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加法定理が腑に落ちた時には、すでに大学受験も過ぎ去っていました(3)

 前の記事では、準備としての回転変換の復習を、かなりいい加減ではありましたが一応行ってみました。今回の記事は、いよいよ目的でありました加法定理についての自分語りです。

加法定理と座標の回転の関係

 元の座標系$${O}$$と回転後の座標系$${O'}$$の関係を示している図2を再掲します。

図2再掲

この図をじーっくりと眺めていると、回転変換の式が段々あぶり出しの様に見えてきます。以下の様な最終形態でした。

$${\begin{pmatrix}a'\\b'\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}}$$

 この回転変換の考え方を用いることで、三角関数の加法定理について筆者が「なるほど!」と思えるようになったのは、最初に高校で習ってから10年のオーダーの年月が経過してからでした。
 それまでは意味の理解から逃げて丸暗記して問題を解いたりする為のツールと割り切っていたわけです。少しだけ恥ずかしい告白です。昔、京都の地名の太秦の読み方がわからず人前で恥をかいたことがあるのですが、それに匹敵する羞恥です。こちらは読みは、うずまさ、です、よね? 心の傷は残っているので、正しい読み方を知っている今でもまだ、間違っているのではないかという恐怖心から完全には解放されていません。
 話を戻します。
 座標の回転変換について、ここまでの話題では一般論としての角度$${\theta}$$だけ回転した座標の場合の変換について記述してきました。この$${\theta}$$はなんでもよくて、回転角が1°でも90°でも270°でも、そこから然るべき各成分を算出して置き換えたこの回転行列を左から掛ける、という回転変換の手順は成立します。
 したがって、座標の回転角が$${(\alpha+\beta)}$$という角度であった場合にも、この座標変換は成立することになるわけです。45°+27°であるとか60°-25°とかの回転変換も記述できるという意味です(素直に72°とか35°とか書けばいいのに、意味はまったく一緒ですし)。
 この様な2つの角度をあわせて一度に回転変換するようなイメージを図5に示してみます。原点が微妙にずれていますが、単なる味わいというやつです。

図5

 図中の赤い角度$${\alpha+\beta}$$による$${O}$$系から$${O''}$$系への回転変換と考えると、行列形式の回転変換の式は次の通りになりますね。

$${\begin{pmatrix}a''\\b''\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos(\alpha+\beta)&-\sin(\alpha+\beta)\\\sin(\alpha+\beta)&\cos(\alpha+\beta)\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}}$$

 同時にこの変換は、中間に$${O'}$$系を置いて、$${O}$$から$${O'}$$への角度$${\alpha}$$の回転変換に引き続いて$${O'}$$から$${O''}$$への角度$${\beta}$$の回転変換を2段階で行うのと同じことなのが図5から直感的に明らかなわけですが、その場合は

$${\begin{pmatrix}a'\\b'\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\alpha&-\sin\alpha\\\sin\alpha&\cos\alpha\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}}$$

をやってから

$${\begin{pmatrix}a''\\b''\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\beta&-\sin\beta\\\sin\beta&\cos\beta\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a'\\b'\end{pmatrix}}$$

をやるんですよね。この2つを合成すると、

$${\begin{pmatrix}a''\\b''\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\beta&-\sin\beta\\\sin\beta&\cos\beta\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\cos\alpha&-\sin\alpha\\\sin\alpha&\cos\alpha\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}}$$

という変換になって、この2段階の変換は式中に見えている2つの行列の掛け算を実行して1つの行列にすれば角度$${(\alpha+\beta)}$$の一発変換の行列と各成分を対応させて比較ができるのですが、やるとどうなるでしょう。
 文字数が想定外に増えてきたので、申し訳ありませんがもう1回次の記事に続きます。$${\LaTeX}$$の数式記述が文字数カウントに効いているだけかもしれませんが、まあ、原則通りに一旦切ることといたします。


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