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シブサワ・レターを読んで感じたことなど~2024年4月号~

シブサワ・レター4月号

今月は、日本銀行が保有している、株式ETFを以下に市場に戻すかについてです。

この構想とは、長年の友人である平山賢一さん(東京海上アセットマネジメント参与チーフストラテジスト)が提唱しているものであり、本レターで以前(2021年10月、2023年8月)にも紹介しました。また、「新しい資本主義実現会議」において2022年10月(第10回)に資産運用立国の議題に関して、つみたてNISAの改正(→新NISAの施行)、中間層の資産形成支援(→金融経済教育推進機構の設置)の一環として提案したものです。
それは「日本銀行の株式ETF保有の出口戦略案」です。

シブサワ・レター4月号より

異次元緩和で、日本銀行による株式ETFの保有が行われてきました。
でもその株式ETFをどうするかという話を目にしたことはありません。
もちろん、買っている最中に売る話をするのもおかしい気がするので、それはそれで納得のいくところです。
でも、価値に比べて割高感がある中で売れば、それを掴みに行ったひとたちを貶めるような感じになってしまうと思うし、あまりにも巨大化した日本銀行保有ETFは、市場の行方を大きく左右してしまうことになりかねないとの懸念があります。

日銀が株式ETF買いオペを開始してからの10年間に株式市場は上昇しました。34年ぶりに高値更新し、莫大な含み益が生じているから「結果オーライ」ではないかと意見もあるしょう。しかし、現在が高値圏だからこそ、日銀から株式ETFを市場に放出する出口戦略を回避することと同時に企業ガバナンスの強化で、強烈な買い材料になることに加え、未来世代へ財源という贈り物を後世に残せるのが、この「異次元な出口戦略」の構想です。

シブサワ・レター4月号より

なるほど。
株主として、企業価値を上げさせる。
それはもちろん、企業価値の向上。
このことにより、保有しているETFの更なる価格の向上につながる。

では、まず現状の課題のおさらいを下記に示します

・債券と異なり、株式ETFには償還がありません。つまり、市場で売却する以外に出口戦略が無いということが一般の認識。
・また日銀が保有する株式ETFは足元でおよそ70兆円までに拡大していると推定されている。
・この金額は日銀の総資産の1割弱をリスク・アセットが占めるという経済・市場の安定化を存在意義とする中央銀行ではありえない水準。
・前年度比にしか注目しない短期的な視点や論調が多いなか、仮に株式市場が大幅に下落するような局面においては、日銀のバランスシートが棄損しているという懸念の声が一気に広まる可能性がある。
・日米金利差の是正が始まっても円安が進んでいる現状は、日本の資本主義社会にとって危険なシグナルを発しているともいえる。これは既に、通貨の番人である中央銀行への信頼が揺らいでいるという予兆かもしれない。
・日銀は間接的に日本企業の最大株主になっているにも関わらず、ガバナンス指針を示すことができておらず、長年の政府のガバナンス改革の方針に全く反している。
・この異常な状態を危惧する声は少なくなく、昨今は増えている。日銀内部でも、声を上げられない懸念は少なくないと思う。
・「出来ない理由」「その管轄は他」という前例主義が本構想の本格的な検討を阻んでいる。

シブサワ・レター4月号より

したがって、本構想はこれら重要課題を解決することが目的です。その概要は下記になります

・政府が特別基金を設置し、日銀から株式ETFを引き受ける代わりに基金が発行する(変動金利を支払う)永久債を日銀が引き受けてリスク資産をオフバランス化する。
・日本銀行は政府が設けた特別基金が発行する永久債を保有することで、市場リスクに晒されることなく、バランスシートの健全化を図れる。
・政府が設けた特別基金が永久に株式資産を保有することによって、株式市場の需要バランスが崩れる恐れは無くなる。
特別基金は保有する株式ETFを現物化する。
ガバナンス方針などを指示する有識者運営委員会を設置し、アセットマネジャーに方針を指示し、企業価値向上を促す
企業から配当を受け取り、基金の運営費を賄い、拠出財源をとする。(仮に70兆円、年率1~2%配当の場合、約1兆円の財源が生じる。)後世へ毎年、企業成長から分配する財源を現世からの贈り物として残せる。
・拠出先は、先端技術への投資、GXソリューション、教育など未来世代の豊かな生活を支える長期投資の取り組みに厳守する。

シブサワ・レター4月号より

いろいろな考え方が出来そうです。
現状に対して、とても前向きな案だと感じます。
それが、未来世代への贈り物として残せる。
先送りばかりして、借金を作り続けてきた感がある我々の世代のひとり大賛成です。

10年も「異次元な金融政策」に頼っていた日本は世界からあざ笑われていましたが、最近の日本は世界が関心を寄せて、再評価されている感があります。この側面で、日本が見事に、今まで誰も考えもつかなかった政策イノベーションで出口戦略を実施できたら、過去の経済学を書き換えることになりましょう。これを実現できる政権は歴史のページに名を残すことは間違いないでしょう。政局を煽るよりも、日本の未来のための政策を報道機関は推すべきだと強く思います。

シブサワ・レター4月号より

「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」

最後に「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」より。

「渋沢栄一訓言集」国家と社会
       およそ一国の富は、
   学理と実際との結合の程度に由って、
 その国の富の分量を測り得られるものである。

シブサワ・レター4月号より

日本の富は、これまでに生きてきた国民が作り、現在のわたしたちが引き継いでいるもの。
そして未来の日本国民のものでもあります。

『現在世代の国民に限るということではなく、民主主義では声を上げられない未来世代へのものでもあり、出口戦略を実践するのは、トップの決断でしかできないことでありましょう。』
そうまとめていますが、まさにその通りです。
健さんにも、ぜひ後押しをお願いしたいところです。

「渋沢栄一訓言集」国家と社会
  現今の政治家は真摯質実の気性を欠き、
    犠牲的観念に乏しい傾向がある。
  君国の為に奉公するという精神が少なく、
 ただ我が党のため、否、自己のために進退し、
    その主義方針は、常に動き易く、
      昨日は白く、今日は黒く、
 昨年源家に仕えし人、今年は平氏に馳せ参ずる
        という風がある

シブサワ・レター4月号より

政治家は、政治に対してより真剣に取り組むことをお願いしたいですね。
政治家ひとりひとりには、それぞれに熱い志があるに違いありません。
志に共感して、わたしたちの投票は行われます。
個人の意思の塊が、日本を動かす原動力であってほしいと思います。

5月12日日曜。
コモンズ投信のコモンズフェスタ15周年イベント
~投資は未来を信じる力~
渋澤健さんにお会い出来るチャンスです。
詳しいこと、申し込みはこちらから。

では。

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