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雑談#10 2023年「今年読んだ本」

 2023年ももうすぐ終わるので、「今年読んだ本」をまとめておこうと思う。新しい本を買う余裕はあまりなかったが、逆に長年にわたって積読されていた本をようやく読めたという点ではよかった。なお、一部図書館で借りて読んだものもある。

「あきらめない」鎌田實
 父ががん闘病中だったため、希望を持ち続けるために読んだ。父は1月25日に世を去ったが、お正月に「今年も生きたい」と言っていたことを思い出す。

「日本人と参勤交代」コンスタンチン・ヴァポリス
 以前図書館で借りて読んだが、とても面白かったので手元に置くため購入、再読。参勤交代は幕府が諸大名の財政力を削ぐためと習ったが、それだけではなく軍事教練として、また文化の担い手、運び手として、参勤交代が江戸時代に日本をどのように変えていったか、さまざまな視点から研究されていて示唆に富む。

「犬の生活」マーク・ストランド
 ずいぶん昔に買って積読されていた短編集。ふわっとした短い小説の、よくわからないまま終わる雰囲気が、父を亡くして呆然としているとき、心に馴染んだ。

「僕はいかにして指揮者になったか」佐渡裕
 父の本棚にあった一冊。指揮者、佐渡裕の自伝的エッセイ。

「源氏物語を読み解く」秋山虔 ・三田村雅子
 NHK「100分で名著」源氏物語の回に登場した三田村雅子さんが、対談形式で源氏物語を読み解く。源氏物語がすっかり頭に入っていないと、話のキモがつかめない。

「ママがプールを洗う日」ピーター・キャメロン
 20代のころタイトルに惹かれて買ってそのまま積読されていた本をようやく手に取る。どことなく切なく、人と人とが向かいあいながらすれ違っている感じが、心地よかった。

「殿様の食卓 将軍の献立から饗応料理まで」山下昌也
 映画「武士の献立」を見て興味を持ち、手に取ってみた。意外に質素な将軍様のお食事、淡々とした記述がつづき、やや退屈で読むのに時間がかかった。

「ネット右翼になった父」鈴木大介
 亡くなった父のパソコンを開くと、ネット右翼に好まれるコンテンツが続々と‥‥、その絶望感を描いた雑誌の記事の反響を受け、なぜ父がネット右翼になったかを追いかけたノンフィクション。貧困女子などを取材するリベラルなジャーナリストの息子へのマウンティング行為を死ぬまでやめなかった父親が哀れすぎる。

「アドラー心理学入門」岸見一郎
NHK「100分で名著」アドラー心理学の回に登場した岸見一郎さんによる解説書。わかりやすく、人間関係でいろいろ難しいところにある人にとっては役立つことが多いと思う。境界線の引き方とか。

「戦闘美少女の精神分析」斉藤環

「スキタイと匈奴 遊牧の文明」林俊雄
 古代史に登場する謎の遊牧民「スキタイ」と「匈奴」は同じ民族なのか、それとも違うのか、というところから、文字や都市の遺跡を残さない遊牧民の歴史とその文明を紐解いていく。ウクライナにあるというスキタイの黄金の動物文様の首飾り、見てみたい!

「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」河野啓

「十大事故から読み解く山岳遭難の傷痕」羽根田治
 登山をするわけではないが、羽根田治さんの文章が好きなのと、遭難という状況がなぜ起こるか、その人間心理に興味があり、つい手に取ってしまう。知っている話も多かったが、面白かった。それでも年々山岳遭難は増える一方というのがなんともいえない。

「ロードス島攻防記」塩野七生
 これも大昔に買って積読していた本。塩野七生「コンスタンティノープルの陥落」の後、地中海に残るキリスト教世界の最後の砦、ロードス島をめぐる戦いが描かれる。青年貴族オルシーニとアントニオの、変化していく微妙な関係に引き込まれた。

「ガンダム者 ガンダムを創った男たち」

「ウクライナ戦記 不肖・宮嶋 最後の戦場」宮嶋茂樹
 ヒゲの隊長、佐藤正之を有名にした戦場カメラマン、ウクライナに行っていたことを知り写真展を見に行き、この本を購入。戦場に行くということのリアルが伝わる。

「愛しすぎる家族が壊れるとき」信田さよ子
 毒親、という言葉を知るきっかけは、この人の本を読んだことだった。親との関係と自立していくこと、ということには常に関心があり、この本を手に取った。愛しすぎる、という言葉。そこには支配がある。

「織田信長と安土城」秋田裕樹
 私の歴史好き、城好きの原点は、大学時代にこの先生の授業で学んだことかもしれない。今年から、安土城の「令和の大調査」が始まるというので、「平成の大調査」以前に書かれたこの本を再読。発掘前にもかかわらず、発掘調査後に明らかになった城郭の全貌を、現地の遺構と文献から推論していて、すばらしい。今も読む価値のある一冊。

「この世をば(上)(下)」永井路子
 紫式部の人生を描いた小説が読みたい、という母のために探したら、間違って藤原道長の人生を描いた小説を購入してしまった。だが読んだらとっても面白い! 平安貴族の生活、文化、政治、女性との関わり方。摂関政治で頂点に立った人、としか知らなかったけど、意外に波瀾万丈な人だった。

「神になった織田信長」秋田裕樹
 ルイス・フロイスの記述から、織田信長が神として自分を拝ませた、とは実際どういうことだったのかを、さまざまな観点から解き明かす。戦国エンタメ王信長の姿を明かした原点かもしれない。

「硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ」酒井聡平
 硫黄島の遺骨収集について独自に取材している北海道新聞の記者さんのツイッターをフォローしていたのだが、ついに書籍が出版され、ようやく購入。遺骨収集がなぜ進まないのか、という話から、戦後の硫黄島にまつわるミステリーが解き明かされてゆく渾身のノンフィクション。ところで今年奇しくも噴火により新しい島が誕生しているらしいが、そうなると地下に埋もれた遺骨は‥‥?

「愛という名の支配」田嶋陽子
 「そこまで言って委員会」でおなじみだった田嶋陽子さん、実は著書を一度も読んだことがなく、自分的にフェミニズムにも関心が高まってきたこともあって手に取ってみた。実は今でいう毒親育ちの田嶋さんが、それに気づいて自らを解放していくプロセスが描かれて、生きづらさを感じている人にもおすすめ。

「どうして男はそうなんだろうか会議」澁谷知美・清田隆之
 男が生きづらい、という被害者性を訴えつつ、その原因を女性に求めて女性に対して加害するという状況が顕著になる中、それってどういうことなの、ということを赤裸々に暴いていく。男同士の中での被害体験、自分で自分をケアできない精神性など、面白い視点が盛りだくさんだった。

「アダルト・チルドレン 自己責任の罠を抜け出し私の人生を取り戻す」
信田さよ子

 アダルト・チルドレンという言葉を知ったのは、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」がブームになり、解釈本が社会現象を起こしたときだったが、その言葉を広めていったのが、信田さん。なんとなく知ってる、という言葉の意味と、そこにある人々の問題を見つめながら、自分の人生をまさに、取り戻してくれるきっかけをくれる、名著かもしれない。

「ドライブイン探訪」橋本倫史
 昨今、道の駅に押されて次々と姿を消しつつあるドライブイン。全国に点在するドライブインを訪れ、その盛衰と、そこに訪れる人々が編み出してきた歴史を追いかけた旅行記。行ってみたくなります。

「物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国」黒川祐次
 ウクライナのことを知るために、と思い手に取ったものの、読み切るまでに時間がかかってしまった。しかしその多様性と、複雑に入り組んだ歴史を知ることは、これからの世界を考える上でも大事なことと思う。サムライにも似たコサック、未曾有の原発事故、と日本との共通点も多い。ゼレンスキー大統領の俳優時代のドラマ「国民の僕」でもたびたび日本のことが持ち上げらていたが、彼らに関心を向け、手をさしのべられる日本でありたいと願う。


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