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TomoPoetry、できごとはことこととことば。

ことば
かくしごとは
ことことと心でころがって
こいびとが困るまで
ことごとく煮つずける
蓋に触れてはいけない
振りかえってはいけない
ことことと蒸しつずけるほうがいい
閉じた時間は
じくじくと沈むまで
じっと辛抱するほうがいい

ごはんといっしょにして
生きる意味といっしょにして
ごとごとと
ほうっておく
両手からうまれてくるものが
地をながれ死に注いでいくものが
台所で
ぐつぐつとひとりごとを
あわ立てている

朝 この世の最初のことばが発せられる
生きよのバックコーラスは
死ねに聞こえる
しあわせのハーモニーには
絶望が紛れこんでいる
パンケーキをひっくり返すと
この世の
焦げた裏側を見ることができる
だから ひっくり返してはいけない
ごちそうさまを言うまで

ごちそうさまが
皿やナイフと
矢のような箸の
ごちゃごちゃした中でこなごなになる

返事は返ってこない
へん、へん、へんと時は片足ですすむ
へんなまま
下手に編曲した変奏曲のあしどりで
パシフィックの左を
偏西風に吹かれながら
お遍路の背のまるみで
カバン抱きしめ
帰りみちをさがす

ただいま
部屋にはパンケーキの香り
鍋からこぼれている今朝のことば
へんなまま そして
これが今日のできごと

煮詰まった
きみのことばが
皿にもられている
箸をつき刺すと
音が吸いこまれていく

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