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みつもりりっく

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詩集になります。歌詞も合わせて投稿しています。
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#物語

君が見つめていたもの

肌と肌、服と服がこすれ合うたび、僕らの時間もすり減っていく。カーテンの隙間に街灯が白く光っている。二階の部屋にしたのは間違いだったのかもしれない。天井の模様を見つめていると、君が胸の中でゴニョゴニョと寝言を言う。夢を見ているようだ。君には忘れたいことがあって、僕は顔も知らないそいつのことを許せないでいる。 なぜ、君は傷つきにいく。ずっと、僕のそばにいればいいのに。僕だったら、僕だったら。すべてを守る。君の頭を撫でる。ねえ、僕は結婚したいくらいなんだよ。この地球は回り続けるの

カリヨンの鐘

今は何をしているの、これからどうしていくの。そっと耳を塞いだ。対面より、画面の向こうに真実があると思い込み、現実に直面する度に、人と比べて焦ってばかりで、あまつさえ仕事も続かずに生きながら死にやがる青二才による、行方知れずな時代の漂流者に捧ぐ愛の唄。 終着駅不明の電車に乗って旅をしている僕はハンドルを握っていない。午後三時の日差しに囚われる半導体、行く末を見守るだけの恥じらいもない湯けむり。どこへ向かっているのだろう。君に向かっているのだろう。まだうるさい冬は雪解けシティと

希望の光を見た日に言えることはもう何もなかった。

不安という幻想が押し寄せる。不安だとわかっているのに、破滅願望が消えない。ゆるゆると暗闇に向かっていくような破壊衝動。気付けば、崖の上にいた。わたしにとっては高すぎる崖の上。このまま死ねたらと海へ飛び込もうかと思っている矢先に、脚の付け根が痛くなる。どうしてだろう。まだ死にたくないのかな。毎日毎日闘ってきた。人目を気にしてきた。でも、それは全部自分の目だった。認められたくて必死に頑張ったこともあった。でも、すぐに虚しくなった。何よりそれって自分を大切にできていないと思ったから

家なき詩人はもうすぐ死ぬ

「人間に急にしっぽが生えたら。たとえば、移動を急いでいるとき。次の電車が来ちゃう。早くトイレから出なきゃ。慌ててズボンを上げて。電車に乗るときに気付くんだ。腰の辺りから、しっぽが外に出ちゃっていること。絶対にドアに挟まると思うなあ。痛覚はない。気付いたら引きちぎれているんだ。尾てい骨から伸びてて、太さは親指くらいで、長さはふくらはぎまで。しっぽ切り通り魔が出て、街のそこらじゅうにしっぽが落ちていて社会問題になる。しっぽ掃除人現る。しっぽ守る人売る人続出との号外が配られる。その

嫉妬shit

ドライブしていると、たまに空が水彩画に見える。自分が惨めに思えて仕方なくなって、頭が痛くなって酷い目眩がする。基本的に受動的で誘惑には能動的。アルファからオメガまで共犯的。怠惰の国から生まれてきて、尻に火が付くのはロウソクで炙られた時。口を開けば情動に振り回される。キャンディを噛み砕くと一緒に舌も噛む。算数が苦手。好きの反対はキス派。さっきまでフレンチトーストを食べていたのに、今、興味があるのは許し合うこと。錠剤の中に入っているのが悪い。服用した。常用スペース意味プラス副作用

鬼が出る夜明けの中でラブソング

ゴミを回収する音が聞こえる。静けさが恋しい。フローリングの上に転がる湿気た菓子。爆音で流れ始める歌詞。クーラーでも点けてしまったみたいに寒い。手のひらにハーとあたたかい息を吹きかける。熊のように冬眠できたらいいのに。カーテンを開けないで。イヤホンを耳に挿して。 ゴミ収集車のエンジンが切られた。静けさが胸に迫る。満腹中枢が麻痺している。腹の中がグツグツと煮立っている。何を充電しているのと聞いたら、未来という答えが返ってきた。古ぼけたスーファミ。ゴミ箱の中に古傷は見当たらない。

魂の露出狂

ウォシュレットの水鉄砲が尻の割れ目を貫通すると、とうとう頭蓋骨まで到達してしまった。脳みそが勢いよく撹拌され、東西南北余すところなく首が回転した。思考が方位磁針になっている間、卵胞は破裂、イソギンチャクが卵子を抱いた。一方で精子はサバイブしている。もれなく生まれながらにして生き残りである。振って振って振って蓋を開けたら、血なまぐさい炭酸が溶岩のように溢れ出る。直感とは、膨大な経験による数学的計算を一瞬で行った情報体である。魂の露出教徒である私はマグマ噴火を愛しており、水と油の

このまま死ねたら

腕時計に反射する、常夜灯のオレンジが視界を脅かす。トラックの排気ガスが脈を通って抜けていく。首に巻いたマフラーの毛糸がチクチクする。夜空を見上げると、唇が乾燥した。ドブに捨てたはずの人生を嫌でも思い出すのだ。ねずみになった気分になる。とにかく息苦しい。 暗い部屋の一室で、暖房の効き目に猜疑心を募らせている。祖父にあやされた記憶が海馬を刺激する。深い刻にアルコール摂取が過ぎ、リバーの中で赤子を溺愛した。笑うと、肺が返事をする。オルガンの音色が室内に響く。オリーブの実を口に入れ

上の空、罪。

四足歩行の島人が海沿いの通りを駆け抜けている。遠くに見える故郷の山が爆発して、ガラクタがこちらに押し寄せてくる。異物を取り払う予定調和に対してはどうお思いですか。釣り人はもてはやされ、幾ばくかの純粋な子ども達はさめざめと向こう岸を眺めている。時代に取り残されろ、と思う。 ミャーミャー鳴く猫がそばで一際目立っている。僕の視聴率を奪い、時に腹を見せ、ゴロゴロ喉を鳴らしている。水筒の水をばらまき、避暑地に来た真似事をする。今日は晴れていて気持ちがいいねと言われたので、そうですねと