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3.【痛みと動きについての考え方】病理運動学的モデルと運動病理学的モデル

このブログは、MSI(Movement System Impairment)について解説することを目的としています。
MSIについては、こちらをご覧ください。
MSIでは、身体の動きがきっかけで生じた痛みの原因を解明し、改善するプロセスを学ぶことができます。


はじめに

今回は、「病理運動学的モデルと運動病理学的モデル」についてご紹介します。
関節や筋肉に痛みや動きづらさが生じた場合、その原因を説明する代表的な考え方が2つあります。
「病理運動学的モデル」と「運動病理学的モデル」です。
痛みと身体の動きのメカニズムを理解することは、身体の治療をする現場において重要です。
この2つの違いはどのような点にあるか、臨床でどのように活かせるか、解説していきたいと思います。

病理運動学的モデルとは?

「病理運動学的モデル」は Hislop(1975) が発表しました。
怪我や病気が身体の動きの問題を引き起こしているという考え方です。
例として、大腿骨(太ももの骨)の骨折で考えてみます。
大腿骨の骨折では、まず骨折による痛みが生じます。
また、周辺組織に炎症が生じ痛みと筋力低下などの症状がでます。
これにより股関節や膝関節の動きが悪くなります。
動きが悪くなった結果、動かせない状態が続きます、
それは、さらなる能力低下につながるという悪循環が生じます。
これが「病理運動学的モデル」の考え方です。

病理運動学的モデル

図は運動機能障害症候群のマネジメントより引用

運動機能障害症候群のマネジメント [Shirley A. Sahrmann]

運動病理学的モデルとは?

「運動病理学的モデル」は Sahrmann(2002)が発表しました。
生活の中で繰り返す動きや姿勢が、身体の動きの問題を引き起こし、筋肉や関節の問題に繋がるという考え方です。
運動が痛みの原因になるという比較的新しい考え方であり、
MSIの基となる考え方です。
こちらは、膝の痛みで考えてみます。
変形性膝関節症などの診断名で来院された方などは、痛みが生じたきっかけが明確ではない場合も多いです。
運動病理学的モデルでは、痛みが生じた原因は長期にわたる不良な動きによって、刺激(=メカニカルストレス)が特定の部位に蓄積されてしまった結果だと解釈します。
刺激が特定の部位に蓄積された結果、組織は少しずつ刺激に合わせた形に変化していきます。
これにより関節の動きも変化し、関節の適合が悪い状態になります。
関節の適合が悪いまま動くと、小さな損傷が生じます。
これが、限界を迎えると組織に炎症が生じ、痛みとして表面に問題が出現します。
これが運動病理学的モデルの考え方です。

運動病理学的モデルの図

MSIセミナー資料から一部改変

2018LAMSS資料

運動病理学的モデルの重要性

近年まで、身体の痛みや動きづらさを「病理運動学的モデル」で考えることが一般的でした。
例えば、
「関節が腫れているから、痛くて動きづらい」
「筋肉がダメージを受けているから力が入りづらい」
などです。
しかし、関節や筋肉に問題が生じた時に、きっかけが明らかでない事も多いです。
具体的には、変形性関節症や腰部脊柱管狭窄症などの疾患では明確なきっかけがなくても、痛みが出現します
このような場合は、生活の中での動きや姿勢が悪いため、身体の動きの問題を引き起こし、筋肉や関節の痛みが生じています
これが、運動病理学的モデル」の考え方です。
「運動病理学的モデル」を知ることで、明確なきっかけがなく痛みが生じたケースに対しても対応することが出来ます。

明確なきっかけで膝の痛みが生じることも多い

まとめ

身体の動きに生じた問題(運動機能障害)の原因を説明する考え方として、
代表的な「病理運動学的モデル」と「運動病理学的モデル」について解説しました。
理学療法の現場では、きっかけがなく痛みが生じた患者さんに対応する場面が多いです。
「運動病理学的モデル」の視点を持って日々の患者さんに対応することで、痛みの原因を解決するきっかけなります。

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