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30年ぶりの韓国

旅行で行こうと思えばいつでも行けるのに行かず、仕事でも10年ほど取引があるにもかかわらず行かず、そして今回ようやっと行くことになったのだけど「いったいいつ以来だ?」、たしか高校の修学旅行以来だから、なんと30年ぶりの韓国だ。

早朝出発のピーチ

今回の韓国出張は2泊3日でけっこうな数のショップを回らなければならかったので、現地の滞在時間を極力稼ごうと関空7:40発の便にした。前日のテレビ会議が深夜2時ごろまであったので寝たら絶対に寝坊すると思い、そのまま寝ないで車を走らせ早朝4:30に空港入り。ターミナルには卒業旅行の学生さんらしき人たちがすでにソファーで眠っていた。僕も空いてるソファーを見つけてチェックインカウンターがオープンするまでしばしの休息。

高陽市 (コヤン)

ショッピングモールOne Mount

仁川国際空港からまず向かったのはソウル市の北西にある高陽(コヤン)市。ソウル中心部からだと地下鉄で1時間ほどかかるみたいだけど通勤圏内。新興住宅地という感じで新しい綺麗な高層アパート(日本でいうマンション)が数多く建てられていた。ソウルモーターショーが開催される国際展示場 Kintex があり、日本でいうと幕張のような街だ。僕らが訪れたのは高陽市最大のショッピングモール One Mount。建物から飛び出した滑り台のある大型プールや高級フィットネスジム、全天候型ゴルフ練習場もあるアミューズメントパークだ。ダイナミックな造りで日本のショッピングモールというより中国の商城のイメージに近い。

韓定食

お昼ご飯は、代理店の方が韓定食をご馳走してくださった。カムサハムニダ(ありがとうございます)。One Mountのなかにある "거궁 일산점" (コグン・イルサンジョム) 直訳すると「巨宮 日傘店」という感じか? 韓定食はもともと朝鮮の宮廷料理なのでドラマで観るお店は日本の料亭のように敷居が高いイメージがあったけど、このお店はシンプルですっきりとしたデザインでカジュアルな感じだった。伝統料理を現代の嗜好に合わせて楽しんでもらおうというコンセプトだろう。

韓定食を一度食べてみたかったので念願が叶ったのだが「机いっぱいに並べられる料理をいったいどうやって持ってくるのか?」という疑問があった。席でしばらく待っていると、なんとテーブルの天板ごと料理が運ばれてきた。そして運んできた天板をレールにカチャっと嵌めてスライドさせたら「あらびっくり!」ぼくらの目の前に机いっぱいの料理が並んでいるという訳だ。

料理は素朴な味だけど、とにかくたくさんあってそれぞれの食材の美味しさが感じられた。なかでも鱈を甘辛く味付けした料理と、日本では見たことのない緑色の海苔が特に美味しかった。

富川市 (プチョン)

次に向かったのが富川市(プチョン)だ。訪問するショップがあったから行ったのだけど、観光ならおそらく行かなかっただろう。場所はソウル市と仁川市の間。日本で例えるならば東京と横浜の間の川崎市という感じだろうか。特に何があるという感じでもなく、ずっと車での移動だったので写真も撮れず。ソウル近郊の住宅地の街並みをボーっと眺めていた。

安養市 (アニャン)

富川市からソウル市を迂回するように南下して次に向かったのが安養市(アニャン)だ。ソウル市の南に位置していてソウル中心部まで地下鉄で1時間くらい。街の特徴はあまり感じられなかったけれど、富川からの道がちょうど国道16号のような感じで道路は広くて、イメージ的には横浜から内陸に入った相模原市という感じだろうか。

仁徳院(インドグォン)の繁華街

安養市(アニャン)の中心部、地下鉄の仁徳院駅(インドグォン)に行き晩御飯。飲食店が多く賑わっており、ここまで来る観光客はほとんどいないので韓国の地元の雰囲気が感じられた。全体的に街灯の照明は暗いのだけど、飲食店の看板がどこも歌舞伎町みたく派手なネオン照明で、飲食店街なのにどことなくあやしい感じがした。ちなみに韓国語では飲食店と言わず、シクタン(食堂)という単語がもっぱら使われていた。日本語で食堂というと学食のようなイメージだが、韓国語の食堂はレストラン全般というニュアンスのようだ。

焼肉

韓国と言えば "焼肉"ということで地元の人オススメの 根本火爐 (근본화로・クンボナロ)という焼肉屋に連れて行ってもらった。新大久保あたりの韓国式焼肉はほとんど豚肉(サムギョプサル)なのでここもそうかなと思ったら牛も豚も両方あり、両方注文してもらった。

牛肉を網で焼いて食べるのは日本と同じ。違いはサンチュに巻いて辛味噌をつけて、さらにお好みでキムチも入れて食べるところ。またサンチュだけではなく、桜もちを巻いてるような塩漬けの葉っぱもあって、お肉とお野菜をバランスよく食べるのが韓国式のようだ。

次に豚肉(サムギョプサル)。網ではなくてジンギスカンを焼くのと同じような真ん中が高くなった鉄板にチェンジ。油が落ちていくので食べるお肉は脂っこくなくて美味しい。初め出てきた時は大きなお肉だったのに焼いてるうちに油と水分が取り除かれ、最後食べやすいサイズにハサミで切ると「えっ?こんなに小さかったっけ?」と少し残念な気持ちになった。食い意地をはらず味わって食べるべし。

emart

ご飯を食べた後、お土産を買いたいと思い、大型スーパーの emart に連れて行ってもらった。韓国と日本は似てると思って共通点を探していたのだけど、このスーパーはイオンやアリオというよりもウォルマートやコストコに似た感じだった。改めて思うとここ安養(アニャン)もアメリカ東海岸の郊外や中国の街並みに似ている感じがした。

スーパーで食品を見ていると面白くて、日本のヤクルトのようなものが並んでいた。形がおかしいので「これ、なんで逆さまなの?」と韓国の人に聞いたら「飲みやすいから」とサラッと返された。確かに。その他、辛ラーメンのブラックよりさらに辛いものや、日本にない飲み物などを見て楽しんだ。お土産には韓国のお菓子と参鶏湯のパックを買った。

チキン

もう一度仁徳院の繁華街に戻って待望のチキン!「さっき焼肉を食べたばかりなのにまだ食べられるかな?」という気持ちも正直あったけど、お店のなかに入って、まわりの人たちがチキンをパクパク食べながらお酒をぐいぐい飲む姿を見ていたら俄然食欲が湧いてきた。

この店は "유성통닭"(ユソントンタク)、直訳したら「流星・鳥の丸焼き」と言ったところか。韓国のミシュランにあたる「모범 음식점」(模範飲食店)に選定されている有名店だ。

店の名前のとおり鳥の丸焼き(丸揚げ)もメニューにあったけど、ヤンニョムチキン(味付チキン)とバンバンチキン(パリパリチキン?)を注文した。韓国のチキンはパリパリと聞いていたが本当にパリパリで美味しい。またヤンニョムチキンも程よい甘辛さでこちらも好きだった。

日本でフライドチキンというとファーストフードという感じだけど、韓国のそれはお酒を楽しむためのもの。「確かに、確かに、こりゃ、ビールがうまい!」日本でもこのスタイルは流行りそう。

松坡区(ソンパ)

ロッテワールドタワー

2日目はいよいよソウル市内へ。.ソウルを東西に流れる漢江の南にある瑞草区(ソチョ)、江南区(カンナム)、松坡区(ソンパ)の3区がいわゆるセレブの街と言われているエリア。僕たちがまず向かったのが3区のなかで一番東に位置する松坡区(ソンパ)だ。松坡区にはロッテワールドやオリンピック公園があり、住環境が良さそうな街だった。

江南区(カンナム)

HAN's CLUB HOUSE

いざカンナム。言わずと知れた高級住宅街。仕事で訪れたゴルフショップもセレブ御用達。最新のパターシステムを導入し、また歓談できるサロンもある。ソウルの冬は寒くてゴルフ場でなかなかラウンドできない。そのためゴルフショップがまるでゴルフ場のクラブハウスのように豪華で、ゴルファーにラグジュアリーなひと時を味わってもらえるようにもてなすスタイルが定着しつつあるようだ。

江南区(カンナム)で驚いたのは学院(塾)の多さだ。数学!国語!といった看板が至る所で見られた。おそらく江南区は日本で言えば、駒場や湘南、阪神地区といった文教地区なのだろう。いい学校や塾があるから教育熱心な親が家を買い、お金持ちがいるから塾もサービスを向上させる。そうやってセレブの街が形成されていったのではないかと思った。

ソルロンタン(牛骨スープ)

お昼ご飯はソルロンタンを食べに"이남장“(イナムジャン)という人気店へ。(特)を頼んでもらったので牛肉がたくさん入っていて大満足!また自家製キムチとネギが食べ放題だった。キムチはケースから取り出してハサミで切ってもらって食べた。韓国のキムチという感じで美味しかった。ソルロンタンのスープの味はあっさりしていた。どうも勘違いしていたけど、韓国料理は全般的に薄味だし辛くもない。スープの旨みをじっくりと味わいながら、アクセントにお好みでキムチなどを加えて食べるというようだった。

南山(ナムサン)

南山 山麓からの眺め

漢江を渡り、ドラマで有名になった梨泰院(イテウォン)あたりを通りすぎ南山(ナムサン)へ。江南(カンナム)など漢江の南のエリアの方がセレブなイメージが強いけど、南山から漢江を見渡すエリアは山の手という感じで、有名な新羅ホテルもあり、高級住宅地という雰囲気だった。

明洞(ミョンドン)

明洞

今回の出張は強行スケジュールだったので観光の時間はほとんど取れなかったのだけど、ソウル市内を回るこの日の夜は明洞から東大門あたりをしばらく散策した。明洞はおそらく日本人が韓国で一番よく行くところだろう。日本で言えば渋谷といったところか。近年の渋谷はカルチャーの発信地という色が褪せてすっかり観光地化してしまったけれど、明洞はもっと割り切った観光地であった。明らかに東南アジアの観光客しかいないし、化粧品や小物やブティック、そして20000ウォン(2000円)のエビの串焼きが売ってる屋台など、観光客目当てのお店ばかり。でも楽しい雰囲気が感じられて、これはこれでいいと思えた。

広蔵市場(グァンジャン)

広蔵市場

明洞、仁寺洞あたりから東大門の方へしばらく行ったところにある広蔵市場(グァンジャン)へ。ここはガイドブックに載っていて日本人観光客もたくさん訪れていた。地元の人と思ってよくよく聞いてみると日本語で会話してるという2,3人連れのおばちゃんや若い女性によく遭遇した。

市場の人も観光客慣れしているし、お店も観光客が喜ぶような品揃えになっていると思われるが、韓国の地元の人々の生活感も伝わってきて、いい雰囲気だった。日本ではあまり食べられないユッケやタラの海鮮鍋、お好み焼きのように分厚いチヂミ、そして屋台ではトッポッキ、チャプチェ、キンパ、そして腸詰め(韓国風ソーセージ)をつまみながらお酒が飲めるようだった。ドラマでよく見るテント式の포장마차(ポジャンマチャ)とは違ったけれどいい感じだった。

꽈배기(クァベギ)

広蔵市場の名物で行列ができており、地元の人も「今日はまだ行列が短いほうだから食べてみたら」というので行列に並んでみた。行列の前後はやはり日本人の女の子だった。「彼女たちのリサーチ力はすごい!」。行列に並びながら「꽈배기(クァベギ)ってなんだろう?」と思っていた。おそらくカップケーキのことだろうけど、日本でいうカップケーキではなく、どうやらドーナツのようだった。お値段は1,000ウォン(100円)。実際食べてみると味はドーナツだけど、もっと柔らかくてもちもちした感じだった。美味しかった。

東大門タッカンマリ通り

タッカンマリ

韓国の名物料理ということで2日目の夜は、닭한마리(タッカンマリ)を食べに東大門タッカンマリ通りに連れて行ってもらった。ここもガイドブックに載っているので日本人の女性をよく見かけたが、地元の人にも人気があるようで、しかも訪れた日は寒かったので、タッカンマリ(鳥の水炊き)を食べて温まろうという人が多かったようだ。一番有名なお店は30〜40分待ちだったので違う店にした。

ただ入った"진원조닭한마리" (陳元祖タッカンマリ)というお店もお客さんでいっぱいだったし、日本のテレビの取材もよく来ているようだった。タッカンマリのお味はというと、やはりあっさりした味で、じわーっと口の中に広がる鳥のスープをしみじみと味わうという感じ。日本のお正月に食べる鳥でダシをとるタイプのお雑煮のような味わいだった。

雪景色

次の朝、起きたら雪が積もっていた。ソウルはやはり寒い。大雪というのはそうないようだけど、これくらいの雪はしばしば降るようだ。午前中1時間ほどミーティングしてから車で移動。

へジャンクク

現地の方がしきりに時間を気にしているのでどうしたのだろうと思っていたら、お昼に “제주 은희네 해장국”(チェジュ ウンヒネ へジャンクク)というお店に僕らを連れて行きたかったようだ。この店は人気店で車でしか行けないところにあるのに昼時になるとどこからとなくビジネスパーソンがやってくる。12時を過ぎると行列ができるので早めに行かねばならなかったのだ。

お店の名前を訳すと「済州 ウンヒのへジャンクク」という感じか。済州島の名物料理で有名なようで、へジャンククという牛モツ?のスープや黒豚を楽しめる店だ。済州島といえば海鮮が有名だと思うのだけど、済州島を舞台にしたドラマ「私たちのブルース」でも市場でモツ煮込屋をやっている人が出てきたし、済州島は火山島なので、鹿児島のように黒豚の飼育が盛んなのも理解できた。

へジャンククというのはお酒を飲んだ翌朝に酔い覚ましに食べるというのが昔ながらの風習らしい。精力がつき、体に良い料理という受け止め方なのだろう。味はあっさりしていて美味しい。新鮮な青唐辛子も付いていたので入れて食べたけど辛すぎず、美味しく食べられた。黒豚ももちろん美味しかった。もっとゆっくり味わって食べたかったけど、待っている人の視線が怖かったので早めに食べて店を後にした。

広津区(グァンヂン)

TPZ GOLF STUDIO / DUFF & TOPPING

最後に訪れたのは漢江の北エリア広津区(グァンヂン)だ。近年カンナムなど漢江の南エリアがセレブ化しているイメージが強いけど、南山や広津区あたりの北エリアも生活レベルが高そうな雰囲気だった。訪れたゴルフショップもラグジュアリーな雰囲気で、その高級感は日本のショップでは類を見ない程であった。

まとめ

今回は仕事での韓国訪問であった。スケジュールも2泊3日でソウル近郊を北へ南へ東へ西へと駆け回ったので、ゆっくりする時間はあまりなかったけれど、韓国の名物料理をたくさん味わえたし、ソウルやソウル郊外の街並みもいろいろと見ることができた。

聞く所にして誤がなくば、朝鮮は三分の二位は花崗岩質だという。そのせいであろう、山の土は多くは赤いか白いかであり、河の砂も常に白く、そうしてそこを流れる水も大体に於いて清らかである。空が鏡のように晴れて大地が大体に白い故、朝鮮の景色には総べて汚さ、むさくるしさ、暗さ、物凄さ、気味わるさがない。それは清く、明るく、開けっぱなしである。しかもその清く明るい中に、何となく滋味のないような、たよりのないような寂しさがある。

(安倍能成「朝鮮所見二三」より)

かつて京城(ソウル)大学に赴任していた安倍能成が綴ったように、韓国は花崗岩の色彩イメージを強く感じた。日本の風景と似ているのだけど、どことなく白っぽく、花で彩るというのではなく、樹木や石を整えることで街並みを作っているように感じられた。とはいえ3日滞在しただけなので30年前との比較もできない。また行ってみたい。

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