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寒山の書斎から。2021.11.~coldmountainstudy的今月のピックアップ。

今月は冊数は少なめ。しかも久々に文庫・新書ゼロとなりました。

これは残念なことです。

収納・費用等の問題からやはり文庫や新書で面白い本がどんどん入ってくればそれが最高なんですけど・・・最近は冊数少な目・新刊多めという傾向。文庫・新書の価格が上がっている気がすることも影響しているのかなぁ。

あ、しかし。これは新刊ですでに持っているので購入していないのですが(ライブラリー蔵書)文庫化はすごく嬉しい。是非お勧めしたいです。

内田洋子 「モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語」 (文春文庫)

自分自身が小さな村に暮らし、移動する本屋をしているのですから気にならない訳がありません。

以下引用・・・

”トスカーナの山奥のその村、モンテレッジォでは、何世紀にもわたり村の人が本の行商で生計を立て、籠いっぱいの本を担いでイタリアじゅうを旅した。各地に書店が生まれ、「読む」ということが広まった。
わずかに生存している子孫たちを追いかけ、消えゆく話を聞き歩き、歴史の積み重なりを感じながら、突き動かされるように書かれた奇跡のノンフィクション。”

本好き・イタリア好き・旅好き・・・いろんな方にお勧めしたい一冊です。

それでは今月の分、雑誌から行きましょう。

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「Coyote No.75 特集 山行 宮沢賢治の旅」 (スイッチ・パブリッシング)

”作家・宮沢賢治を大特集!山行という視点を軸に、その人物像から作品の魅力までを改めて紐解く——
今年生誕125周年を迎えた作家・宮沢賢治を特集した今号では、山行を通して自然の声に耳を傾け、創作の糧とした賢治作品のルーツへと注目。五十嵐大介へのロングインタビューやイッセー尾形、池澤夏樹ら豪華執筆陣による寄稿。そして賢治の足跡をたどるフィールドワークや旅から浮かび上がる、新たな賢治像をお届けします。”

彼の作品についてという感じではなく、彼の山とのかかわりが中心の作り。そしてそこから作品へのかかわりへ、と。
岩手・小岩井・・・大好きな辺りなんですよね。それだけでもう愉しみ。

ABU for LIFE (別冊つり人 Vol. 556) (つり人社)

”味のある釣り、味のある人生。
新旧アブファン待望の1冊! 世界のリール史に刻まれた数々に名機の強い思い入れを抱くアブフリークはもちろん、新たに味わいあふれるフィッシングライフをおくりたいすべてアングラーにアブとともに歩むフィッシングライフの楽しみ方を新提案。アブとの付き合い方、アブ鑑定術、古アブ購入&メンテナンスガイド、アブとともに楽しむ極上のフィッシングライフ……など、この1冊からさらなる世界が広がります。”

誌中取り上げられていますが自分とABUのリールとの出逢いは「釣りキチ三平」ですね。魚紳さんからプレゼントされるキラッキラのABU。「うわぁ」となって実物を置いてある釣具店ではショーケースを飽かず眺めたものです。

そして、開高健。「フィッシュ・オン!」で実際そのABUを使って世界中を釣る。シビれないわけがありません。

釣りの雑誌ですが、本とのかかわりも強い。そんなムック、そんなABUです。

今月はあと3冊。

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山室真澄 「魚はなぜ減った? 見えない真犯人を追う」 (つり人社)

”魚はなぜ減った? 見えない真犯人を追う
近年ミツバチの大量死などで注目を浴びた「ネオニコチノイド系殺虫剤」。日本の水田で広く使用されているこの農薬は魚にも悪影響を及ぼしているのではないか?と懸念した釣り人も多いだろう。

東京大学大学院新領域創成科学研究所教授である著者は、卒業論文・修士論文・学位論文のすべてを、宍道湖をテーマに書いた。そのデータを駆使し、「化学分析」という武器をもとに、釣り人が抱いた懸念と同じ疑問に切り込んでいく。

著者はデータを積み重ね、裁判の判決文のように明確な論理をもって、ネオニコチノイド系殺虫剤が水中の食物連鎖を破壊し、その結果同湖におけるウナギとワカサギの漁獲高が激減したという結論を導き出す。また、その過程では非常に興味深い注目すべき事例も次々に明らかにされていく。それは私たちが漠然と抱いている常識を覆す内容や、さらにはネオニコチノイド系殺虫剤使用以前にも他の要素で水辺の生態系が激変していた事実が明らかにされる。

SDGs、生物多様性の重要性が叫ばれるいま、本書によって著者の視点を共有し知識を得ることは、釣り人をはじめ水辺を愛する人たちの視野を広げ視界を明るく照らし考えを深め、あるべき姿の生態系を取り戻すための大きな指針となるに違いない。”

ちょっと長い引用となりましたが、コレが全てですね。釣り好きとして気にならないわけがない内容です。

釣りと川は自分にとってライフワーク。勉強し続けます。

中島岳志 「思いがけず利他」 (ミシマ社)

土井善晴さんとの対談がすごくよかったので、購入。

”偽善、負債、支配、利己性……。利他的になることは、そう簡単ではありません。
しかし、自己責任論が蔓延し、人間を生産性によって価値づける社会を打破する契機が、「利他」には含まれていることも確かです。”

土井さんとの対談でもわかりますが、”わかりやすい利他論”ですね。

この1年と少し、モヤモヤし続けたことを忘れないためにも。そのカギとなるきがするのです。

最後に、これも自分の試みの勉強・ヒントのためにも。

青木真平 「手作りのアジール 「土着の知」がうまれるところ」 (晶文社)

”市場原理主義や、社会に浸透する高度なテクノロジーによる管理化に飲み込まれず、地に足がついたまっとうな生き方をするためには、社会のなかでの「アジール(避難所)」を自分たちの手で確保することが必要ではないか。
・スピードが最優先される「スマート化」にどう抗うか?
・これからの「はたらく」のかたちとは?
・研究と生活をどう一致させるか?……
奈良の東吉野村で自宅兼・人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」を主宰する著者が、志を同じくする若手研究者たちとの対話を通じて、「土着の知性」の可能性を考える考察の記録。あたらしい人文知はここからはじまる。

ぼくらの直感は合っていました。合っていたからと言って世界が劇的には変わるわけではないのだけれど、でももうちょっと、この「土着の知」とも言うべき人間の生き物としての部分を認めないと、ぼくたちは生き残ることができないのではないか。社会を維持することだってできないのではないか。本書は『彼岸の図書館』で言語化でき始めたこの直感を、同年代の研究者と共有し、意見交換した記録です。”

自分よりはるかに不便(失礼)な場所で同じように図書館という試みをしている青木真平さん。

先月読んだ日記「山學ノォト 2」もやはりヒントに溢れていた。

自分の考えていることは残念ながら青木さんほど知的な感じではないのですが、やはり根っこの部分は同じような気がしているのです。


すっかり寒くなりましたね。

極めて読書の幅が狭い自分ですが、その狭い幅の中でこれからのことを考える時間が増えそうです。

やはり大きく影響するのはここ1年とあまりの”例の影響”でしょうか。

もちろん台風の事だって大雪の事だって原発事故の事だって忘れてはいけないのだけれど。

思った程自分のアタマというのは賢く・器用に出来ていないようなのでじっくりとひとつひとつ。

考えつつ進もうと思います。


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