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『不老不死の檻』6

 

  対決

 ジャックは、アーロンの冷たい視線を感じながら、ニューララインの能力が脳内で全開になるのを待った。微かな電子音が耳元で響き渡り、視界が一瞬でクリアになる。

 「やってみろ、ジャック」

 アーロンが冷酷に言い放った。

 警備員たちは銃を構え、一斉にジャックに向けて狙いを定めた。その瞬間、ジャックの世界はスローモーションのように変わった。彼の脳は瞬時に状況を分析し、最適な行動パターンを計算した。

 ジャックは一瞬で警備員の一人に向かって飛びかかり、彼の腕を捻じ上げて銃を奪った。ネオリンクの強化された筋力と反応速度が、彼を超人的な戦闘マシンに変えた。奪った銃で他の警備員を狙い撃つと、彼らは次々と地面に倒れた。

 「警備員の数は?」

 ジャックはニューララインの能力を使った遠隔通信でサラに尋ねた。

 「5人、廊下の角にもう2人いるわ。気を付けて!」

 ジャックは警備員の一人の無線を取り、廊下の角に隠れている敵の位置を確認した。彼の脳は即座に戦術を計算し、最も効率的な経路を描き出した。ジャックは無駄な動きをせずに廊下を駆け抜け、残りの警備員を制圧した。

 「アーロン、お前のゲームは終わりだ」

 ジャックは冷たく言い放った。

 アーロンは初めて、ジャックの前で恐怖の表情を見せた。彼は後退し、背後の壁に追い詰められた。

 「お前には分かっていない。私は人類の未来を救おうとしているんだ!」

 「お前のやり方では、人類の未来は暗闇に沈むだけだ」

 ジャックは答えた。 

  回想

 ジャックの心に過去の記憶が蘇る。

 俺は戦場での激しい戦闘の最中、爆風に吹き飛ばされて地面に倒れた。目を開けたときは病院のベッドに横たわっていた。全身に重度の損傷を負い、寝たきり状態だった。

 俺は最先端の医療技術に賭けるしかなかった。

 脳も損傷したため、ほとんど意識を失っていたが、薄れゆく意識の中で、ニューララインの実験台になることに同意した。その時、アーロン・メイフィールドが目の前に現れ、冷たい声で言った。

 「君は選ばれたんだ、ジャック。人類の未来を担う実験台としてな」

 俺はニューララインの技術によって劇的に回復し、強化された能力に驚く日々が続いた。しかし、その背後には冷酷な計画があった。アーロンは俺を単なる道具としてしか見ていない。そのことに気づいたとき、俺は決意した。俺のような犠牲者を出さないために、奴を止めるのだと。

 サラはジャックの肩に手を置きながら、自身の過去を思い出していた。

 私はニューララインの主任研究員として、アーロンのビジョンに共感していた。しかし、ある日、研究所が実験の失敗を隠蔽し、被験者たちを犠牲にしている証拠を見つけた。そしてアーロンがニューララインを人類の未来のためではなく、自らの権力と永遠の命を求めるために使っていることを知った。

 アーロンは私にその証拠を隠すように命じた。でも私は良心に従って反抗した。

 「私たちの技術は人々を助けるためのものだ。彼らを犠牲にしてはならない」と訴えた。

 しかしアーロンは冷酷に笑い、「科学には犠牲がつきものだ、サラ。君はそれを理解しなければならない」と言い放った。

 私はその瞬間、アーロンの本当の姿を見た。そして、自分の良心と誇りを守るために、ジャックと手を組むことを決意した。

 リンダはアーロンを見下ろしながら、自身の過去を思い返していた。

 私はかつてアーロンの右腕として働き、ニューララインのサイバーセキュリティを担当していた。アーロンのビジョンに魅了され、彼のプロジェクトに全力を尽くしていた。だが次第に彼の手段が暴力的になり、非人道的な実験が行われるのを目の当たりにした。

 ある日、私は実験の犠牲者たちのデータを発見し、アーロンを問い詰めた。

 「これは許されない。私たちは人々を助けるためにここにいるんだ」

 しかし、アーロンは冷淡に答えた。

 「理想を持つのは結構だが、現実を見ろ。私たちは未来を作っているんだ。多少の犠牲は避けられない」

 私は命の危険を感じ、ニューララインを去った。しかし、アーロンの陰謀を暴くための地下活動を続け、ジャックとサラに接触した。そして彼らと力を合わせてアーロンの計画を暴露することを決意した。 
  

  決着

 現実に戻ったジャックは、深い息をついて決意を新たにした。

 「アーロン、お前のゲームは終わりだ」と冷たく言い放った。

 ジャックの手がアーロンの首に伸びた瞬間、サラの声が彼の耳に響いた。

 「ジャック、ダメ!彼には法の裁きを受けさせないといけない!」

 ジャックは一瞬ためらったが、彼の手はアーロンの首から離れた。

 リンダもアーロンの方を向き、静かに頷いた。

 「これで終わりではない。これからが始まりよ!」

 アーロンは怯えた表情で彼らを見つめ、震える声で「私には…言い分があるんだ…」とつぶやいた。

 「それは裁判所で話してね」

 サラが冷たく言い放った。

続く




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