#ちゃんと届かない

正確に気持ちが伝わることって絶対ない。自分でさえも自分の気持ちが分からなかったりするのに、他人である誰かにちゃんと伝わるなんてどんな奇跡だ。

でもそれでいい。私は全然やさしくないから、すべてがちゃんと伝わってしまう世界だったらこわい。ちゃんと届かない、それぐらいがちょうどいい。

今日はそういう、ちゃんと届かないを作ったので そこにいたるまでの考察を書きます。

考えうる届かないを考えてみる(今回は手紙に限定)

ケース１.物理的に届かない
日本の郵送システムは大変優秀であるが、ごくまれに紛失・誤送が起きる。もしくは、誰かの何らかの意思によって隠される、捨てられる、盗まれる。(基本的には性善説で生きてゆきたいものですが、そうではないこともあるのが人生です)または自分の記憶の倒錯によって投函した気になる。自らがヤギだった場合は誤飲なども考えられる。

ケース2.そもそも届ける意志がない
書いてはみたものの恥ずかしくなって送れない。自分の気持ちに整理をつけるために書いただけで、送る前に満足してしまった。お気に入りのはがきはいつまでも手元に置いておいて眺めていたい。など

ケース3.正確な意図で相手に届かない
直接話すと簡単に伝わるニュアンスも文章になることで往々にしてねじれる。
てにをはが一文字違っただけで、いくらなんでもそれは無いだろう…というアンジャッシュ状態がいとも簡単に起きる、それが文章の恐ろしいところである。

これらのいくつかの理由によって、実はちゃんと届いている手紙こそ限りなくゼロに近いことが分かる。なのでこれを読んでくれている方、ほぼ全員に#ちゃんと届かない経験があるといえる。

以上が何でもまわりくどくしてしまう私の考察でした。

既にここまで長い長い無駄話を読んでくださっている、奇特なあなたへお知らせします。

当たり前のように手紙は届くものだと勘違いしていますが、事実こんなに届かない！
…ということで、最初からちゃんと届かない前提のはがきを作ることにしました。

#ちゃんと届かない は、ちゃんと届かない前提なのでいつまでも気楽に持っていられます。懐かしい誰かへいつか手紙を書こうが、ずっと家の片隅に置かれていようが、毎日見かける冷蔵庫に貼ろうが、ストレス発散に破り捨てようが、届けようが届まいがすべてがおっけーのそういうはがき。

そして、今回は週末を少しだけやさしくするウィークエンドテンダーという5月9日・10日の二日間だけ開催されるオンラインマルシェで
「#ちゃんと届かない 海の街」と

「#ちゃんと届かない 風と花」

を販売することになりました。

こちら から二日間だけ買えます。

ちゃんと届かないはがきと同時に、誰かが誰かに送ろうとしていたかもしれないはがきの複製も一緒に送られてきます。本来あなたに届くはずのなかった手紙の盗み読みができます。

と、さも特別かのように いろいろ言ってますが、考察の通りだとだいたいのものが#ちゃんと届かないなので（笑）別に今回のはがきでなくともちゃんと届かない をみつけた際には よければハッシュタグをつけてつぶやいてみてください。

私がただ見てニヤニヤして楽しむだけなんですが、見かけたら話しかけちゃうかもしれないです。それが苦手な人は見つけた時にひっそりと、あ…ちゃんと届かないだ…って思い出してくれるだけでしあわせです。
あなただけの楽しみ方で #ちゃんと届かない に参加してもらえたらこんなに嬉しいことはありません。

わたしたちは無意識でちゃんと届かないことを分かってるから、伝えることをやめないでいられる　そしてやめないことを続けることが、届くかもしれない奇跡を諦めない唯一のことに思えて仕方がないです。

この前テレビをつけたら、こちら側に信じるかどうかを委ねてくる番組の再放送がやっていて、そこでは脳細胞とAIとを組み合わせて自分の脳と他人の脳をリンクさせ、感情や情報の送受信を行う研究が進められていると言っていました。
どこまでを人間の支配領域にする気なんだと目眩を覚えながらも、そういうのに抗えなくなる未来が来るまで私はちゃんと届かないでいようとぼんやりと、しかし確かに決意したのでした。