立ち返るべきところ 2020-11-28 12:00:49


2月から始まった今シーズンも、気づけばもう11月の終わりまで来た。
シーズンも終盤戦に差し掛かり、インカレの決勝を含めても残りの公式戦の数は1桁。シーズンラストまでのスケジュールの目処だって立っている。

ただ、終わりが見えて来たってだけでシーズンが終わったわけではない。
考え続けなければいけないことは未熟な俺にはたくさんある。






ここ数試合、俺たちは思うような結果を出せてない。
アミノの決勝で流経に負け、そのあとの桐蔭横浜には引き分け、明治との直接対決を落とし、直近の順天堂大に0−5の大敗。

どうすればいいのか、どうやったらまた勝てるようになるのか、、、

不安、焦り、報われたいという欲、いろんなダークパワーが私を取り巻く。
そして、弱い自分が顔を出して、私のパワーを削り取ろうとする。








今一度立ち返ろうと思う。









パソコンを立ち上げて、「ア式蹴球部」のフォルダを開く。


Wordファイル 「ビジョン・ミッション説明用」




たった3000文字程度の文章。

下級生はじめ周りの人に説明するように作った拙い文章。





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今季のビジョンミッション。

今シーズンのビジョンは、昨シーズンと同じ「日本をリードする存在になる」。
このビジョンはいくつかの解釈ができる。

一つは、早稲田大学ア式蹴球部という組織が日本をリードする存在になるということ。
この組織が大学サッカーという枠組みであったり、日本サッカー界という枠組みであったり、大学スポーツの枠組みであったりの中で、パイオニア精神を発揮したり、既存の取り組みに対してどこよりも熱量をもって取り組んだりすること、それが組織として日本をリードする存在になるという解釈。

もう一つが個人として日本をリードする存在になるということ。
個人として日本をリードする存在になるというのは、ア式に所属しながら日本をリードする存在になるという解釈もあると思うが、決して在学中に限った話ではない。
確かに、2年前にア式に所属していた小島亨介選手のように在学中に代表に選出され日本をリードする存在になるということもあるだろう。しかし、多くの人にとって4年という期間だけで日本をリードする存在になるというのはとても難しい。だから、この大学4年間を経て社会に出たときに日本をリードする存在になる、という長期的な視点で、個人として日本をリードする存在になるという解釈を持つことも大切になる。言い換えれば、いつか日本をリードする存在になれるようにこの4年間で日本をリードする存在になることを意識して積み上げ続けるということでもある。

ちなみに、この“リードする。”という言葉は、決して先頭に立つことだけではない。
在学中でも卒業後でも、ア式以外の人と関わったときに影響を与えられるという事でもある。だから先頭に立つこと、先頭に立とうとすることだけがこのビジョンを達成するための取り組みじゃないことも理解する必要がある。


次にミッションについて。
ただ、その前に共有しておかなければいけない前提がある。
それは、ミッションの話の根幹にある早稲田大学ア式蹴球部の精神性、哲学の話。
ミッションというのはビジョンを達成するための使命。「日本をリードする存在になる。」にはどのような取り組みをしていけばいいのか、ミッションはその行動軸となる。
ではなぜその行動軸なのか、その理由となるものが哲学である。

早稲田大学ア式蹴球部の哲学とは、
「WASEDA THE 1ST~サッカー選手としても人としても一番であれ~」
というもの。
これは早稲田大学ア式蹴球部に昔から存在する哲学。
大学の一部活ではあるけども、ただ競技だけをやっていればいい組織ではないということ、常に頂を目指し続けること、自立した人間であり続けること、そういったことを示している。
この哲学は不変のものであり、早稲田大学ア式蹴球部を早稲田大学ア式蹴球部たらしめるものである。
数多の大学サッカー部の中でサッカー主義のところもあれば、スポーツの競争性よりも娯楽性に重きを置くところもあるだろう。
ただ、早稲田大学ア式蹴球部は違う。
大学の社会的立ち位置や歴史、ア式蹴球部としての伝統、輩出してきたOBOGの方々の功績を考えれば、高い視座を持ち続けることというのは不可欠の精神性であり、高い目標とそれを実現するために全力で努めることこそが早稲田大学ア式蹴球部の哲学であると考える。


哲学を踏まえたうえで、改めてミッションの話をしていきたい。
今季のミッションは二つ。

・究極の当事者意識を持つこと。                                                                                    
・明日への活力になること。

まず、究極の当事者意識について説明する。
究極の当事者意識とは、チームの目標や課題を常に意識し、自分事として捉え、徹底的に自分自身に矢印を向けて、自身の能力を最大限発揮することである。
例えば、チームがインカレ優勝という目標を設定したとして、その目標に対して自身がどのようなことができるのか、チームがその目標に向けて最大限力を発揮しようよしたときに自身はどのような役割を担うべきなのか考え実行すること。他の例で言えば、昨季のようにチームの結果が良くなかった時に自身は何ができるのか考えたり、結果の原因を自身に求めたりすること。もっと言うと、チームメイトの寝坊というサッカー以外のミスに対しても自身がそれを防ぐために何ができたのか、自身の何がいけなかったのかということすらも考えること。
先ほども述べたように、これはチームの目指す結果に関連するすべてのことについて自分事として考えること。
だから、寝坊という事象もチームの雰囲気醸成や信頼関係の構築といった目標達成の要因を阻害するものとして捉え、その問題を自分事として矢印を自分に向ける必要があるし、AチームBチームといったカテゴリー関係なく、同じア式蹴球部の部員として常に自分は何ができるか自分の何がいけないのかを考え続けることが大切になる。
ア式蹴球部のエンブレムを背負う以上、チームの目標やチームの中での課題をどの立ち位置にいたとしてもすべて自分のものとして本気で捉えて思考を止めないで行動すること。
それが究極の当事者意識である。


次に“明日への活力になる。”ことについて。
明日への活力になるというのは、誰かの力になること、誰かに影響を与えること、誰かの心を動かすことである。

この二つのミッションは、内向きの行動軸と外向きの行動軸となっています。
“究極の当事者意識を持つ。”が内向き、組織内に対する立ち振る舞いを定める行動軸であり、“明日への活力になる。”が外向き、組織外に対する立ち振る舞いを定める行動軸となる。
この二つの行動軸は同等の影響力を持っていて、お互いに重要である。
決してどちらか片方をやっていればいいわけではなく、二つの行動軸を常に意識して行動しなければいけない。

おそらく、内向きの行動軸だけでも誰かの力になることはできるのではないか、自分たちが自分たちのことを一生懸命やれば自然と誰かの力になっているのではないか、という考えが出てくるかもしれない。
しかしそうではない。
私たちは今まで多くの方々に支えられてきた。それは所属する部員全員、例外なくそうである。親や友人、指導者など多くの方々が一人一人に関わってきてくださった。また、組織的に見ても、ア式蹴球部という組織はサークルと異なり大学からの多大なる支援を受けて活動している。
そんな私たちが、自分たちのためだけにサッカーをやっていていいのか、そんなはずがない。
私たちは多くの人に支えられ、多くの特権を有している。だから、今まで支えてきてくださった方々に恩返しをするだけではなく、子供たちや地域の方々、名前も知らぬ隣の人にもこれまでの恩をまわす責任、誰かの支えになる責任があるのではないだろうか。
子供の頃サッカー選手に夢を与えてもらったように、学校の先生に応援してもらったように、私たちも誰かの想いに寄り添える存在にならなければいけない。
だから、チーム活動のプロモーションや様々な情報発信も行っていく。

先ほどミッションは行動軸と述べた。
チームの活動においてすべての行動をこのミッションに意味づけて行動するように努める。
この二つのミッションは密接に関わっているため重複することも考えられるが、一個人が自分なりに考えてこれらのミッションと行動を繋げること自体もまた大事である。
例えば、グラウンド周辺の環境を整えるのも、「そこを利用する子供たちやその他多くの人達の笑顔に少しでも貢献するため。」であったり、「少しでもより良い環境を作りチームの練習効率を上げ目標達成に近づくため。」であったり、どうミッションと結びつけるかは人それぞれでいい。ただ、自分なりの考えをもって考えることが大切。

ビジョン・ミッションと言うと抽象的で自身と距離が遠く、わかりづらいものと思うかもしれないが、そうではない。
いつだって私たちと共に存在するものであり、チームの核となるものである。

以上が今シーズンのビジョン・ミッションである。

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30キロバイトにすら満たないの1つのWordファイル。

それでもそこにあるのは、今年のチームの原点であり、魂だと思う。

久しぶりにこのファイルを開いてみて、色んなことを思った。

ただ1番に思ったことは、このビジョン・ミッション自体に対することじゃなかった。




「全てが終わった時に全員が笑顔でいれるよう、強くたくましいビジョン・ミッションを作ろう。」
「苦しい時、迷った時、いつだって立ち返れる場所になるようなビジョン・ミッションを作ろう。」
「ラストイヤーを最後まで胸張って走り切れるような、自身の力となる誇れるビジョン・ミッションを作ろう。」

そんなことを同期で言い合いながら、このビジョン・ミッションは作られた。

ビジョンを作るなんて誰もしたことなかったから、何日もミーティングをしたし、時に何の話をしてるのかすらわからなくなって、似たような話を行ったり来たりもした。一つ道が拓けたと思ってもまた壁にぶつかって、スムーズに話が進むことなんてなかった。

それでも俺たちがめげずに考え続けられたのは、4年間の集大成、人によってはサッカー人生の集大成となる1年間に全力で挑み切りたかったからだし、それを成し遂げられるという自信と情熱があったからだと思う。



久々に開いたファイルは、俺に檄を飛ばしてくれた。

“期待と情熱まみれのあの頃を思い出せ。”

“最後まで胸張ってみんなと走り続けよう、と、あの時心に誓っただろう。”

“どんなに打ちのめされることがあっても弱い自分なんかに負けてくれるな。”

“闘い続けろ。”

と。




新型コロナウイルスが猛威を奮っている中で、多くの人のおかげで俺たちには幸いにも走り続けることができる道が残っている。

もちろん、この先どうなるかなんてわからない。

それでも踏み締めることができる道がある限りは全力で前進していく。



やってやる。

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