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広報の仕事 その4 「広報イベント」お笑い芸人さんの現場での対応力

新卒で広報宣伝部・広報室に配属になったことがきっかけで、それ以来、会社を変え、業界を変えながら広報の仕事を30年近くやってきました。

広報にはさまざまなタイプの仕事があり、大変幅も広いし奥も深い、非常にやりがいのある仕事です。

私の長女がちょうど中学3年生なのですが、これから自分の将来について考えるであろう時期に差し掛かっています。そんな娘や、娘と同年代の中高生の皆さんにわかりやすく自分の仕事について紹介したいと思いました。これから数回に渡って、広報の仕事に興味がある中高生、あるいは大学生の方にわかりやすく「広報の仕事」についてお伝えしたいと思います。

今日は「広報イベント」について書いてみようと思います。広報イベントって何?具体的にはどんなことを指すの?と疑問に思われた方もいらっしゃるかと思います。基本的には、広報が企画・主催するイベント、はすべて広報イベントというくくりになります。ですから、例えば、メディアの方々に新製品をアピールするためのイベントであれば新製品PRイベント、社内の社員に向けて社内の活性化を図ったり、交流を目的としたり、風通しを良くするような社内イベント、あるいは、社外の人を集めて、ある目的や企業からのメッセージを発信しながら行うような社外イベント。いずれも、広報部が主幹して企画・実行するものは広報イベントと呼ばれます。

イベントの立案の仕方

まず何よりも大切なのは、このイベントは何を目的にするか、ということです。前述した通り、新製品をアピールするためのメディア向けのイベントであれば、新製品をわかりやすく伝え、しかもメディアが取り上げたいと思うようなイベントを考えていく、というのが大事になります。社内のイベントであれば、そのイベントを通して、社員の皆さんに何を伝えたいのか、あるいは何を達成したいと考えるのか、を考えて企画していきます。社外のイベントであれば、まずはターゲットとなるお客様は誰で、このイベントを通じて何を提供したいのか、何を伝えたいのか、を明確にする必要があります。そして以下の項目についても考えていきましょう。

期待される成果は何か?

上記の考えがまとまったら、企画書に書き記します。どこの場合でも、このようなイベントをやる場合は、企画書を作成し、上層部の許可をとる必要があります。目的を明確にし、期待される結果についても考えます。ただのお祭りではなく、何かを広報として伝えたい、あるいは達成したいからイベントをやるのです。そのあたりをお忘れなく。

誰が参加するのか? = ターゲットオーディエンスは誰か?

誰が主たる参加者となるのか?メディアの記者さんたちなのか、社員なのか、その家族や友人なのか、あるいは会社の取引先なのか?顧客も含むのか?それともまったくの一般の方なのか?などを考えます。そのターゲットオーディエンスにとって最も良いイベントとなるように企画・立案していくのです。

時期、時間帯

このイベントをやるのに最適な時期は?例えば、お花見イベントを夏には開催できないように、その時期でないと成り立たないイベントも数多くあります。また、社内外の他の行事やイベントと重ならないか?時間帯としては、それを選ぶ際に、誰が参加するのかという部分が大きく影響します。就業時間に行うのか、昼休みや終業後のイベントとするのか?あるいは海外のゲストを呼んでやるイベントであれば時差や曜日なども十分に考慮します。

会場はどうするのか?

今はコロナの影響もあり、なかなか対面式で一堂に会するイベントは開催しにくいと思いますが、もしそれでもやる場合。その場合は、会場はどこなのか?十分にソーシャルディスタンスが取れるスペースがあるのか?収容人員は最大でどのくらいなのか?などを考慮します。通常であれば、ホテルの会議室、ホテルのバンケットルーム、貸会議室、貸しホール、会社の会議室などを利用することが一般的です。収容人数も大事ですが、参加者にとって便の良い場所を選ぶことも重要です。

オンラインの場合は、どのツールで行くのか

対面で一堂に会するイベントが難しい場合は、やはりオンラインイベントがおすすめです。私の会社ではMicrosoftのTeamsが唯一の公式ツールなので、それ以外のオンラインミーティングツールをダウンロードすることは許されておりません。ですが、個人的なミーティングであればZoomやGoogleMeeting、FaceTimeやLine Meeting、インスタのビデオチャット機能など、さまざまなオンラインミーティングツールが存在します。それぞれ似たような機能を備えており、とても便利ですね。最近では、Teamsのホワイトボード機能や付箋(ふせん)機能を会議中に利用することも多くなりました。機能の進化も常にウォッチする必要がありますね。

主催は誰で、ゲストは誰か?

主役はあくまでも参加者、の場合が多いのですが、ゲストをお呼びしている場合、ゲストのスケジュールや登場タイミングが非常に重要かつ難しい時もあります。

準備8割、実行2割

上記の事柄を踏まえて、企画書がおおよそできました。予算も明確にし、マネジメントからも了承を得ました。次に大事なことは、実行に向けての準備です。全体のプログラムの時間は何時間で、司会は誰で、ゲストは誰なのか、どのタイミングで入ってもらうのか?細かい時間を進行表に入れて、セリフを考えていきます。その際に、プロジェクターは何を移すのか、スライドなのか、動画なのか、BGMはどうするのか?などの小道具も準備していきます。シナリオが完成したら、実際に時間を計測しながら、その時間で収まるかどうかを確認していきます。本番のゲストには参加していただけないので、社内で代役を立てながら実戦さながらにリハーサルを繰り返し、シナリオを何度も書き直していきます。意外と忘れがちですが、海外のスピーカーやゲストが入る場合、そこに通訳が必要となります。通訳の時間も忘れずに必ず予定に入れておくことが大事です。実際に話す人に加えて、通訳時間なので1.5倍くらい長くかかることになるのです。言うまでもなく、通訳の人選もイベントの成功にはかなり重要な要素です。これらすべてをイベントの当日までの限られた日数を使って、精巧に練り上げていく地道な作業があるのです。準備8割実行2割、というのは、実行する時間は実際に2割だが、準備には8割の時間を要する、ということです。準備には上記の段取りがすべて含まれます。関係者との定期的な打ち合わせ、参加者への周知、参加登録受付など細かい準備が直前まであり、手は抜けません。裏を返せば、より良い段取りをしておけば、その仕事は8割が成功したも同然、あとは本番を楽しめば良い、ということでもあります。

お笑い芸人さんの対応がさすがプロだったという話

先日の私の会社でのオンライン・イベントの例を挙げてみましょう。参加者は社員およびその家族・ご友人、そしてスポーツ選手が出演するということで、そのファンクラブのメンバー、ローカルのスポンサー企業の皆さんが主たる参加者で日本全国あちこちから参加してくださっていました。そして、お呼びしているゲストが3組あり、3拠点からそれぞれ参加するというちょっと複雑なイベントでもありました。主催する私たちにとっては、どのゲストも同じくらいなくてはならない重要なゲストさんです。3拠点のゲストは、一人は海外、一人は都内、一グループは宮城県、とバラバラな場所でそれぞれご自分の順番までログインされた状態で待機されていました。順番としては、宮城県のゲスト(グループ)、都内のお笑い芸人さん、そして海外のスポーツ選手、ということでシナリオを準備し、リハーサルを重ね、本番も若干、時間が後ろに押しなりながらも順調に宮城県から都内のお笑い芸人さんにご登場いただいたその直後。なんと!海外からのスポーツ選手がまさかの前倒し登場!「予定より30分も前に出る準備が整ってしまったから早く出してくれ、彼を待たせられない!」という連絡がスポーツ選手のクラブチームから、MCとして司会進行をしている私のスマホにチャットでブーブー入ってくるのです。しかも、お笑い芸人さんにご登場いただいたばかり!冷や汗ものです。一番大事なのは参加している社員とその家族や友人なのは言うまでもなく、決められた順番通りイベントを進めていくのがベストなのは重々承知しているのですが、お呼びしている大事なゲストを待たせることもできない状況。仕方ない!とっさの判断で、スポーツ選手を急遽登場させ、シナリオをガラッと入れ替えし、スポーツ選手とお笑い芸人さんの出番をほぼ同時に持っていくことにしました。

結果、どうなったかというと、いやぁ本当にさすがなんですよね、お笑い芸人さん。そういった現場でのハプニングやとっさの変更にも慣れていらっしゃるのでしょう。私たちが慌てふためき咄嗟に発した言葉などをうまく拾って、それもネタにしながら笑いを取ってくださるんです。無茶ぶりして急に振ってももちゃんと答えてくださったり、アドリブでもいろいろ突っ込んでくださったり、芸人さんはやはりエンターテイメントのプロフェッショナル。現場での対応力、周りを巻き込む力が素晴らしい。私も広報を長いことやってきておりますが、いつもこのようなイベントばかりをやっているわけではありませんし、司会のプロでもありません。踏んだ場数としては芸人さんにはかないません。所詮、決まった通りのシナリオに沿って進めるのが精いっぱいな素人なのです。でも、どんな状況でも笑いに変え、その場の雰囲気を和ませたり、笑いを沸かせたりができるお笑い芸人さんのスキルは本当にすごいの一言。本当に勉強になりました。

まとめ

社内イベントについて考えてきました。目的、何を達成したいのかを明確に、参加者、日程や時間、場所やツールの考慮、そしてリハーサルを含めた準備。これらをイベントまでの2-3か月で全部整えていく必要があります。かなり集中力の必要な作業になります。準備8割、実行2割、と書きましたが、どれだけ準備していても、完璧というのはあり得ません。上に書いた例のように番狂わせということも往々にしてあります。そういった時も、現場でできる最善の判断をし、進めていく能力が広報には必要とされますね。あとは、そんなハプニングも楽しめる度胸も時には必要かなと思います。その時は冷や汗をかきっぱなしでしたが、終わってみると「あー、楽しかった!」と思えるのがイベントのだいご味でもありますね。皆さんにもぜひイベントを作り上げることを楽しんでほしいな、と思います。

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