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M君との対話 No.0 - 話しの前提、経緯とか

家を壊す、《よみ人知らず》の私として、{そして、それでも}猶、《よみ人》である、私は、《わたくし(≠わたくしたち)》、を


M君は、僕が出張喫茶でお借りしているアートハウス、その名の通り喫茶も兼ねたギャラリー、そこで昨年末か今年頭の展示を介して知り合った。
M君の二度目の、7月くらいだったかの展示の後、展示制作とその日々の記録を媒介にして、僕との対話を試みてくれた。対話は、M君の今も継続中の制作の一部として企画されたもの。だから発表されるのかな、確か博士課程の修論で使用されるのだったか、もしそうなら一般に見られる機会は少ないんじゃないか、と思う。

対話とされたそれは僕には楽し過ぎて、対話というよりお喋りだった、お喋りは4時間を超えてたと思う、録音を書き起こすことが決まっていたM君は、長いなこれは大変だ、と途中で思っていたかも、というのも展示からもその繊細さと緻密さが徹底していたM君が、文章として書かれた言葉と違ってときに脈絡が飛んだりなかったりするお喋りを、それも4時間分!(そのあいだ、僕がほとんど喋ってたと記憶している。途中で「俺、喋りすぎだ」と思ったくらいだった)言葉に書き直すのだ。話し言葉には語尾や主語に一貫性がなかったり、前後の脈絡を前提とした表現だったり、そもそも話し言葉には句読点も改行もない。それをどうするか、

この間郵送してくれた14ページにわたってびっしり記されたその記録を読んだ、読み始めてすぐ、これは僕の喋り方そのままに書き起こしてくれてる、と感じた。それは、いま打ったように、聞こえてきた声をただ言葉に置き換えるだけの作業ではない。やったことないけど。文章は書いてるから、それはわかる。こんなふうに書きたい、と思う文章になっていた、その膨大な文章を送ってくれて、
それがまぁとても面白かったのだ。
僕自身が喋ったことに僕が面白い!も呆れるが、単純にまず読み物として面白くて、言ってる内容も、僕が喋ったことなのに言葉になってるのを読んで、なるほどなぁと感心してしまうところがあった。というのも、僕は喋るときに(こうやって書くときもそうだが)事前に考えたことは喋らず、そこから派生していく流れに乗っかって喋ることが大変に多いので、自分では形にしたことがなかった表現や、それまで思いつきもしなかったことをポロポロこぼす。
それで、これはもしかしたら読んでためになる、ではないけれど勿体ないなと思い、M君に公開してもいいかとメールで聞いたら快諾してくれたので、ここに載っけることにしました。で、分量が4時間超とけっこうなので分割して、マガジン?の形態にします。

M君が制作していたもの

書き起こした文章はM君の展示と日々の記録を土台にして喋ったことなので、どんなものかを知ってると話がわかりやすいかもしれない、
M君はお父さんの実家(父でも実家でもなかったかもしれない、でもとても身近な家族と関係がある田舎のウチなのは確かだ)が解体されることになって、そのための家具や荷物の整理や庭の手入れなどにM君もついていくことになって、すると思い入れのある「イエ」を壊すということ、また、それに揺さぶられるようにして崩れた地面の割れ目から土器とか化石が出現するみたいに、小さい頃の記憶だとか父親との関係などに気持ちが向かい、解体作業や整理で出てきた小さなモノを使ってアートハウスの空間にそれらを配置し、ときに手を加え、例えば解体された家の壁で作られたハコ、一枚の枯葉に細い細い糸で刺繍してあったり、障子の桟(今調べたら桟ではなくて、細い縦横のなので組子というらしい)を細工して窓に貼り付けてあったり、微妙なバランスで木材の上に窓ガラスを敷いていたり、古い句誌から抜き取られた誰が読んだかもわからないものを薄い文字にし、ただのじゃない紙に小さく印刷された俳句たち、細いタッチのスケッチ、繊細さと緻密さというのはそういうところ、
そして2年か3年かにわたる膨大な量の日記と記録。さらに対話をするにあたって、展示後の制作過程におけるM君の近況や心情が綴られた《手紙》なる手記が何通も。

それらを見て、読んで、観たもの想起したものを話す。最初に僕が生まれ育った家とその周りの街を案内し、徒然に出てきた思い出を話し、アートハウスに戻って、時折質問を挟んでもらったりしながらの、4時間を超えるお喋り。僕以外にも数人の、地元の人たちとの対話も、同じように書き起こされて、M君の制作の一部として、作品?とそれは呼べるのかわからないけれど、膨らんでいく。今もまだ終わってないだろうから、その最中。

それらを纏められて生まれることになる書籍。
この文章の一番頭の

家を壊す、・・・

はその書籍のタイトル。
そこに収められることになる(であろう)僕のお喋りを、幾つかに分けて、ここに載せていきます。



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