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『黒川紀章のカプセル建築』

黒川紀章のカプル建築が発売になりました。
この本は、一年ほど前からデザインをしてきました。

プレスリリース用に準備した文章をせっかくなので、ここでも掲載します。

本の要素は様々なものに例えられます。そのうちの一つが建築です。はじめのページは「扉」と呼ばれ、読者を建築の中に呼び込むように開かれます。『黒川紀章のカプセル建築』では、この建築物としてのイメージを造本に落とし込みました。
カバーは「中銀カプセルタワービル」の、当時の近未来感を感じられる黒と銀のエントランスです。表紙は物質感のあるエンボス加工でカプセル建築を表出させました。カバーが表紙よりも短く、また、表紙にあるくり抜きの「窓」から中身が見える構成です。本は平面的に捉えられることもありますが、(建築と同じように)立体物です。ファサードだけの建築が成立しないように、本も「表紙」だけでは捉えられません。この本のエントランスから扉を開けて、カプセル建築を堪能していただければと思います。
今回、残念ながら解体されてしまう中銀カプセルタワービルを含め、黒川紀章氏の歴史的な建築の記録を残すことに携われたことを光栄に思います。はじめて中銀カプセルタワービルを見た時の自分の驚きが、造本や内容から伝わればと願っています。

(撮影 山田新治郎)
表紙は、中銀カプセルタワービルの図版から、穴あけ加工とエンボス加工、箔押しを行っています。
カプセル建築の特徴のひとつでもあり、象徴的な丸窓を表紙に穴として設けています。
本文のはじめの「カプセル宣言」がのぞきます。
コデックス装で構造がむき出しになっている様子を、解体される中銀カプセルタワービルに重ねました。

自分が過去に勤めていた事務所でも、建築の書籍を手掛けることが多く、師匠も本を建築のように例えることもありました。

日本の書籍には、日本建築のような様式と趣があるのでもいい。ジャケットから表紙、見返し、総扉をめくると前書き、目次、章扉、本文、後書き、奥付と続く構造は、表門から中庭を通って家屋にたどり着き、格子戸を開けると土間があり、居間、板間、座敷、奥座敷という佇まいを重んじる日本建築に通じるものがあり、様式美を感じさせる。

工藤強勝『文字組みデザイン講座』誠文堂新光社、2018

また、『編集デザインの発送法』(ヤン・V・ホワイト著、大竹左紀斗監修・訳、グラフィック社)でも紙面の構成方法として「建物の中を移動するように」(p.43)と実空間に例えた表現をしています。

著者の鈴木敏彦先生と造本のプランを話し合っていたときに、上記のような話をしたところ、建築家である鈴木先生も「本も建築だ」と共感して頂き、建築に見えるような造本プランという道が見えました。
あとは仕様を考え、印刷所の方と資材の検討をしました。印刷所でも取り組んだことのないことがあったとのことで、試作などを行っていただきました。

4/5より全国発売。全くの偶然ですが、保存・再生プロジェクトの前田達之さんによると、この日は中銀カプセルタワービルの誕生日だそうです。

是非、一度手にとっていただきたいです。

『黒川紀章のカプセル建築』
出版社:OPA PRESS
発売日:2022/4/5
価格:8,800円(税込) 言語:日本語/英語
単行本:254ページ、B5判変形(230×182mm)
ISBN:978-4908390104
文=鈴木敏彦、写真=山田新治郎
編集・英訳:杉原有紀(株式会社ATELIER OPA)
作図:石間克弥
アートディレクション:鈴木敏彦
デザイン:舟山貴士(舟山制作室)
協力:株式会社MIRAI KUROKAWA DESIGN STUDIO
   黒川紀章建築都市設計事務所
   埼玉県立近代美術館
発売所:丸善出版株式会社
印刷所:シナノ書籍印刷株式会


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