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書いたものを置いておきます

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最近の記事

掲載短歌2首

本当は、「祈りとはあなたが降りた地下鉄でふと直してる前髪のこと」にしようと考えていたのですが、一つずれたメモ書きをそのまま投稿してしまいました。筆者が目撃した実際の情景を詠んだものです。 この時期は池尻の辺りのLIFEに通っていて、その時に目撃した情景です。七七の部分は、千家元麿による詩「星よ」を意識したものです。この詩との出会いは確か書道漫画『とめはねっ!鈴里高校書道部』(小学館, 河合克敏)を読んでいた時だったと記憶しています。

    • くまとハチ公前で待ち合わせる

       くまとハチ公前で待ち合わせる。本当は余裕を持って着いておくつもりだったけれど、時間の見立てが甘くてぎりぎりになってしまった。エスカレーターを駆け降りて、横断歩道の向こうにくまを見つける。遅れてごめんなさい、と駆け寄っていくと、文庫本を離れて街頭の時計、そして私の顔へと視線を巡らせ、 「約束の時間には間に合っているかと思いますよ。」 とにっこり笑ってくれる。人混みの中でなんとなく体を細めてはいるけれど、それでもくまはとても大きい。電車なんか大変でしょう。私がそう言うと、「むし

      • 睡蓮

         どうしようもない焦燥感が胸から溢れ出した。無論覚悟の上で行ったはずではあるものの、本当の過ちを犯した時は、すぐにそれとわかるものだ。  絵の中へ引き込まれてしまったのだ。同じ部屋に同じ画家が同じ池を書いた別の絵があって、そっちは随分大きかったけれど、絵の具が半分ぐらい剥げてしまっていたし、なんだかぼやけていた。しかし、この絵はついさっきまで筆を入れられていたように瑞々しかった。なんて綺麗だろうと思ったのだ。この純潔を、誰にも汚さないでほしいと思ったのだ。そして、俺が汚した

        • 金魚掬い (冒頭一文は空音 / Hug feat.kojikojiより引用)

          『パンイチ小僧が走り回る地球はエイリアンによって侵略されました。』 中学生の頃、クラスで流行っていた歌がまさか本当になるとは思わなかった。突然やってきたエイリアンは、瞬く間に地上を支配した。僕らは裸にされ、エイリアンが建設したドームの中に集められた。ドーム上部には窓が付けられていて、外の天気や昼夜がわかるようになっていた。不思議な素材で出来ている壁のおかげか、内部は常に春先のように暖かかった。食料は一日に二回十分な量が降ってきた。ドーム内のあらゆる場所に落ちてきたし、欲張る

        掲載短歌2首