読書記:「全融排除」(橋本卓典著、幻冬合) (2019.3.1日経産業新聞寄稿)

金融機関のビネスモデルはテクノロジーの進展で大きな変革に迫られている。そういった時代においても人間を相手にする金融領域であれば、生き残りの道が開ける。本書はその処方箋を示している。
「金融排除」とは企業の事業性を判断する「目利き力」が失われ、担保と保証がない融資は行わないことだが、これが金融機関自体の願客基盤を先細りさせてしまう日本ならではの問題だという。さらに企業の事業発展に資する融資判断やスピード感不足で安全な融資先にも融資できない問題も示される。
金融排除が深刻化した背景には、不良債権問題で痛手を負った反動、本来の経営理念とは外れてリスクテイクできな、経営体制、大盤振る舞いの政府保証により事業性を見極める目利きカの退化がある。解決手段として、共感型の金融、人と人とのつながり度を示す社会資本の見える化、会員碩客との対話・自治・平等性といった経営モデルを有する協同組織金融のあるべき論が示されている。
本書で紹介される事例から企業の存続を支授するという金融マンのポリシーが感じられ「雨の日に傘を差し出せる銀行」という言葉が印的であった。

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