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5.【MSI主要コンセプト8-1】運動は最少抵抗の軌道を通る

このブログは、MSI(Movement System Impairment)について解説することを目的としています。
MSIについては、こちらをご覧ください。
MSIでは、身体の動きがきっかけで生じた痛みの原因を解明し、改善するプロセスを学ぶことができます。


はじめに

今回は、「運動は最少抵抗の軌道を通る」についてご紹介します。
この考え方は、MSIにおいて最も重要な考え方と言っても良いです。
「運動は最少抵抗の軌道を通る」とは何か?臨床にどのように活きるか?
解説していきたいと思います。

「運動は最少抵抗の軌道を通る」とは?

ヒトの身体には、約260個の関節があります。
身体を動かすときは、一つの関節だけが動くのではなく多くの関節が同時に動きます。
ヒトは同じ関節を持っていても、個人個人でそれぞれの関節の動きやすさは異なります。
どの関節が動きやすくなるかは、日常生活の中で行う習慣的な動きや姿勢、その人の体格や活動量によって決まります。
動きやすい関節・動きづらい関節が出現した結果、最も早く・簡単に動いてしまう関節が生じてしまいます。
身体を動かすときに、動きやすい関節から動いた結果として、「運動は最少抵抗の軌道を通る」ということが起こります。

ヒトの骨格

画像はwikipediaより引用

https://ja.wikipedia.org/wiki/関節

「運動は最少抵抗の軌道を通る」のはどのように問題になるのか?

動きやすすぎる関節は、運動が繰り返されると「特定方向への過剰可動性」が生じます。
「特定方向への過剰可動性」についてはこちらを参考にしてください。

運動が最少抵抗の軌道を通った結果、関節は特定方向への動きやすさが生じます。
特定方向への動きやすさが生じた結果、関節や筋肉への負担が集中する箇所が生まれます。

組織に過剰なストレスが集中した結果、微小な炎症が生じ、痛みなどの症状につながります。

具体的な例で考えていきます。
今回は、立ち仕事で左足に体重をかけるクセがある方を例にして考えてみます。

左足に体重をかけるクセ

左足に体重をかけると、左の股関節は内転位になりやすくなります。
このかたは、立っている時も歩いている時も左股関節が内転位になりやすくなります。
これが、この方の股関節における最少抵抗の軌道を通る動作になってしまいます。
そうすると、股関節外側の組織は過度に伸ばされます。
これにより大転子滑液包の炎症などが生じ、股関節外側の痛みにつながります
これが、運動が最少抵抗の軌道を通ることにより、特定方向への過剰可動性が生じ、痛みにつながるメカニズムです。

大転子滑液包

画像はオオノクリニックより引用

https://okuno-y-clinic.com/itami_qa/trochanteric-bursitis.html

臨床に活かすには?

「運動は最少抵抗の軌道を通る」ということを理解すると、普段の臨床にどのように活かすことができるでしょうか?
特に多関節の運動を評価する時に有効になります。
MSIでは立位の評価として、
・前屈、前屈からの戻り、側屈、回旋、片足立ち、スクワット
などの評価を行います。
これらの評価を行う際に、
「この患者さん・クライアントさんの最少抵抗の運動はどこだろう?」
「どの関節のどの方向に動きやすい傾向があるか?」
と考えることができるようになります。

また、日常生活の行い方や習慣的に行なっている動作を観察することで、その方がどのような最少抵抗の軌道を有しているか推察することができます。
・足はどちらを組む
・デスクワークの時の姿勢は?
・寝る時はどちらを向いて寝る?
など、具体的な動作を行うことで、本人も気づいていない動作のクセを見つけることができます。

本人も気づいていないクセがある

画像は言葉の手帖から引用

https://www.tutitatu.com/「無くて七癖」の使い方や意味、例文や類義語を/

まとめ

今回は、「運動は最少抵抗の軌道を通る」についてご紹介しました。
ヒトの身体は動きやすい関節から動いてしまいます。
多関節の運動を評価する時に「最少抵抗の軌道はどこか?」を意識することで、その方の動きの特徴を理解することができます。

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