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ミキシングで苦しんでいるボカロPさんへ

※僕の使用DAWはFL STUDIOです。

 こんにちは、幽霊天国です。またの名をMSS Sound Systemとか、MSSさんと言いますが、どっちで呼んでもらってもかまいません。今回は僕が独学で編み出したミキシングのやり方をご紹介します。ミキシングに正解は無いと思いますので、こんなやり方もあるんだ程度に思ってください。ミックスとかミキシングとか言いますけど、ミキシングのほうがわかりやすいかなと思うので、ミキシングと言いますね。

まずはカバーですが、僕の作った曲を聴いてみてください。

 小さい音量でもイヤフォンでもヘッドフォンでも、すべての音が立体的に、空間的に聞こえると思います。少し大きな音で聴ける環境の方は試しにいろんなスピーカーで聴いてみてください。どの音も埋もれていません。音量を上げてももこもこしません。ボーカルはハキハキ明瞭です。キックとベースはめちゃくちゃなくらいデカイですが、楽曲のバランスは壊れていません。今やどこの動画サービス、音楽配信サービスもラウドネス規格が導入されているので、あまり重要なことでは無くなっていると思いますが音圧はかなり高いです。このくらいあれば十分でしょう。

 あんまこうゆうミックスは好きじゃないなあって方もいると思うので、それは好みですけど、今からこうゆうミックスのやり方を説明しますね。ご興味がある方はお付き合いください。長い文章なので、最初から最後までがんばって読まずに、必要な部分を必要なだけかいつまんで読んでもらえれば嬉しいです。

 音の鳴り方、音の聞こえ方、そして鳴らし方がわかればこうゆうミキシングができるようになります。僕のミキシングはダンスミュージック(クラブミュージックって言っちゃうとサウンドが今っぽすぎて、この文章はあまり参考にならないかもしれません)に特化しています。ロック、ポップスを作ってらっしゃる方はごめんなさい、あんま参考にならないかもしれません。


おしながき

1.音の仕組み 

〇音楽と箱の概念

〇リバーブの使い方

など


2.ミキシングの準備

〇必要機材、環境

〇ヘッドフォン禁止令

〇音の設計図の作り方

など


3.ミキシングをしよう

〇広義の意味でのボイシング

〇抜ける音の作り方

〇誰が主役か

など


4.マスタリングをしよう

〇合言葉は-3.0dB

〇エフェクターのルーティンを考える

〇2mixに戻ってオートメーションを描く


5.おわりに


よっしゃ行くぞ。


1.音の仕組み

 音には高い音と低い音があります。両者の聞こえ方にはこんな違いがあります。

高い音 → スピーカーの手前で鳴る。スピーカーの上で鳴る。横に広げられる。小さい音量でも聞こえる。

低い音 → スピーカーの奥で鳴る。スピーカーの下で鳴る。真ん中で鳴る。小さい音量では聞こえない。

 ちょうどいいことに、スピーカーの奧で鳴る性質と手前で鳴る性質を利用した自作曲がありました。

 イントロのシンセはHiを削っています。これにより、20秒付近から入るサイドチェインをかけたシンセが一気にスピーカーの前に来ます。これは高い音がスピーカーの手前で鳴ることの応用です。高い音を削ればスピーカーの奥へ行く、というわけです。

 リバーブの使い方はシンプルです。全トラックにリバーブをかけてください。全トラックです。ルームは同じ大きさです。リバーブの量で音にはこんな変化が起きます。

リバーブの量が多い → 音がスピーカーの奥で鳴る。

リバーブの量が少ない → 音がスピーカーの手前で鳴る。

 モニターヘッドフォンはこのリバーブ量の確認と、マスタリングの際の音割れチェックに使います。それ以外出番ないです。


〇音楽と箱の概念

 いきなり最初からスピーカーの手前だとか奥だとか上だとか下とか、何を言っているんだ?イカレてんのか?と思った人多いと思います。今は多くの人はイヤフォンで音楽聴く時代だと思いますし。

 音楽には見えない箱が存在し、音楽は必ず箱の中で鳴っています。イカレてんのか?図で説明します。怒るな。

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 箱は立体です。縦、横、そして奥行きのある立方体の中で音楽は鳴っています。そして音楽は箱の中で必ずVの字型に鳴ります。

 先ほどの高い音、低い音、そしてリバーブの特性を使って、箱の中で音を立体的に配置し、鳴らしていくというわけです。まとめてて思ったんですけど、音が目に見えたら配置が楽なんですけどね。


2.ミキシングに入る前に

 必ずそろえてほしいもの
・オーディオインターフェース 3万円くらいのものならなんでもいいと思います。1万円くらいのものは使い物になりません。値段が高いものほど音の解像度は高いです。最低ラインが3万円です。

・モニターヘッドフォン さっきの2回しか出番ないです。 2万円くらいのモニター専用のものならなんでもいいと思います。リスニング用はダメです。

・モニタースピーカー LRセットで3万円以上のものならなんでもいいと思います。ある程度低音域が出て、ある程度レンジ(音の幅)がわかるものはそのくらいの値段します。低い音と横の広がりがわからないと、箱の中での音の配置がわかりにくいので。縦に置いても横に置いてもどっちでもかまいません。横に置くときは低音が出るほうを内側、高音が出るほうを外側にしてください。大きな音を出せる環境の方はインシュレーターを三点置きしてもいいと思いますけど、一般人はそんな大きな音出せないと思うので、いらないです。置きたければ10円玉が6枚あれば足ります。60円です。

 インシュレーターって何するために挟むかっていうと、スピーカーの設置面積が広いと低音域が跳ね返って、中音域がもこもこするんですね。そう言われると不安に思う方いると思うんですけど、大きい音で聴かないとそれわかんないです。後に説明する低域処理をキチンとすれば正直問題ないです。それでも心配な方は60円投資してください。

・ジャンクスピーカー ハードオフのジャンクコーナーでコンポとセットで4000円くらいで買えると思います。スピーカーが壊れてなければコンポは壊れててもいいです。ラジカセでもいいですね。

 モニタースピーカーで理想の鳴り方ができた!なんてことはわりと誰でもできるんです。他の再生機器で自作曲を鳴らしたときに、意図した通りに鳴らないから我々は悩んでいるわけです。最終的なミキシングのジャッジはこのオンボロスピーカーでします。オンボロスピーカーで、自分の意図した通りに音が鳴っていないのならば、他の再生機器で鳴らしても結果は同じです。

 ミキシングに入る前に必ず音の設計図を描いてください。

設計図

 生楽器は中心寄り(レンジが狭い)が僕の好みです。電子音はレンジが広いほうが僕の好みです。生楽器とも混ざらないですしね。

 ハモリを一番外側に配置したのは箱の概念の応用です。多くの場合、ハモリは曲の一番盛り上がるパートで入ります。今まで聴いていた箱の大きさが、盛り上がるパートでぶわっと大きくなるわけです。盛り上がってるんだぞ感が出ます。

 具体的にどうゆうやり方で配置していくかというと、ステレオイメージャーを使います。ハットはパンニングですね。両サイドで鳴ってるとうるさいです。個人的に。音はEQで配置を意識してHiを少し削ったりして調節するのもいいですね。

 一番下で鳴っている音は必ずキックとベースです。EQは挿さなくていいです。やるならHiを削りましょう。低音域はこのお二人に任せて、他のすべての音はEQでちょい削りすぎたかなくらいLowをばっさりカットしてください。低域は混雑するともこもこします。あと、実は音圧が上がらない原因はこの低域の混雑です。

 せっかくがんばって作った曲です。すべての音を聴かせたいと思う気持ちはわかるのですが、主役は絶対にボーカルです。あとのバランスはお好みで。

 ボーカルはいつも使うエフェクターのルーティンをマスターに挿した、ボーカル処理専用のプロジェクトファイルを作ってください。浄水器のような役割を果たします。何を挿すかというと、順番はお任せしますが、EQ、コンプ、リバーブです。僕はそこにコーラスとサチュレーターとマキシマイザーを足しますが、必要ない人は挿さなくていいです。

3.ミキシングをしよう

 とりあえずプロジェクトファイルが重くなるので、いったんすべての音はWavファイルに書き出してください。一つ一つのトラックに名前をつけて、作曲とは別の、ミキシング専用のプロジェクトファイルを作ってください。ミキシングはそちらで行います。 

 何をすればいいかと言うと、さっき言ったことをします。全トラックに①リバーブ、②EQ、③コンプの順に挿してください。全トラックです。リバーヴで奥行の調整をし、EQで主にLowを削って、コンプでダイナミクスを抑えるというわけです。
 

 抜ける音の作り方ですが、ピーキングEQをどの帯域でもいいので、0dBまで下げてください。そして右(高音域)や、左(低音域)にちょこちょこ動かしてください。そうすると、ある地点で一番音が聞こえにくくなる地点があるはずです。そこがその楽器の一番鳴るべきところ、おいしいところです。今度はその地点でピーキングEQで+2dB~5dB上げてください。この作業を全トラック行います。ボーカルは浄水器でろ過したのでやらなくていいです。低音域のお二方もやらなくてもいいです。ただし、ベースとキックのお二方の音の高さにもよります。高さというのは、オクターブの話です。高い場所でベースが鳴っているならば同じ処理をし、うんと低いなら触らなくていいです。やるならむしろHiをEQでバッサリカットしてください。

 ボイシングは、同時に音が鳴るときに重要になってきます。低音域のお二方とかぶることは無いと思いますが、例えばピアノとシンセとオルゴールがいっしょになるパートで、どんなにボリュームフェーダーをいじってもどっちも聞こえづらいという場面が出てくると思います。その際は例えばピアノはそのまま、シンセを1オクターブ下、オルゴールを1オクターブ上で鳴らしてみてください。3つすべての音が聴こえるようになります。

 一度ここでフェーダーワークがばっちりな2mixを作って書き出してください。

4.マスタリングをしよう

 マスタリングは本来アルバムの曲の音量調整の作業のことを指すので、ネットでみなさんがマスタリングと言っている作業がなんなのか正直わからないんですが、ここではEQ、コンプ、マキシマイザー(マキシマイザーとリミッターは呼び方が違うだけで同じものです。要するに最後の最後に音圧を上げるために挿すコンプです)で音を整える作業をマスタリングと呼ぼうと思います。

 まずマスタリング専用のプロジェクトファイルを作ってください。そしてマスターに挿すエフェクターのルーティンを構築しましょう。順番はお好みですが、最初がEQ、最後がマキシマイザーというのは絶対に守ってください。このルーティンに作った2mixを放り込んでください。

 最初のEQで何をするかというと、2mixを抜ける音にします。高音域はシェルビングEQで持ち上げて、低音域はピーキングEQで少し下げるといいでしょう。正直その2ヵ所いじるだけでいいです。このときいじるEQは+-2dBまでということを守ってください。マスタリングのEQで+-2dB以上いじらなければ成立しない楽曲は2mixに問題があります。2mixを作る作業に戻りましょう。気になる部分はマスタリングでなんとか修正しようという考え方をもしも持っているのならば今すぐに捨ててください。目指すのは完璧な2mixを作ることであり、マスタリングではマキシマイザーやリミッターを一発かませば仕上がる、というのが本当の理想です。

 途中に挟むエフェクターはお任せします。僕はコンプを2種類と、サチュレーターを挿しています。必要のない人はいらないです。

 最後にマキシマイザーで音圧を上げるんですが、Out Cellingは-0.1、Attenは-3.0、スレッショルドは2mixによって異なってくるので任意です。この数値はなんで?と聞かないでください。脳死でいいんですこんなものは。

 最後の最後におそろしいことをします。マキシマイザーを同じものでも違うものでもいいんですが、もう一発とどめに挿します。このマキシマイザーのOut Cellingは-0.7、Attenは-3.0、スレッショルドは直前にマキシマイザーをかけてるので-3.0や、-2.9になるはずです。じゃあ3発挿したらもっと音が大きくなるのかというと、ならないです。最後にモニターヘッドフォンで音割れしてないかチェックをしてください。

 さて、おかしなことに気づきませんか?たしかに音圧はとても上がりました。しかし、あんなにがんばって緻密なフェーダーワークをして作った2mixのバランスが崩れているんです。強いコンプレッションがかかると2mixはこうなります。ここのパートは音を小さくしたいのに、すごく大きくなっていて、ここのパートは音を大きくしたいのに前後のパートと音量の差がなくてのぺーっとなっている。ここまでやったのに自分は間違ってたのか…と絶望しないでください。これでいいのです。この作業はこの2mixのパートごとの音量バランスの確認のためにしていたからです。どこが持ち上がって聞こえて、どこがのぺーっとしてるかが確認できたら、もう一度ミキシング専用のプロジェクトファイルに戻って行う作業があります。それがオートメーションです。

 オートメーションを描くときは、さきほどの持ち上がって聞こえてしまうパートのボリュームを下げ、のぺーっとしてしまうパートのボリュームを上げる、ということをします。コツとしては、低音域のお二方がいないパートは思い切り音が持ち上がって聞こえます。音がいっぺんになるパートは前後のパートと差がなくのぺーっと聞こえます。オートメーションを描いて2mixを書き出したら、マスタリング専用のプロジェクトファイルに放り込みましょう。

 これを音量差が意図的になるまで何度も繰り返します。この作業中が一番耳の感覚がするどくなっているので、ちょっとの音量差が気になると思います。それでいいんです。感覚を研ぎ澄ませて、納得がいくまでオートメーションを描きましょう。

 納得が行く地点がゴールです。楽曲の完成です。お疲れ様でした。ぜひどこかで発表してください。ただし、マキシマイザーを二発かけて仕上げるやり方は楽なので紹介してますが、音の粒立ちはやや抑えてしまうやり方なのだということは頭の片隅においておいてください。

おわりに

 一気に書いたので超疲れましたが、ミキシングに苦しんでるボカロPさんとても多いので、こうゆうやり方がありますよ程度に思ってもらえばいいです。早くミキシングの苦しみから解放されて、いい曲を作ることに集中してください。僕はあなたの音が聴きたいです。

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