なんにも見えない
文庫本をひらいて
夢の入口に立ったぼくは
目に涙ためている
日に焼けた紙めくるたび
一滴また一滴と
落ちる雫は染みを残す
ここはひとの夢の中
一歩また一歩と
前に進んでいくたび
物語の結末 迎えたくないと
栞挟むページ 捜してる
ここはひとの夢の中
寝ているぼくは生きている
夕暮れ時 細い背中
ぼくの恋心にきみは気づいている
夢のふちを指でなぞる
かすむきみの横顔
頬に夜の月 映り込むようで
なんにも見えなくなっていく
手あたり次第 暗闇の中
好きの二文字 捜してる
苦しいからこそ、もうちょっと生きてみる。