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TomoPoetry、言葉と鳥の囀り。

言葉を一枚いちまい脱ぐ
あらわれる荒野  
風がすぎるとうつくしい骨
バイオリンのピチカートひとつ
たかく鋭く
記憶から聞こえる
きみの息ぎれ

おはようの顔を
面をはずすようにとる
あかい海流と凍った偏西風
歴史はもどってこない
半世紀のつかれ
一晩の憎悪
顔をめぐり
やがてクリームスープのおだやかさに
おちつく

真実は形にも言葉にもあらわれない
ギリシャの詩人が
扉から蹴り出された
手と顔をしろい土に
目をとじて
見たのは
チーズをのせた陶器の皿
もう食べないだろう
生きる意味は
見えないとわかったのだから

硬い肉体が湿った肉体を求めるように
言葉は
かたちをもとめる
言葉は朝食のナイフにそって
ゴミ箱のチキンの骨をこえ
風になる

ある朝
肉と肉が電車に押し込められる
誰も語らない
怒らない
嘆かない
まもなくナイフが入ってくるのを知っている
凍った空気をカタカタならし
電車はリズムを刻む
多分 きみが言葉を求めなくなるまで

その時
きみはきみでないだろう
あるいはあたらしいきみだろう
身をそぎ落とすことで
無言の時間によって
からっぽの記憶をかきまわす手が
触れるきみの存在によって

駅を出ると道は無限に拡がる
生きる
死ぬ
殺す
盗む
星が降りつずけ
きみが立つ星を銀の泡の流れが洗う

今日洗ったのは今日の黒い時間
一日の終わりに門にたどりつく

ねむるきみから意味と意志が洗いおとされる

おはよう
翌朝 シーツのうえに骨の形が作られる
まだきみは風のなかだ
最初
風のうなりが
言葉になる
きみは鳥の囀りを聞く

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