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初めての香港

2月の連休に温泉でも行こうかと、思い当たった温泉地を調べてみたらどこもそこそこのお値段だった。これなら海外に行けるんじゃないかと旅行アプリを見てみたら、香港ツアーがリーズナブルなお値段で検索に引っかかってきた。即決!

大灣區航空・繁体字が香港っぽくてよい

格安ツアーなのでもちろんLCC。大灣區航空という今まで乗ったことのない飛行機。いま沢木耕太郎さんの『深夜特急1』を数年ぶりに読み返してるけど、彼が乗った格安オンボロ飛行機でさえ機内食が出てきて、ドリンクサービスまである!しかしLCCにそんなものはもちろんない。飲食物の機内持ち込み禁止。配られたのはミネラルウォーター1本のみ。かと言って機内食を食べたいとも思わない。昔より今の方が貧しいのか?贅沢の基準、人々の感覚自体が変わったのか?

三多麺食

空港からは成田エクスプレスのような電車に乗って香港の中心地・中環(セントラル)へ。ガイドブックに載っていて美味しそうだった「三多麺食」を探し当てて簡単に夕食。雲呑麺も美味しかったけど意外と薄味。炸醤麺の方が分かりやすい味で好みだった。ちなみに一品添えようと頼んだガチョウの腸の量が多くて食べきれなかった...

中環(セントラル)

ひとまずホテルにチェックインしようと思ったけれど少し離れたところだったのでそのままビクトリア ピークを目指すことに。どうやって行くのか?ちゃんと調べてこなかったのでとにかく山というか、坂を登って行くことに。街なかにエスカレーターがあるのは事前にチェックしていて、それに乗ってみたかったのでまずはエスカレーターを目指す。

「ドン・キホーテが香港にもあるのか!」と驚きながら横を通り過ぎたらエスカレーターが見えたので乗ってみた。街なかのエスカレーターといえば男女7人物語の舞台だった京王堀之内駅から続くエスカレーターくらいしか思いあたらないけれど、香港のそれは比じゃない。とにかく延々と続く。「いったいどこまで続くのか?」最後は意地になって、「何処へ行ってしまうのか?」ビクトリア ピークに行けなくなってしまっても構わないという思いで登り切った。

かなり高いところまで来た感じだけど道中ずっと、しかもすごい密度で高層マンションが立ち並んでいた。日本でいうタワーマンションとは違い、銀座あたりのペンシルビルがそのまま30〜40階までニョキニョキ伸びたようなマンションが所狭しと林立していた。山の斜面なので杉の植樹のようにも見えなくはないけれど、いやいや他に例えようのない香港でしか見られない植生だ。いや都市計画だ。家早南友。

ビクトリア ピークからの夜景

エスカレーターを登りきった所がどこなのか分からなかったけど、バス停があり地図を見るとビクトリア ピークに行くケーブルカーの駅まで歩いて25分と書いてある。歩くのはしんどいからタクシーを拾って運転手に中国語で「我要去花园道站」と言ってみたけど通じない。オレの中国語ではまだ無理かとガッカリしたが、この運転手はどうやら英語を話すらしい。英語なら簡単な会話が難なくできて「ケーブルカーは混んでるからこのまま山頂を目指した方がいい」と言うのでそうしてもらった。料金も65香港ドル(1300円)だったのでケーブルカーより安いくらい。正解だった。

ビクトリア ピークからの夜景は素晴らしかった。急傾斜の山の頂きからの眺めなので、神戸で観る夜景のようにパースが間伸びせずギュッと引き締まった感じでよい。しかし、この感覚は写真ではうまく撮れなかった。

2日目

黄大仙

香港で夜景以外の観光スポットがあまり思い当たらなかったので、いかにも観光地らしい所ということで"黄大仙"に向かった。

香港の宗教事情はよく知らないけれど、街なかに寺院や教会はあまり見られないのでさほど熱心とは感じられない。しかし、ここだけは異様な熱気であった。仏教なのか?道教なのか?よく分からない。占いのようなものがあるけど、何か言われても分からないし、文字も読めないからパス。あとみんな長いお線香を束ねて持っていて御利益にあやかろうとしてるみたいだけど、宗派も、そもそもその作法が何なのかも分からないのでただ参列して御堂の前で手を合わるだけに。不思議な空間だったけど、寺院の建物の色使いは台湾の寺院に通じていると感じられた。香港、台湾あたりの民族的な信仰の要素もあるのかもしれない。

太子〜旺角

次に女人街、男人街に行ってみようと地下鉄の太子(プリンス エドワード)で降りて街を散策。しかし歩道が狭くて歩きづらく、またお昼ごはんを食べたいと思って、「飲茶の店にしようか?麺の店にしようか?」なんて考えて店を覗きながら歩いていたから余計に疲れてしまった。結局どこも決め手に欠けて決まらず。もう歩く気力を失ったので女人街、男人街をあきらめら旺角(モンコック)駅から再び地下鉄に乗車。

蘭芳園

尖沙咀(チムサーチョイ)で降りて重慶大廈(チョンキンマンション)へ。それにしても、太子(プリンス エドワード)、旺角(モンコック)、油麻地(ヤウマティ)、尖沙咀(チムサーチョイ)と香港の地名はまったく読めない。中国語読みでもないし、イギリス統治時代につけた地名に強引に漢字を当てこんだのか?とにかくわからない。

そして重慶か?「蒋介石と何か関係があるのだろうか?」「英米からの物資の供給拠点ということだろうか?」しかし重慶大廈は命名とは裏腹にインドや東南アジアの人々が多く、香港でも異質な雰囲気。ちょっと怪しい感じだったので足早に去って、別のところから入るきれいにリニューアルされた地下のエリアへ。そしてお目当ての蘭芳園(ランフォンユン)に到着。

香港の飲茶や麺ではないB級グルメを味わいたいと思い蘭芳園へ。豬扒包(ポークチョップバーガー)と秘製鴛鴦茶(コーヒーミルクティー)を注文。「香港のハンバーガーってどんな感じだろう?」という興味で注文したけれど、このお店はどうもそういう所ではなく、香港の昔ながらの露店カフェが今も変わらずそのままのスタイルで営業しているというのがウケているお店のようだ。バーガーは素朴な味で、飲み物も「コーヒーとミルクティーのブレンドとは斬新な発想!」と思いきや味は極めてふつう。雰囲気を味わうところだと思うけど、けっこう並んでいたのでそそくさと店を後にした。

尖沙咀〜星光大道

ランチを終えて尖沙咀(チムサーチョイ)エリアをお散歩。香港と言えばペニンシュラホテル。お値段が高くて泊まれないから外から見るだけ。向かいの香港芸術館あたりからのウォーターフロントは観光地らしく整備されていて気持ちいい。海と対岸の香港島に聳え立つ摩天楼を眺め、心地よい風を感じながら星光大道(アベニュー・オブ・スターズ)をのんびりとあゆむ。そしてブルース・リー(李小龍)とご対面。

Don’t think. Feeeeel !

香港大学

訪れた土地の大学のキャンパスを歩くのが好きなので香港大学へ。日本で言えば東京大学みたいなところだからアカデミックな雰囲気が感じられて自分も頭がよくなったような気分。香港ならではというのはロケーション。傾斜地にキャンパスがあるのでアップダウンが激しく立体的な空間が特徴的だった。観光客は図書館や講義室には入れないので詳しくは分からないけれど、シンポジウムや研究発表会のようなイベントが常日頃から数多く開催されているようだった。

上環〜中環

夕食までまだ時間があったので上環(ションワン)〜中環(セントラル)を散策。このあたりは本当に坂が急で登るのも大変だけど、下るほうが怖い。油断して足を踏み外すとどこまでも転がり落ちていってしまいそう。そんな急坂を登って行ってみたのはPMQという元警察宿舎だった建物をアートスペースにリノベーションしたところ。学校の教室くらいの部屋が無数にあって、アパレルやアクセサリーやインテリアなどのデザイナーが自分のブランドの作品を展示して販売している。タミヤ模型も販売していたけれど、ホビーというよりアートという扱い。香港は現代アート、カルチャーを積極的に発信してゆこうというスタンスが強く感じられた。

香港島を眺める夜景
Wooloomooloo Prime のディナー

続いて、今回の旅のハイライト。
九龍エリアに戻り、香港に住む知人オススメのレストランでディナー。ちょっと奮発したけれど、夜景が綺麗で料理も美味しく、いつまでも居たいと思わせるところだった。照明が落としてあって大人な雰囲気でまるでニューヨーク・マンハッタンにいるようなワンランク上の体験であった。そして運よく夜8時から始まる"シンフォニー・オブ・ライツ"を観ることができた。香港島の摩天楼から放たれるレーザービームとビルのイリュミネーションが一斉に点滅する躍動感が半端なくテンションが最高潮に達した。

スターフェリーからの眺め

再びホテルのある香港島へ。そのままホテルに戻るつもりだったけど、船からの夜景も観たくなったので中環(セントラル)からフェリーでまた尖沙咀(チムサーチョイ)へ。穏やかな海をゆっくり進む船に揺られて、日頃のあくせくした時間の流れを忘れることができた。船に乗るのは久しぶりでいい感じだったので地下鉄で帰るのをやめて、復路もフェリーに乗って中環に戻った。

最終日

忠記粥品のお粥

ホテルのある銅鑼湾(コーズウェイベイ)でお粥屋を探してみるとけっこうあった。早朝から開いていてホテルから近くということで忠記粥品へ。お粥と油器(揚げパン)を注文。お粥はあっさりした味で朝ごはんにちょうど良かった。ただ揚げパンはけっこうな大きさで色んな種類を頼んでみたけれど、油っぽいのでほんの少しで十分だった。

スターバックス・リザーブ

最終日はあまり遠出せずにホテルの近くでのんびり過ごす。書店をふらっと覗いて、香港の作家の小説を探してみたけれど、中国語なのか広東語なのかさえ分からなかったので購入を断念。午前中はスタバでガイドブックをパラパラ見ながら旅の余韻にひたる。日本のスタバほど混雑しておらず快適だった。ただ日本の倍くらいの値段だったので、そりゃそうだろうと納得。

Sick Burger

ランチは「やっぱり香港のハンバーガーを食べてみたい」と思ったのと「カリカリのフライドチキンを食べたい」と思ったので銅鑼湾(コーズウェイベイ)エリアのバーガー店を検索してSick Burgerへ。小さなお店だったけど、お客さんも並んでいて人気があるようだった。ビーフとチキンのバーガーを一つずつ頼んでみた。どちらも食べ応えがあって美味しかった。大満足!

香港で行列のできる店

地下鉄駅に向かう途中にすごい行列ができているお店があったから「いったい何のお店だ?」と思って覗いてみたら、キティちゃんのライバル?クロミちゃんのラーメン屋さんだった。ドラゴンボールもそうだけど、「日本のマンガやアニメのキャラは海外でもよく働いてるなー」と感心させられるのであった。

香港国際空港

帰りの飛行機も大灣區航空。空港に早く着いてチェックインしたからか、隣りがいなくてくつろげる座席だった。そして日本へ無事に帰国。やや疲れが残ったけれど、とてもいい体験ができた。沢木耕太郎さんが「深夜特急」で書いた70年代の香港はまさにカオスであり、当時に比べると現在の香港はいろいろと整備されたのかもしれない。けれど、初めて訪れた僕にとって香港は、いまも変わらず大変刺激的な街であった。

ザハ・ハディド「ザ・ピーク」

建築の学生だった頃、建築家のザハ・ハディドが香港の国際コンペで描いたドローイングが好きだった。当時はコピー機の縦横比を変えて建物を細長くデフォルメさせただけでハイテク感が際立ったのだけど、実際に香港の地を訪れてみて、その後世界的に活躍した彼女の建築の原風景には、「香港」が確かにあるのだと感ぜられた。

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