音大作曲科的、椎名林檎「マ・シェリ」についての考察①

椎名林檎のアルバム「三毒史」に収録されている「マ・シェリ」についての、かる~い楽曲分析的な記事です。ほんとに軽い。でも専門家向けなのでご了承ください。(特にクラシック寄り)

1番と2番のAメロの構造の違い

1番のAメロは「泣き虫で~評価したから。」まで。
対して2番のAメロは「求めては~過ぎていくから。」まで。
ざっくりと違いを説明すると、2番のAメロの長さは1番のAメロの半分なんです。

Aメロは基本、以下のような旋律でできています。

仮にこの旋律をaとします

歌詞で言うと「泣き虫で~見ている。」まで。
そして1番の場合はこれだけでは終わらず、ほぼ同じ旋律をあと1回繰り返します。

先ほどをaとするならこれはa'ですかね

こちらは「穏やかで~評価したから。」まで。
これで、ほぼ同じ旋律を2回繰り返したことになりました。

では、2番の方を見てみましょう。

これは…a''…?(似てる)

こちらは「求めては~過ぎていくから。」まで。
2番の場合はこの旋律は繰り返されずすぐBメロに行ってしまうんです。

ここで疑問が出てくるとしたら、「なんで2番は繰り返しがないんだろう?」というところ。

これは曲を全部通して聞いてもらうと気づくと思うのですが、繰り返さない可能性として一番あり得るのが

「もう1番で十分やったから」

ということじゃないかと考えています。

1番で既に2回繰り返されている旋律を2番でまた同じように繰り返しても、もうおなかいっぱいだよ!ということかもしれません。例えば人との会話でも、何回も何回も同じ話を繰り返されると疲れますよね…

繰り返しをしないという方法について、ポピュラーとは少し違うかもしれませんがクラシックの場合は、交響曲やピアノソナタなど、「ソナタ形式」と言われる形式の楽曲において、最初に出てきた第1主題が、展開部でさんざんアレンジ(展開)されたあとは、再現部ではわざわざ再現させず第2主題から再現する、ということがあります。
例:ショパン作曲ピアノソナタ第3番第1楽章、ベートーヴェン作曲ピアノソナタ第17番「テンペスト」第1楽章(←テンペストは形式自体が少し特殊な部分があるので、解釈は分かれるかもしれません。)

クラシック音楽的な考え方も、ポピュラー音楽の構成を分析するにあたって結構役立ったりします。そう考えると、クラシック音楽の作曲の勉強も実は幅広く使えたりして結構面白いな、と私は思うんですよね。ちなみに、椎名林檎さんは幼少期にピアノを習っていたことがあるらしいですよ。

「マ・シェリ」に関してはもう一つ書きたいことがあるのでたぶん次の記事にも続くと思います。
それでは。




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