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野生を取り戻せ!銚子デジタルデトックス単独行

私は、自分の中の野性を呼び覚ましたいと思って、ほとんど週末のたびに、通信機器を家に置いて出かけている。
いつも目的も目的地も無く、なんとなく行き先だけ決めて、特に道順も調べず出かけている。

前回は、神奈川県の三浦半島の先端まで行ったので、この日は千葉県の東の先端、銚子まで行ってみることにした。


(前回)


最初の電車が1番難しい。

毎度のことであるが、自宅最寄駅の路線図には、銚子駅までの運賃表示がなかった。
なんとなくの方向はわかるので、ともかく電車に乗り込んだ。

電車の車窓から、線路沿いの公園が見えた。
サッカーをしている子どもたちがいて、あとから来た子ども達がそれに加わった。
子どもの頃は、通信機器を持っていなかったが、どうやって集まっていたのだろう。
すっかり忘れてしまった。


千葉方面の電車に乗ろうと秋葉原まで来たが、どの電車に乗ればいいのかわからない。
総武線の駅のホームには、時刻表がなく、何時にどこ行きの電車が出るのかわからなかった。

ホームの電光掲示板には、津田沼行きと千葉行きの表示がある。
千葉行きのほうが遠くへ行くので、とりあえずそれに乗ってみることにした。
千葉まで行けば、その先にへ向かう電車に乗れそうだし、追い越しの急行などがあれば乗り換えれば良かろう。


錦糸町駅まできたところで、乗り換え表示に、総武線快速という表示を見つけた。
私は、秋葉原で乗り換えた黄色の総武線が、総武線の全ての電車が乗り入れる路線だと思い込んでいたのだが、快速は別の線だったのだ。

乗っていた電車を降りて、総武線快速のホームに移動すると、時刻表があった。
秋葉原の駅に時刻表がなかったのは、総武線各駅停車しか停まらないので、表示をする必要が無いからだろう。


時刻表を見ると、銚子行きの電車があることから、この路線が銚子までつながっているであろうことはわかったが、しばらく銚子行きの電車は来ないようであった。

しかも、路線表示を見ると、成田空港方面、内房線、外房線の、大きく分けて3つの行き先があることがわかった。
成田空港行きは銚子には行かないのは確かだが、内房線にも外房線にも銚子駅の表示が無い。
内房・外房・というのは房総半島の内側と外側ということか、内側が東京湾側、外側が太平洋側、ということであろう。

成田線、内房線、外房線の行き先駅名の表示の写真


内房線の行き先には袖ヶ浦の表示があった。
袖ヶ浦は確か、東京湾をゆりかもめで渡った先なので、やはり東京湾側を行くのが内房線なのだろう。

そのように考えて、とりあえず外房線の上総一ノ宮行きの電車に乗った。
この電車に乗っていたら、銚子に近づくのかどうかはわからないが、乗っている間に何か手がかりが掴めるかもしれないし、少なくとも千葉駅まで行けばもっと具体的な手がかりが見つかるであろう。

総武線快速の電車の予定を知らせる錦糸町駅の電光掲示板の写真


千葉駅手前の車内アナウンスで、総武本線への乗り換え案内が流れた。また、内房線への乗り換え案内も流れたことから、総務本線というのは、外房線とも内房線とも行き先が違うのだと言うことがわかった。
このまま上総一ノ宮行きに乗っていて良いのか不安になったので、一旦千葉駅で降りることにした。

千葉駅で路線表示を見ると、やはり外房線は調子へと続いていなかった。
総武本線のホームへ行ってみると、銚子行きの表示があった。
千葉駅で降りたのは正解のようだった。

外房線の駅名を記した千葉駅内の表示の写真
総武本線の駅名を記した千葉駅内の表示の写真


総武本線の電光表示板を見ると、9時台の後半に、途中の成東行きがあり、10時台の半ばに銚子行きの電車があった。
この時の時刻は9時半ぐらいで、どちらに乗るにもまだ時間があった。
一旦成東行きに乗ってもよいだろうが、結局10時台の銚子行きに乗り換えることになるのだろうか。

総務本線の今後の電車の発射時間を示した千葉駅内の表示の写真


時刻表など、何か手がかりがないか、総武本線のホームに降りてみたが、見つけられなかった。
駅のホームの、時刻表の有る無しの基準は何なのだろう。

総務本線の、停車位置の表示は落花生であった。
可愛らしい。

落花生を模した千葉駅ホームの表示の写真


ホームに駅員さんがいたので、声をかけてみた。
駅員さんによると、やはり成東行きに乗ったとて、後に千葉駅を発射する銚子行きの電車に乗り換えることになるのだと言う。

駅員さんは、常備しているらしいダイヤ表で、より早く銚子駅に到着する方法が無いか調べてくれた。
成田線のホームから成田行きに乗って、成田駅から銚子行きの電車に乗れば、若干だが早く着けるかもしれない、と教えてくれた。
私は、駅員さんにお礼を言って、一旦ホームを後にした。

千葉駅構内にはお店もたくさんあるし、私は千葉駅始発の銚子行きを待つことにして、喫茶店で電車を待った。

千葉駅内の喫茶店でいただいたモーニングセットの写真


銚子行きの電車は4両編成であった。
それほど移動する人はいないのだろうか。
ともかく、銚子まで行けることは確定したので、安心して電車に乗り込んだ。

銚子行きの発車時刻を知らせる千葉駅のホームの電光掲示板の写真


これまで、行き先まで電車やバスが通っていることを確認するぐらいで、時刻や乗り換えを調べずに、当てずっぽうに出かけてきていたが、ダイヤ表まではいかずとも、広域の路線図が一覧できるものがあれば、ずいぶん旅は楽だろう。
伊能忠敬が徒歩で各地の地図を作ったというのは、いかばかりの苦労であっただろうか。

そんなことを考えているうちに、私はいつの間にか眠っていた。
目を覚ますと、電車は八街駅で停車していた。
八街は、落花生が有名だそうだが、私には限界ニュータウンの印象のほうが強い。
車窓から見える景色は、すっかり田園風景になっていた。


そのうちに、電車は成東駅に着いた。
千葉駅で成東行きの電車に乗っていたら、この駅で電車を待つことになったのだが、古い駅舎に待合室もあったので、ここで待つのも良かったかもしれない。

総務本線の成東駅の駅舎の写真


電車は少し進んで、横芝駅でまたしばらく停車した。
特急しおさいが駅に入ってくる。これが行き過ぎるのを待つのであろう。
この後も、時々駅で長いこと停車しながら、電車は銚子へ向かった。

銚子の手前で、風力発電の大きな風車が見えてきた。
太平洋に面した平野では、風が安定して吹いているのだろうか。
千葉駅を出てから、およそ2時間が経過していた。


思いがけず、きゃりーぱみゅぱみゅ。

銚子駅に着いたら、銚子電鉄に乗り換えるか、銚子駅の周りを散策するか、着いてから決めようと思っていたが、銚子駅と銚子電鉄の乗り場はつながっていて、すぐに電車が発射するとのことだったので、銚子電鉄に飛び乗ることにした。

銚子駅から銚子電鉄に乗り換える人々の写真


電車は満員で、きゃりーぱみゅぱみゅとコラボレーション中の電車内は、バルーンやぬいぐるみで可愛くデコレーションされていた。
社内のアナウンスもきゃりーぱみゅぱみゅが担当していて、ローカル線を丸ごと観光地化して盛り上げようという気持ちを感じた。

銚子電鉄はICカードに対応しておらず、駅に切符売り場もなく、車内で乗務員さんが1人1人に声をかけて切符を販売していた。
1日乗車券があると言うので、それを購入することにした。
銚子駅から終点の外川駅までの往復運賃と同じ金額なので、少なくとも外川駅まで行くなら、良い選択肢だと思う。

銚子電鉄の一日乗車券の写真


銚子電鉄は、民家のすぐそばや、林の中や、キャベツ畑を横切って進んでいく。
可愛らし古い車両と、乗務員さんの明るい声、風船でデコレーションされた楽しげな車内は、昔の遊園地のアトラクションのようだった。

多くの乗客が、犬吠駅で降りていった。
犬吠駅には、世界灯台100選、日本の灯台50選に選ばれた、犬吠灯台があるという。
銚子電鉄沿線では一番の観光名所のようだった。

終点の外川駅まで乗っていた乗客らは、電車や駅舎などを撮影したり、お土産を買って楽しそうにしていた。
どうゆう経緯かは知らないが、銚子電鉄の駅には全て別名があって、外川駅にはありがとう駅という別名があるらしい。
乗客らはありがとう駅の駅名表示もしきりに撮影していた。

銚子電鉄外川駅にあるありがとう駅の表示の写真


漁港のある町を歩く。

私は、駅を出て海の方へ向かい、どこか腹ごしらえできる場所を探すことにした。
ちょうど正午過ぎの海は、太陽を目一杯反射して輝いていた。
これほど強い反射光を日常的に見る生活はどんな風だろうか。

外川から見える太平洋の写真


外川駅は、見どころがいくつか案内されているものの、それほど観光地化されておらず、駅に置いてあった観光案内のリーフレットを広げてご飯屋さんを訪ねてみたが、ほとんどお休みで、なかなかご飯にありつけなかった。

駅近くに喫茶店があるようで、最悪そこも空いていなかったら電車に乗って他の駅まで行けば良かろうと思い、腹は空いていたが町を歩くことにした。

外川の漁港のおそらくもう使われていない建物の写真


外川の見どころの一つである、犬岩を見に行った。
飼い主を慕う犬が、離れてしまった飼い主を想って鳴くうちに岩になってしまったという伝承の残る、犬の形に見える岩である。

外川の犬岩の写真


犬岩の向こうには、洋上風力発電の風車が見えていた。
遠くに見える対岸は、岩が剥き出して、地層の模様が微かに見えた。

外川から見える対岸の写真


船の出入りする海岸線の波の様子は、三浦半島のそれとは違って、大きく緩やかに感じられた。

また町をぶらぶらと歩いて、そのうちに駅近くの喫茶店に着いた。
幸い、お店は空いていたので、食事を取ることにした。


私の母方の実家が食堂だったので、鉄板で焼いた焼きそばは大変懐かしい。
喫茶店にはたくさんの漫画が並んでいて、私が小さい頃に好きだった、漫画がたくさん置いてあるご飯屋さんのようで、とても懐かしい気持ちになった。

外川駅近くの喫茶店でいただいた焼きそば定食の写真


古谷実の「僕といっしょ」という作品が置いてあった。
私は、この漫画に登場する、女性プロ野球選手を目指している、ソバ屋のユキちゃんというキャラクターが好きだった。

「僕といっしょ」に登場するソバ屋のユキちゃんのファンアート


灯台のある岬を歩く。

食事を済ましたあとは、隣の犬吠駅まで歩いてみることにした。
住宅街の中を歩いていくと、次第に波の音が聞こえてきた。
大きなリゾートホテルなども見えてきて、車の往来も多くなってきた。

かつては多くの人が訪れたであろう、水族館跡を見つけた。
海岸線には、遊歩道が整備されていて、人々は海岸線に波が打ちつける様子を見物していた。
波は大きく、力強く、硬い岩に覆いかぶさるように、絶え間なく打ち寄せていた。
東映映画の冒頭に流れる、岩場に波が打ち付ける映像は、この辺りで撮影されたものだそうだ。

犬吠灯台近くの廃墟になった水族館の写真


灯台の周りはすっかり観光地の様子で、まだま新しいお土産屋や飲食店が並んでいた。
私は、日光を反射して輝く波打ち際をしばらく見物して、犬吠駅に向かった。

犬吠灯台近くの波打ち際の遊歩道の写真


犬吠駅自身もお土産屋があったり、銚子電鉄中の観光名所らしく、賑やかな様子だった。
私は歩き疲れていたので、自動販売機で瓶のコーラを買って喉を潤した。

犬吠駅構内のコカコーラの自動販売機でコーラの瓶の栓を抜くところの写真


きゃりーぱみゅぱみゅ再び。

帰りの電車も、きゃりーぱみゅぱみゅ仕様の例の車両だった。
折り返し運転をしているらしい。

時刻は夕方に差し掛かっていた。
電車が林の中を通り抜けていくときは、車内が暗くなり、きゃりーぱみゅぱみゅ仕様のピンク色の照明になり、幻想的な雰囲気であった。

森の中を通過する銚子電鉄の車内の写真


夕暮れに道着と鈴虫の鳴き声。

銚子駅には、東京行きの特急しおさいと、発射時刻の違う成田行きの電車が2両止まっていた。
行きの道中で、駅員さんから成田経由でも電車がつながっていることを聞いていたので、私は成田行きの電車に乗ることにした。


私は、電車が発車してすぐに眠ってしまった。
目を覚ますと、景色はすっかり夕方になっていて、駅で停車した電車内に、鈴虫の鳴き声が聞こえてきていた。

部活動帰りらしい、弓道着姿の学生らが乗り込んできた。
皆でおしゃべりしながら、楽しそうに帰っていた。

電車の窓から見える太陽の写真


成田駅から、千葉行きの総武本線に乗り換える頃には、すっかり暗くなっていた。
この電車では、車内のアナウンスははっきり聞こえる。なんならうるさいぐらいだ。
平日は通勤客でいっぱいになるのだろう。

総務本線の、銚子行きの車内アナウンスは、ほとんど聞き取れないほど小音量だった。
だが、それで特に問題はなかった。
同じ路線でも、目的が違えば私たちが使う感覚器も変わるのだ。

成田駅ホームの電車の発車時間を示す電光掲示板の写真


千葉駅に着くと、東京方面久里浜行きの電車は乗り換え時間が短いため、注意されたい、と言う旨のアナウンスが流れた。
ホームを走って行く人もいた。

私としては、時間に追われているわけではないので、急ぐ必要はないのだが、いつでも旅の帰り道はすっかり疲れていて、早く帰宅したいと思っていたので、その電車に乗ることにした。
今日もよく眠れそうだ。

おわり

Reference

参考資料等です。

銚子電気鉄道


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北海道に滞在中の友人を訪ねました。


Photos

その他の写真です。

蔦の絡みついた道路標識の写真
野生の木々に覆われた岩山の写真
廃屋の前で育った緑の植物の写真
乾いた畑に転がったタイヤの写真
犬吠岬に打ち付ける波の写真
犬吠岬に表出する白亜紀の地層の写真
犬吠駅の入り口付近に放置された古い遊具の写真

Taken by Leica SL2-S, Leica Summicron R50mm f2 and FUJIFILM X70


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2022年10月12日

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