詩 「海の見える家」



ここは
海の見える家


これは
来世の物語


ちいさな庭に咲く
花に水をやり
枯れないように
まいにち世話をする
きみの後ろ姿を眺めるのが
ぼくの生きる意味で
ここにいる理由


日曜日の朝
自転車に乗って
海まで行こう
それから
砂浜で
ふたり並んで
遅めの朝食をとろう


ぼくは
この人生では
何も欲しくない
きみがさっきくれた
四つ葉のクローバーが
ぼくのいちばん大切なもの


そんなふうに
日々は過ぎ
歳をとる


そして
ある日
思い出す
海の見える家は
ここだったと


海の見える
ベランダは
遠くに暮らす
ぼくの記憶へ
つながっている


死が
あの海を泳ぎ
ぼくをここまで
連れてきた


ぼくは
きみと
ここで暮らすのが
生まれる前から夢だった


海の見える家で
日曜日の朝を生きる
ぼくは誰より幸せだった


これは
来世の物語


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