詩 「死にたい国」
ようこそ
死にたい国へ
ここは究極の安全地帯
人間にはひとつくらい
そういう場所が必要です
だからわたしはここに
死にたい国をつくることにした
死にたい人が
死にたいまま
生きられるように
この国の門は開かれている
幸福の国では
わたしに居場所はなく
わたしの死にたいこころは
修正されるべきものとして扱われ
楽に息をすることすらできなかった
死にたい国では
いまここにある
わたしがすでに持っているこころを
愛することからはじめたいのです
人のこころにルールはない
こう感じる人間でなければならない
このような人間になるべきだ
生まれたからには生きるべきだ
などというものはいちど忘れて
いまのわたしを愛したいのです
いまのわたしを好きでいたいのです
きみが
死にたいなら
それもいい
わたしも
死にたいなら
それもいい
ただ
わたしは
きみが死んだら悲しい
わたしの悲しみが
きみにとって
なんの価値もなかったとしても
きみが
ほんとうに死んでしまったら
わたしは悲しいのです
わたしはこの悲しみを
どうすることもできません
わたしが
ほんとうに死んでしまったら
わたしは悲しくない
悲しいと感じる
わたしはたぶんいない
死んだことがないから
わからないけれど
とにかく
死にたい国でわたしは
きみに生きていてほしいと願い
今日を生きてみようと思うのです
だから
これからは
きみの声で
死にたい
死にたいを
いつまでも
いつまでも
きいていたいのです
きみの声で
またあしたを
なんども
なんどでも
きかせてほしいのです
もしいつか
きみの死にたいこころが消え
きみが幸福の国を目指すなら
喜んでその背中を見送ろう
もし仮に
この先ずっと
きみの死にたいこころが消えず
きみが死にたいままだとしても
死にたい国は
きみを見捨てない
この大地は
この空気は
きみのためにあるのだから
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