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苦味ーにがみ

この前、「フランス20年以上在住の日本人シェフが、昔はもっと複雑な味を客は好んだが、ファーストフードの影響で最近はわかりやすい味が好まれていると言っていた」というつぶやきを見つけた。

これを読んだとき、ああ、確かになと共感すると同時にイタリアで食べたとあるパスタの味が急に思い出された。

それは20年前、イタリアのヴァレーゼというミラノ近くの都市にある、なぜかプーリア料理専門のレストランで出されたものだ。

紫キャベツのような野菜(おそらくそれはラディッキオだろう)とクルミのソースで和えたショートパスタ(パスタの名前どころかどんな形をしていたかも覚えてはいない)が衝撃だった。
このラディッキオをいう野菜は苦みが特徴なのだが、これから醸し出される苦みが旨いのだ。
今まで苦みがある料理はもちろん日本でもある程度食べたが、特に好んだこともなかった。
どちらかといえば、それまで苦味というものは敬遠しがちな味で、「良薬口に苦し」という言葉にもある通り、「不味さ」の代名詞でもある。
だが、この料理は苦味がなくなったら意味がなくなるくらい、苦味が活かされたものだった。
初めて苦味が旨いと感動した出来事だった。

前述の「複雑な味」とは、必ずしも最初口に入れた時からすぐ「美味い」と感じられるものではなく、最初は「?」となり、ゆっくり咀嚼して、味わい、そこにある本当の旨さ見つけていくことなのかなと思う。また、その行程と発見が楽しいのだと。

食べたことのない旨さに出会えるのは何というか嬉しさと感動がある。
この料理を食べられただけでも、イタリアに来られて本当に良かった。

あれから20年経った。
もし、またヴァレーゼに行ったらあのレストランで同じ料理が食べられるのだろうか...

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