オンラインで賑わうコミュニティ、過疎るコミュニティ
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20年ほど10人~200人のオンラインコミュニティの誕生、成長、衰退、消滅に関わってきました。失敗して荒廃したことも、思いがけない賑わいにいたったこともあります。
この記事では
「オンラインで賑わうコミュニティ」と
「オンラインで過疎るコミュニティ」の形を簡単に紹介します。
また活性化の一例を紹介します。
リモートワークでもオンラインコミュニティのあり方は重要です。
ぜひ、参考にしてみてください。
本題に入る前に賑わいと過疎の意味を明らかにしておきましょう。ここでは次のような状態を指すことにします。
賑わい
人と人がよくやりとりをしており、ひとけが感じられる状態を指します。
過疎
人と人がやりとりをしておらず、ひとけを感じられない状態を指します。例えば最後の投稿から一週間たっていて、誰も投稿していない状態です。
これから5つのコミュニティの形を見ていきます。
・有名人発コミュニティ
・イベント型コミュニティ
・テーマ型コミュニティ
・日常型コミュニティ
・展示会型コミュニティ
有名人が勢いで作った有名人発コミュニティは過疎りやすい
有名人が勢いで「新しいコミュニティを立ち上げるぞ」と打ち立てたコミュニティはよくあります。
参加するのは、起点となった有名人を尊敬している人や、憧れたりしているフォロワーです。つまり有名人に興味があって参加しているので、参加者同士はお互いに興味が薄いのが特徴です。
このコミュニティ内の人間関係の矢印は特定有名人と、多数の参加者という構造になります。1:nの関係です。
つまり実態はコミュニティというよりも、ファンクラブになります。有名人は参加者にファンサービスし続けているうちは盛り上がりますが、有名人が活動しなくなると勢いがなくなります。多くが二週間も経たずに過疎ります。
シグナルは、有名人への一方的な関心、参加者同士の希薄な関心です。
経過時間から見る賑わい
一部を除いてほとんどのファンクラブは熱気を焼失して自然消滅します。
イベント型コミュニティはイベントの時だけ賑わう
イベント型コミュニティとは、特定の日時に何かをするコミュニティです。例えば勉強会コミュニティがあります。
イベント開催時は盛り上がりますが、イベント開催時以外は過疎ります。
カンファレンス、勉強会、お祭が該当し、非常に強くエネルギーを感じる機会です。
経過時間から見る賑わい
イベントのときのみ賑わいます。
テーマ型コミュニティは徐々に過疎る
何かのテーマについて話したりするテーマ型コミュニティは、徐々に過疎っていきます。話したいトピック(話題)が減ったり、解決できる問題が減って難しい問題が残るようになるからです。
経過時間から見る賑わい
参加者間に情報ギャップが少なくなるにつれて賑わいは薄くなります。
シグナルは「話したい話題がなくなった」「興味を持てなくなった」「話題について行けなくなった」です。
※うすいピンクはイベント型の賑わいです。
日常型コミュニティは大きく盛り上がりもせず、過疎もしない
有名人がきっかけになることもなく、特定の強いテーマで集まることもなく、参加者が参加者と話をしたり聞きたいと漠然とした動機で集まるのが日常型コミュニティです。
参加者同士に関心をもち、挨拶などのやりとりの量、新しい情報の量、トピックの幅が広いことが特徴です。
このコミュニティ内の人間関係の矢印は参加者同士が向き合っており、n:nの関係です。n:nのやりとりが活性化さていることが観察ポイントです。
日常型コミュニティでは、人に話す以上に、人から聞くことが重要です。聞いている人がいないとき、人は話し続けることがなかなかできないからです。話すことよりも、聞いて返事をするという応答が重要です。
つまり、応答が鍵です。
話すことはコメントの発信などで可視化されていて分かりやすいですね。聞くことはそれだけでは可視化されません。聞くことの可視化とは、返事です。相手の話をしっかり聞いた上での返事が応答です。
話された言葉に応えること。相手が応えられた言葉を、聞いてまた返す。このリズムができると、賑わいになり、ひとけが生まれます。聞く人が非常に重要です。
「今度は私が話す番だ」というよりも、「もっとあなたの話を聞きたい」という態度を取れるかが、コミュニティの活性化の鍵です。これは非常に難しい態度です。
別の側面から見ると、日常型コミュニティは参加者にとって時間がかかります。そのため多くの人は日常型コミュニティは1つしか所属できないという特徴があります。
日常型からより結束度が高まると、チームという組織化がされます。
言いたいことを話す展示会型コミュニティはマッチング目的
自分の言いたいことだけを話す人が集まる展示会型のコミュニティは存続性は薄いです。一見、賑わっているように見えますが、人と人との関係は乏しく、実のところ過疎なのです。
言いたいことを言うだけ、聞きたいことを聞いて言いたいように返すだけ、というのは、コミュニケーションが成立していません。拡声器で言いあっているだけのような状況です。しかし、定時会だけでなく、多くの場で取られている方法です。
もし人間関係であれば、自分の話を聞いて欲しいという切実な願いの訴えである一方、他の人が受け入れられるように表現できないという哀しい関係でしょう。
しかし展示会や商談会としては適切です。利害が一致することによって協力関係が生まれるきっかけになるからです。目的はマッチングです。賑わいは最優先の目的ではありません。
過疎が悪いわけではない。休眠の設計をする
過疎と賑わいをみてきました。
過疎は悪いわけではなく状態の1つです。
例えばイベント型コミュニティでは、イベントの日に向けて資料を作ったりなどして、エネルギーを蓄えることが人々の役に立ちます。
意図的に過疎を作り、エネルギーを蓄えるための休眠をとるのも手です。つまりイベントの日以外はやりとりを最小限に留めてみましょう。
日常型コミュニティの活性化
もし日常型コミュニティを考えている場合は、以下のチェックをしましょう。
新しく人が入ってきました。
Q.うれしいですか? うれしいのであれば、その理由はなんでしょうか?
Q.入ってきた人と何時間も話していますか?
自分がいるコミュニティに人が興味を持ってくれて、入ってきてくれたことは嬉しいでしょう。ところが、うれしいだけで、入って来た人と会話をしていないならどこかずれています。
活性化のための行動
・自分が話したい人や、話を聞きたい人に絞ってを招待する
・話をする以上に、人の話を聞いて、返す
・人を助ける
・実験しようとする人の後に続く
・頻繁に挨拶をする
・合いの手を入れる
まとめ
5つのコミュニティの形を見てきました。
・有名人が勢いで作った有名人発コミュニティは過疎りやすい
・イベント型コミュニティはイベントの時だけ賑わう
・テーマ型コミュニティは徐々に過疎る
・日常型コミュニティは大きく盛り上がりもせず、過疎もしない
・言いたいことを話す展示会型コミュニティはマッチング目的
人と人との結びつきの強さと、関心の向きによって、コミュニティの形は次のように類型できます。
それぞれ異なる目的、動機による人と人とのやりとりの形です。
何のためのコミュニティなのかをハッキリとさせることで、より的確な関わり方ができるようになるのではと思います。
もっと学ぶ
聞くことや、応答の重要性は『オープンダイアローグ』が参考になります。
コミュニティの構造を読み解くには社会ネットワーク理論が参考になります。
イベント型、展示会型
「弱いつながり」の誤解と本質──社会ネットワーク研究の世界(前編)
https://bnl.media/2018/06/socialnetworks-vol1.html
日常型 多様性帯域幅トレードオフ理論
「弱いつながり」よりも「広い帯域幅」が新情報をもたらす──社会ネットワーク研究の世界(後編)
https://bnl.media/2018/06/socialnetworks-vol3.htm
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