TomoPoetry、ながいバス旅。
バスで影がとなりに隣に座る
ひとこと
どこで降りるか決めたかい
口はない
その後は沈黙したままだ
語りかけても
肩を肩で押しても
顔すら向けない
腹からタイ料理とワインが滲みだし
スーツを赤と緑の縞にする
このまま
バスの床を前へまえへとながれる
恋人を待ちわび
踊りこの絹
条から
流れつずける民族衣装と涙
拾いあつめたいのだが
影にもわたしにも
腕がない
サンダルの足を伸ばして
かなしみがひろがるのを食い止めようとするのだが
脚はベルトで固定されている
乗客に
助けを求めるが
耳には銅貨が詰まっている
このバスは
世紀をいくつか越えて
はしりつずける
困る
隣の町の羊売り市場で降りたいのだ
わたしのプリペイドカードは
いつの間にか
かれのシルクシャツの胸ポケットに入り
わたしの鞄では
記憶と記録がオイル漬けになっている
影は
ファミリーマートでポークジンジャーの支払いを
わたしのプリペイドカードで支払った
その分
わたしの不安が
書き込まれた
もうバスから降りれないだろう
バスに合わせて
からだを揺らすカーブでは
たくさんの魂が
カラフルな記憶を売っている
わたしは
色を失うことに慣れる決心をする
眼を閉じると
真っ暗の世界に
影の静かな呼吸が聞こえる
タクラマカンの砂の音
地中海に降る灰の音
肺をめぐり
胃の伸ばし縮ませる
星はすこし傾いたまま
秋の十字路に入っていく
影にもたれていると
わたしのからだは
また少し冬に近づく
バスの下で
砕けた骨が
ジャラジャラ鳴っている
その先にトンネルがある
氷の管楽器が
歓迎するだろう
おつかれさまと
万華鏡のような羽が降り
影とわたしは
ゆったりのぼっていく
肉体のない鳥
地の湿りを
思い出す
青ガラスの星から雨があふれ出す
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