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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2020年10月の記事一覧

TomoPoetry、言葉と鳥の囀り。

TomoPoetry、言葉と鳥の囀り。

言葉を一枚いちまい脱ぐ
あらわれる荒野  
風がすぎるとうつくしい骨
バイオリンのピチカートひとつ
たかく鋭く
記憶から聞こえる
きみの息ぎれ

おはようの顔を
面をはずすようにとる
あかい海流と凍った偏西風
歴史はもどってこない
半世紀のつかれ
一晩の憎悪
顔をめぐり
やがてクリームスープのおだやかさに
おちつく

真実は形にも言葉にもあらわれない
ギリシャの詩人が
扉から蹴り出された
手と顔を

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TomoPoetry、ながいバス旅。

TomoPoetry、ながいバス旅。

バスで影がとなりに隣に座る
ひとこと
どこで降りるか決めたかい
口はない
その後は沈黙したままだ
語りかけても
肩を肩で押しても
顔すら向けない

腹からタイ料理とワインが滲みだし
スーツを赤と緑の縞にする
このまま
バスの床を前へまえへとながれる
恋人を待ちわび
踊りこの絹
条から
流れつずける民族衣装と涙
拾いあつめたいのだが
影にもわたしにも
腕がない
サンダルの足を伸ばして
かなしみがひろ

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TomoPoetry、できごとはことこととことば。

TomoPoetry、できごとはことこととことば。

ことば
かくしごとは
ことことと心でころがって
こいびとが困るまで
ことごとく煮つずける
蓋に触れてはいけない
振りかえってはいけない
ことことと蒸しつずけるほうがいい
閉じた時間は
じくじくと沈むまで
じっと辛抱するほうがいい

ごはんといっしょにして
生きる意味といっしょにして
ごとごとと
ほうっておく
両手からうまれてくるものが
地をながれ死に注いでいくものが
台所で
ぐつぐつとひとりごとを

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TomoPoetry、呼吸のような風。

TomoPoetry、呼吸のような風。

きみは背をまるめて
海にむかうほそい道に
うずくまる
首に風を感じる
鋭い刃のように銀色の深夜の風
泣き叫ぶ群衆の呻めきをはこぶ風
過去から
丸い林檎の黒ぐろとした窪みから
マングローブの根と絡みあう四肢から
空に放たれた声をはこぶ
風がきみを乾かしていく

きみが抱えこんでいる時間は
何度も上下を変える砂時計のように
はじまりも終わりもない
風のさらさらという音を
すべての死者が聞く
降りそそぐ

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