おやすみ、ゾンビの兄弟

　あるところに、ゾンビの兄弟がいました。
　なんでゾンビ？
　それはゾンビのお父さんとゾンビのお母さんから産まれたからです。ゾンビのお父さんとゾンビのお母さんのお父さんとお母さんもゾンビでした。そのまたお父さんとお母さんも。それは由緒正しいゾンビの家系だったのです。
　ゾンビの兄弟はとても仲良しでした。なぜなら、ゾンビの兄弟は学校で友達ができなかったから。お互いがお互いの友達になる他なかったのです。
　どうして？
　ゾンビの兄弟はいつも腐った臭いを撒き散らしていたし、蛆虫をぽとぽと落としながら歩いたし、しょつちゅう腕や足をどこかに置き忘れたりしたからです。ゾンビの兄弟以外の学校にいる人達は、みんなゾンビでない人でした。腐っていない、新鮮そのものの人間たち。そんな人達からみると、ゾンビの兄弟はとてもおぞましいものだったのです。だから、ゾンビの兄弟には友達ができませんでした。体育の時間がゾンビの兄弟は大嫌いでした。あんまり速く走れないのもその理由の一つだけれど、二人一組になって何かをすることが、体育の時間には多いからです。そんな時、ゾンビの兄弟は決まって一人ぽつんと取り残されることになりました。ゾンビの兄弟は仲良しだったけど、この兄弟は双子ではなかったので、別々の学年にいたのです。だから、体育の時間に二人が一緒にいることはできなかったのです。もしも二人一緒にいられるのなら、ゾンビの兄弟は二人で組を作ったことでしょう。しかし、それができないので、結局先生と組になってやることになってしまうのでした。それがゾンビの兄弟は嫌いでした。なぜわざわざ自分が一人ぼっちなのを確認しなければならないのか、とゾンビの兄弟はそんな時必ず思ったものでした。
　ゾンビかわいそう。
　かわいそうなゾンビの兄弟でしたが、味方もいました。ゾンビの兄弟たちとは別のクラスだったけど、学校にはエイリアンの女の子がいました。彼女はゾンビの兄弟に同情的でした。エイリアンの女の子にもあんまり友達がいなかったからです。でも、エイリアンの女の子はとても小さかったし、違うクラスにいたので、ゾンビの兄弟はエイリアンの女の子の存在を知りませんでした。
　ゾンビの兄弟は
　うん
　もう眠たいかい？
　ううん
　寝よう
　お話続けて
　明日は学校だろ？
　うん
　早く寝ないと
　うん
　さあ
　ねえ
　なんだい？
　ゾンビの兄弟は幸せになれる？
　もちろん、みんな幸せになれるさ
　おやすみなさい
　おやすみ