すべてのものに強みはある

街を歩いてて見つけた、ある小さな電気屋の看板を見て感動しました。

「エアコン即日取り付け可能！」

これ、めちゃくちゃ良いUSPじゃないですか？

（USPとは「対競合優位性」のことです。Unique Selling Propositionの頭文字の略称です。競合にたいして優位にたてる、勝っている訴求要素のことです。「ほかの店にいくよりもうちで買ったほうがいいですよ、なぜならこういう良さがあるから！」と伝える部分です）

街の電気屋は、もうずっと苦境にたたされていると思います。
大型電器店のほうがやすいし、ひろいし、品揃えはあるし、サービスも十分。
多くの人は電化製品を買おうと思ったら大型電器店にいってしまいます。
第一想起がどうしても「ビックカメラ」とか「ヤマダ電機」とか。そういうところになってしまいます。

そんな辛い逆境のなかで、この電気屋が見つけたUSP。

大型電器店でエアコンを買うと、工事まで時間がかかってしまいます。
ひどいと1ヶ月後にしか設置できません、とか全然あります。
なので大型電器店は、「自社にとっての都合」で、
「早めにエアコンを買いましょう！」とかいうのです。

でも、その「早めにエアコンを買え」ってなかなか理不尽ですよね。
大型電器店の論理でしかないですよね。
こっちは欲しいと思ったときに欲しいのに。
なんであなたがたに合わせて1ヶ月も前から買わないといけないのか、と思うことはできますよね。

それに対して、街の電気屋なら、買ったそばから即日で設置までしてくれるのです。
それを聞けば、たとえちょっと高くても、そっちで買おうと思う人はいるはずです。
急に欲しくなったときに、それに応えてくれる人は、頼りたくなります。

ふつうに考えたら、「街の小さな電気屋」vs.「大型電器店」では、圧倒的に「街の小さな電気屋」のほうが不利です。
そんな多くの割引ポイントもつけられないし、店としての楽しさももしかしたら全然負けているかもしれない。最新の商品についての知識も負けているかもしれません。

でも、想像ですが、そんななかである日、お客さんに言われたのだと思います。

「エアコンをビックカメラで買おうとしたんだけど、設置工事が1ヶ月後っていわれてて困っていたんです。どんどん部屋が暑くなっちゃって、これはまずいって思って探していたのに、1ヶ月後じゃ遅すぎると思って。で、だめもとでこの電気屋にきたら、即日でエアコンを設置してくれるって言われて神様かと思いました。本当に助かりました」

そこから電気屋は、「ここが大型電器店に勝てる部分かもしれない」と腹を括り、宣言したのではないかと。

「エアコン即日取り付け可能」というUSPは、USPとして「小さすぎるのでは」と思う方もいるかもしれませんが、弱き方が強き大きな方に勝つために「一点突破」で勝負を挑むのは定石です。
この言葉は、ただ「エアコン」のことだけ言っているのではありません。
そういわれることで、「他の大型家電も、もしかしたら買ったらすぐにつけてくれるのかな」という想像が広がります。
具体的な記述だからこそ、わかりやすく想像できます。
これが「なんでも即日取り付け可能！」だったら、ちょっと信頼性が落ちますよね。そんなわけないし。

どんなに小さなお店でも、どんなに資本では負けているお店でも、そのお店だからこその強みは、探せばあるものなのだと考えさせられました。

そんな賢さとたくましさを、「エアコン即日取り付け可能！」の看板から感じたお話でした。