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佐川美術館 樂吉左衛門館

鎮魂のための埋葬地

びわ湖のほとりの佐川美術館の、さらに奥に作られた、荒ぶる魂を与えられた茶碗達を鎮める、埋葬地。

楽吉左衛門館。

鑑賞者は、陽の光の反射が眩しい自然豊かな世界とは真逆の、ポッカリと空いた真っ黒な穴に堕とされます。

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楽吉左衛門館の入り口

階段を降りたそこは、わずかな太陽の光が漏れ届くだけの、水の底。薄暗い牢獄の如き無機質な世界。

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エントランスホール。美術館はさらに左手奥

部屋の隅に僅かに差し込む太陽の暖かい光に憧れを感じながら、鑑賞者はそれすらも届かない、より暗い、狭い世界に足を踏み入れます。

悔い改めよ!

光も届かず、色もない無機質な闇に堕とされた中で見る楽直入の楽茶碗からは、土の暖かみ、色、厳しさ、力強さ、要は、凝縮された自然の息吹が圧倒的な存在感を放ちます。

そして、普通の美術館の展示では感じることのなかった、胸を締め付けられるような自然の暖かさへの憧憬・渇望。
自然に拒絶された人間の孤独、どうしようもない母なる自然への焦燥と憧れ。

これが直入さんの見せたかった世界なのでしょうか。。。

支配し、搾取し、押さえつけてきた自然を取り上げられた途端、こんなにも情けなく、為す術なくガラスケースの向こうの手の届かない自然の温もりを渇望し、涙と鼻水まで出る始末。なんと人間の、自分の存在の矮小なことか。

美しいとか、そういう生ぬるい話とは全く違う、魂に突き刺さる表現がそこにはありました。

茶室、茶道の本

普段は入れませんが、この地下深くにある美術館の上には茶室があります。これらもまた、楽直入氏が設計創案・監修した茶室であり、彼の茶道に対する考えを具現化したものです。そのコンセプトは、

「規矩作法、守り尽くして破るとも、離るるとても、本を忘るな」

という、利休の言葉。

直入氏が考える、利休の茶道の「本」とは何か。

「私の履歴書」や、「茶室を作った。」を読んでから行かれると、なお面白いと思います。

芸術空間?もとい、近代人のお仕置き部屋

茶室の実物はまだ見に行けていないですが、樂吉右衛門館を一言で言うならば、近代人のお仕置き部屋でしょう。

写真と説明の通り、特に展示室は非常に暗いので、泣いても鼻水垂らしても、(多分)そこそこ大丈夫!
せっかく行くなら、存分にお仕置きを受け、圧倒的な自然に膝を屈し、悔い改めて地上に戻られることをおすすめします(笑)

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