜空に差した
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