今も昔も吉祥寺
大学時代、決まってサークルの打ち上げは吉祥寺の焼き鳥屋「いせや公園店」だった。今は新装されて綺麗になったが、改装前は小汚く、文字通りボロボロだった。
何よりトイレが男女共用で、男性用トイレの真横を通過しないことにはドア付き個室に入れないレイアウト。仕切りのない男性用トイレの横を、気まずくも仕方なく通っていた。しかし、いせやはそれを承知で楽しむような、ノスタルジックな雰囲気の居酒屋だった。
海外の友人を連れて行くと、あまりのボロさをむしろ面白がっていた。新装してからは一度も足を運んだことがないものの、今も変わらず繁盛しているようだ。ざっくり言うと、「雑さ」を楽しむ場所で、料理や店員さんの態度に文句をつけたくなるタイプの人は最初から行かないのが賢明。
趣味の手芸用品を揃えるなら、ユザワヤ。
ハンドメイドの色んなパーツやファブリックが充実していて、ここに来ればソーイング用具はまず揃う。親切な店員さんは、買いたいものを私よりもよく分かっていて、手際よく案内してくれる。
外せないのが「仲家むげん堂」。
アジアの雑貨、衣料品や調味料が所狭しと並んでいる。調味料の種類は多くはないが、ベーシックなセレクションで、家庭でエスニック料理を作る際には知っていて重宝するお店。何といっても、全体の商品価格が随分良心的で、安価に設定されている。それは月一で発行されているニュースレターから、スタッフの努力と愛情がひしひしと伝わってくる。
学生時代にはヒッピースタイルを揃え、社会人になると調味料を買って料理をし、結婚して娘が大きくなるとアクセサリーを一緒に選び、今は好きなお香で癒されている。上京から私の人生でずっとお世話になっているお店。
イチオシの古本屋は「よみた屋」さん。
ここは店主の本の知識が垣間見れるようなこだわりを、素人ながら感じることができる。その上、近隣に大学が多いからか、著名な教授の蔵書印が押された書籍に当たる幸運にも恵まれることがある。
小さい子どもを都心よりもストレスなく連れていける場所が、井の頭公園と隣接する動物園。
「リスの小径」は、小さい子どもにはエンタメ性の高いスポット。足元をサッと横切ったり、ちょろちょろと目の前を何匹も駆け回るリスの姿を、至近距離で見ることができる。
特記すべきは、ここには他の動物園にはない生物がいる。それが何かは、ぜひとも現地で確認していただきたい。このようなコーナー設定の発想は武蔵野文化的で、そこがこの街が好きな理由のひとつかもしれない。
吉祥寺の魅力は、とてもここだけでは収めきれない。
少々栄え過ぎてしまった感は拭えないが、いつのライフステージにおいても、何でも揃い、四季を楽しみ、ふと立ち寄りたくなる街であることには変わりない。
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