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【読書】教養としての投資:労働者マインドからの意識改革

投資マインドの醸成にオススメの一冊

私は強い危機感を持ってこの本を書き始めています。

冒頭、こんな危機感をあらわにしたメッセージで始まる『ビジネスエリートになるための 教養としての投資(奥野一成著)』。

特に20~30代の層にフィットする印象。私も20代から株式や投資信託などへの投資を続けており、この本からは多くの含蓄を得ました。

投資は怪しいものじゃない。むしろ、人生100年時代の中で投資を学ばず、銀行に日本円を置きっぱなしにしてる方がリスクとも言われます。

広義の「投資」は株式や仮想通貨などの金融投資だけじゃなく、資格取得や海外旅行などの自己投資の意味も含まれる。本書には現代を生きる上で大切な投資の概念が説かれています。

著者は凄腕ファンドマネージャー

著者の奥野さんは元ファンドマネージャーで金融会社の幹部。日経新聞で本書の内容にもとづいてご本人が解説されています。

本の気になったところ

日本人の投資嫌いは敗戦の影響?

日銀が公表する2022年4~6月期の資金循環統計によると、日本の家計の金融資産は米欧と比べて現預金の割合が高く、5割近くを現預金で保有しています(米国とユーロ圏の家計(非営利団体含む)の3月末時点における現金・預金割合はそれぞれ13.7%、34.5%)。

2001年に政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げてから約20年経つけども、依然として預貯金の保有率は高く、なかなか進んでいません。

国はNISAiDeco等の税制優遇制度を整備し投資を促していますが、興味がない人、調べる余裕がない人、そもそも制度を知らない人も未だ多い状況です。

日本人は投資への心理的ハードルが異常に高いようで、投資はギャンブル、むずかしそう、金持ちがやること、などの偏見もあるかもしれません。

そんなメンタリティが広がっているのは何故か?
著者は敗戦による2つの影響が大きいと考えています。

1つ目は財閥解体。連合国による日本の占領政策により、三井・三菱・住友・安田といった財閥が産業界から追放されます。日本の産業を成長させた資本家一族が、敗戦によりバラバラになり、日本の資本家マインドが断ち切られてしまった点。

2つ目は、戦後の日本人は金がなく、労働者として働かざるを得なかった点。投資しようにも、お金がなく、労働力しか売るものがなかった。

そんな理由を挙げ、こう締めています。

日本人だって本来、資本家マインドを持っていた。にもかかわらず、それがはぐくまれていく一歩手前で敗戦を迎え、その機会を失ったまま今に至っているというのが、本当の姿だと思います。

前掲著

日本人も本来は投資家気質があるはず。2022年4月から高校では金融教育が必修になりました。今後、資本家マインドを持った若者が増えてくるかもしれません。

労働者思想から投資家思想へ

「投資なんて不労所得を得るなどけしからん」と批判する人もいます。汗水流して稼ぐのがあるべき姿だと。

そのマインドが、本書で言うところの労働者の思想。いわば、自分の時間を労働に回して収入を得ること。

著者はこの状態を危惧し、労働者ではなく投資家の思想を持つことが重要と説きます。投資家の思想とは、自分の労働以外の収入を得る術に気づくことです。

自分より優秀で、稼いでくれそうな自分以外の仕組みにお金の一部を投じること。投資をするというのは、つまりそういうことなのです。

前掲著

長生きリスクという言葉もあります。若い世代は年金も期待できません。自分の現役時代の収入だけで老後に豊かな生活をおくれるか?なんとなく不安がある人も多いと思います。

投資家の思想とは、要は、自分以外に働いてもらうという発想。自力ではなく他力で稼ぐ。それがいわゆる「投資」。

これは株価チャートとにらめっこしてタイミングを見計らって売買することとは違います(これは投資ではなく投機)。投資先について自分なりに真剣に考え、利益を生み出す人や事業にお金を投じることです。

もちろん価格の増減が気になる側面もありますが、それ以上に投資先を見極める過程で専門知識や思考力が磨かれ、良い影響の方が大きいと思います。

売らなくていい会社しか買わない

実際に株式投資をするとして、どの銘柄を買ったらいいのか?

著者の考えは「売らなくていい会社しか買わない」。これはナルホドと思いました。もちろんいずれ売る局面はありますが、長期投資であれば基本的な投資スタンスとして使える考え方です。

じゃあどうやって売らずに済む会社を見つけられるかというと、「構造的に強靭な企業」に投資しましょうと説いています。

強靭な構造とは、3つの要素に支えられています。「高い付加価値」、「高い参入障壁」、「長期潮流」です。この3つの要素を持っている会社は、構造的に極めて強靭であり、この3つの要素が弱まらない限り、その株式を保有し続けられると考えてよいでしょう。

前掲著

それぞれざっくり説明すると、

  1. 付加価値の高い産業
    本当に世の中に必要か?いわば会社の存在意義。

  2. 圧倒的な競争優位性
    その人たちと張り合って勝負しようと思わないほど強いか?

  3. 長期的な潮流
    不可逆的(元には戻れない)と言い切れるもの。例えば世界人口の増加は確実。

もし個別銘柄へ投資するなら、これらの条件が一つの参考になります。本書では、構造的に強靭な企業の例として、コカ・コーラやディズニーの例を出して解説してます(残念ながら日本企業には強靭な企業がかなり限られてる模様…)

なお、個別企業の株式に投資する場合は会計知識が必要になり、どうしてもハードルは高くなります。そんな時は、インデックス型の投資信託を積み立てていくのも一手。

現在、個人投資家のメジャーな投資手法は、S&P500等に連動する国外インデックス投資信託の長期積立じゃないでしょうか(私もやってます)。特にコロナショック以降の不安定な市場環境下ではドルコスト平均法の恩恵も受けられます。


以上、ざっくり概要を書きました。今の日本には仕組みがあるので、自分が働くことと、自分以外を働かせることの両輪を回しやすくなっていると思います。

投資に興味がある方、実践中の方はぜひ読んでみてください。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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