すごくばかなはなし?『良い天気、良い景色』

人の暮らす国の遥か遠くの天の国には、美しい地上の景色が大好きな天気の神様がいました。

よく晴れた夏の日、雲一つない青空を地上から眺めるために、天気の神様は天の国から降りてきました。
「実に美しい景色だ。草木生い茂る大地はいつも良い天気でなければ」
晴れこそが良い天気だと信じて、神様は地上の国中でそのまま晴れの日を続けました。
すると、人々は天気の神様に雨乞いをし始めました。
「このまま干ばつが続けば皆干からびてしまいます!どうか恵みの雨を」
「はて、こんなに良い天気だというのに人の子らは何を喚いているのだ」
不思議に思った神様は地上の様子を覗いてみました。
「なんと、あれほど美しかった草木が枯れてしまっているではないか。これではならん、雨を降らせなければ」
天気の神様は慌てて雨を降らせることにしました。
「しかし、人の子には皆平等に施してやらねば。不平等は人の争いの引き金になりかねん。人々が争えば良い景色どころではなくなってしまう」
そうして地上を元に戻そうと考えた神様は、晴れの日と同じ日数分、国中すべての地域に一斉に雨を降らせました。
「あれだけ雨を望んでいたのだ。人の子にとってはさぞ良い天気になったであろう」
大雨となった地上では多くの人々が大洪水の犠牲となりました。
そして天気の神様は干からびた大地を見事に潤したのでした。



季節は巡り、よく晴れた夏の日、雲一つない青空を地上から眺めるために、天気の神様は天の国から降りてきました。
「実に美しい景色だ。草木生い茂る大地はやはり良い天気でなければ」

人の暮らしていた国の遥か遠くの天の国には、美しい地上の"景色"が大好きな天気の神様がいました。


おわり

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