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音楽の原理3:ヒトはなぜ歌うのか

先日より投稿している「音楽の原理」に関連する番組がNHKオンデマンドで公開されていたので、「音楽の原理3」として共有します。

現在の人間社会では、音楽は高次元の芸術活動とみなされている。
しかし、「表象の強度」という指標から考えた場合、むしろ音楽より言葉に、高次元の認識能力が必要とされる。
音楽は、雰囲気やニュアンスなどの表象しか想起させないのに対して、言葉は、複雑でより具体的な意味や抽象的な論理を表象することができる。

音楽を言語を伴わない音波を用いたコミュニケーション方法としてとらえるなら、むしろ動物の鳴き声や鳥のさえずりと同じ範疇に分類できるかもしれない。

表象の強度という観点から、進化の過程を想像すると、初期の人類の祖先も他の動物と同様に、鳴き声やさえずりしか持たなかったに違いない。その後、認識能力の向上とともに、発声や手拍子などの音によるコミュニケーションとなり、その後さらにより高度な表象を可能とする言葉になっていったのではないだろうか。

人間は、優れたコミュニケーション方法である言葉を獲得したことにより、それ以前に利用していた言葉を伴わない音によるコミュニケーションの必要性は低下した。しかし、進化の過程で培った認識能力は未だ動物としての本能の中に埋め込まれている。
それが、言葉とは別の形態で、非日常的な行為として、発達し今もなお楽しまれている音楽ではないだろうか。

番組では、認知症を患い言葉の認識が苦手であるにもかかわらず、音楽にはその影響がなく演奏活動ができる老人や日常生活の中で、頻繁に歌を歌う習慣のある原始的な生活を送る民族が紹介されていた。
これらの事例は、その証拠である。

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