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ここが変だよ・・・おっと失礼、ここがユニークだよ日本のクラシック音楽コンサート

ヨーロッパのコンサートと比較して、日本のユニークなところをピックアップした。どうでも良いものもあるが、良い方向に変化していくといいなと思うものもある。

ヨーロッパといっても、国によってコンサート鑑賞のお作法は異なる部分もあると思うが、大きくは違わないと感じる。まだ訪問していない国や訪問からだいぶ年数が経った国もあるので、私の知識は限られている。それでも、やはりヨーロッパと比べると日本は独特だと思う。


日本:コンビニでチケット発券!

ヨーロッパのコンサートチケットは日本から簡単にオンライン購入できる。ホール公式サイトにアクセスして英語のページから購入。自宅でEチケットを印刷して完了。QRコードなどの付いたEチケットをスマホにダウンロードできる場合もある。

一方、東京のクラシック音楽コンサートのほとんどは、コンビニでの発券が必要。サイトでチケットを買い、引換番号を自宅プリントしてコンビニに行ってレジで発券してもらう。受け取りのサインを手書きで書く。なんというアナログな作業だろう!最近は何かと忙しく、発券がギリギリとなってしまう。面倒だ。

昔、東京の音楽祭ラ・フォル・ジュルネで10公演分のチケットを買った時は、コンビニの他の客に遠慮して、何度もコンビニに行って、分けて発券した。

引換番号を印刷する必要はないのだが、印刷した方が店員にとっては扱いやすいのではと思って印刷して持っていく。印刷+コンビニ発券という2段階のプロセスが面倒だ。

他の音楽ジャンルではチケットをスマホにダウンロードするシステムが進んでいるのだろうか?クラシックはまだまだ・・・

とはいえ、近年は日本でも、ほんの少しだが、スマホにダウンロードで入場できるクラシック音楽コンサートも出てきた。利用が広まるといいな。

日本:チケットもぎり!

日本のコンサートでEチケットが浸透しないのは、「もぎり」という日本独特の作業があるからなのでは?

「もぎり」とは、チケットを手でちぎって2つに切り離すこと。大きい方をお客さんに返し、小さい方をスタッフが回収する。

コンビニで発券したチケットには、もぎりやすいように破線の切り込みが入っている。

実は「もぎり」をヨーロッパのコンサートでは見たことがない。チケットはもっぱらA4の普通紙に印刷されたEチケットが多い。もちろん切り込みは入っていない。スキャナーでコードを読み込むこともあるが、目でチェックするだけのこともある。ヨーロッパでも、郵送や窓口でチケットを買い求めた人は、昔ながらの横長のチケットを持っているが、そもそも、昔ながらのチケットには、昔も今も切り込みなど入っていない。入口でスタッフがチケットを目で確認するだけ。もぎらない。

なぜ日本だけチケットをもぎるのだろうか。もしかして、「もぎり」は日本の大切な文化なのかも?(笑)

コンサート関係の仕事をしたことはないので、あくまで想像なのだが、チケットをもぎって、来場者数を数えているのではと思う。手作業で数えているのか、数える機械(?)があるのかは分からない。しかし、チケット販売数は重要な指標だと思うが、来場者数を数えることも、それほど大事なことなのだろうか?「もぎり」をする他の理由があるのかもしれない。

コロナ禍をきっかけに「もぎり」は終了となるだろうと思っていたのだが、なんとコロナ禍のコンサートではお客さんに「もぎり」をやってもらうということになっていた!日本の大事な伝統(?)「もぎり」は永遠に続くのだろう。「もぎり」が続く限り、クラシック音楽コンサートでのEチケット化は不可能だ。あら、残念!


日本:開演前・終演後ホールでの撮影禁止!

ヨーロッパでは、演奏が始まる前に写真撮影をするのは、ごく普通の光景である。同行者と一緒に座席で、あるいは前方でステージを背景に記念撮影。

ところが、日本の一部のホールでは、まだ演奏が始まったわけでもなく、舞台に誰もいない場合でも、写真を撮ると、スタッフが飛んできて写真撮影は禁止だと注意することがある。撮りたいなら、スタッフがいない時に、一瞬で撮るしかない。客が大勢入った状態の大ホールであれば、スタッフが全ての撮影者の元に近づいて注意するのは難しい。

なぜ日本では演奏前であっても撮影禁止なのだろうか。昔からの大事な伝統か何かなのだろうか?(笑)(数年前、旧ブログでこの疑問を取り上げて記事を書いたところ、万年不人気の私のブログ記事の中では珍しく反応があった。)

驚くことに、ヨーロッパでは終演後の拍手の間は撮影可というホールもある。あるホールでは、はっきりとそのように案内が表示されていた。鑑賞者としては、それが大事なコンサートであれば、カーテンコールの間だけとは言え、写真に残せるのはとても嬉しい。

私がヨーロッパで拍手の間に舞台を撮影するのは、周囲の複数の人々が撮影しているのを見たときだけである。撮影して良いかどうかは、はっきりと分からないことが多いので、地元の客に合わせるのが無難である。(極端に前方に座ると、人が撮影している姿を確認できないので、絶好の撮影席なのに撮らないことが多い・・・)

実は、日本でも終演後の拍手の間は撮影OKという試みが、少し始まっている。ただし、主催者がOKとしても、事情を知らないホールスタッフが飛んできて注意するのではと思って撮りにくい場合もある。拍手の間の写真撮影が根付くといいなと思う。


日本:無料のプログラム冊子!

ヨーロッパではプログラムは基本的に有料。欲しい人だけが購入する。購入する人はそれほど多くない印象。用意するプログラムの部数も少なくて済む。紙資源を守るという意味で良い。

日本ではオーケストラ、室内楽、ソロなどでは無料で配られることが多い。ネット上に情報が少ない珍しい作品の場合は、プログラムに掲載された解説がありがたい。

オペラやバレエのプログラムは日本でも有料。


日本:おひとり様だらけ!

ヨーロッパでは、コンサートに一緒に行くのは基本的にパートナーまたは家族。お一人様がいないというわけではないのだが、日本と比べるとかなり少ない。

日本はおひとりさま天国(笑)老若男女みんな自由に一人で好きな公演に足を運ぶ。そのため、休憩時間は一人でスマホ使用、読書、チラシの仕分け(後述)という人が多い。ヨーロッパではほとんど見ない光景だ。向こうではみんな、お喋りに夢中。

日本では友達とコンサートに行く人も多い。ヨーロッパでも友達とコンサートに行く人もいるのだろうけど、どうだろう? それよりカップル、家族が多いような気がする。友達と行く場合も、それぞれ相手を同伴して行くのでは?

身近な人間と趣味を共有できるヨーロッパを羨ましいと思うこともあるのだが、もしかしたら、本当は行きたくないけど、断れずに同行している場合もあるのかもしれない。

ところで、日本で、クラシック音楽のコンサートに行ってみたいけど、一緒に行く人がいないというなら、一人で行けば良い。全然余裕だ。地域により差はあるかもしれないが、特に東京の主要コンサートではおひとりさまが多い。ぜひクラシック音楽の世界に来てくださいね!!(別にヨーロッパでも特に気にせず一人でコンサートに行けるので遠慮する必要はない!全然余裕だ!)


日本:チラシの分厚い束!



最も気になる点はこれだ!
日本だけの独特のシステムなのではと思う。

日本のコンサートホールでは、入口で公演チラシの分厚い束が入った袋が配られる。以前、数えたことがあるのだが、枚数は忘れてしまった。50枚から100枚ぐらいでは?

私はもう何年も前から受け取りを拒否している。荷物が増えるのが嫌だし、休憩時間に「仕分け作業」(一枚ずつチェックして、気になるチラシだけキープし、残りを会場内のチラシ回収Boxに置いていくこと)をするのも嫌だ。せっかく芸術鑑賞に来たのに、事務作業に従事するなんて気分が台無しだ。

コンサートあるある光景を紹介しよう。狭い座席のお膝の上でチラシの仕分け作業をしている時に、奥の席の人を通してあげようとして、立ち上がり、大量のチラシが足元に落ちてしまうのだ!俗にいう「雪崩」である!傾斜のあるエリアの場合は、前の席の足元までザーっと勢いよく紙が流れていく。

環境問題も気になる。入口のチラシの束や回収Boxの束を見ると、これは完全に紙資源の無駄遣いなのではと思う。気合いを入れて作られたと思われるチラシは高品質な紙と高品質なインクを使用している。費用もかかっているはず。

環境意識の高いヨーロッパで、コンサートの度にこんなに大量の紙資料を用意することは考えられない。経費削減の意味でも、あまり積極的にチラシ作りはしないのではと思う。通常は、会場のどこかに少しだけチラシが置いてあるだけ。何より、チラシの束を抱えてホール入りするなんて、コンサートの雰囲気に合わないし、邪魔なので、きっとヨーロッパでは誰も受け取らないのではと思う。

個人的には、日本の大量のチラシ配布は廃止になればいいのにと思うのだが、日本には日本の事情があることも理解できる。

まずは客側の事情。東京は人口の多い巨大都市であり、公演数も多い。公演情報を細かくチェックしているつもりでも、結構見落としがある。チラシ情報はありがたいと多くのお客さんが思っている。美しいチラシに惹かれて鑑賞を決めることもある。チラシは重要な情報源なのだ。

そして、前述の通り、一人でコンサートに来た人が多いので、開演前や休憩中の暇つぶしとして、チラシの「仕分け」はピッタリの作業となる。

演奏者側の事情も見てみよう。ネットの時代とは言っても、ネット情報を見ない人もいる。そんな人にアプローチできるのが紙のチラシである。

売り出し中の演奏家や、アプローチが苦手な演奏家にとっても、素敵なチラシを作って、チラシ束の中に入れてもらえれば、SNSで必死に呼びかけるより効果があるのだろう。

双方にとって利点があるので、なかなかチラシの分厚い束は消えないのだろう。そして、休憩時間のチラシ仕分け作業は、日本のコンサートのユニークな伝統として永遠に残る(かも?)

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