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小市民シリーズ4『冬期限定ボンボンショコラ事件』(2024)紹介と感想

米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』東京創元社, 2024


あらすじ

放課後、堤防道路を小佐内さんと歩いていた小鳩君が車に轢き逃げされ入院した。
小鳩君は、お見舞いに来た堂島君から中学時代の同級生・日坂君が自殺したらしいと聞いて動揺する。
日坂君は、小鳩君が小佐内さんと出会い、小市民を志すきっかけになった出来事に関わっていたのだった。
右足を骨折しベッドから動けない小鳩君は、中学3年時に起こった日坂君がひき逃げ被害に合った事件の苦い記憶をノートに書きだし始める。
その頃、小佐内さんは小鳩君轢き逃げについて調べているようで……。


紹介と感想(展開について少しネタバレあり)

小市民四部作の完結編にして、高校最後の事件が描かれます。
今までも、日常の謎に見せかけて犯罪に繋がることが多かったシリーズですが、今回は最初から轢き逃げという犯罪事件を追う物語となっています。

メインとなる小鳩君の回想では、名探偵になり切れない子供の痛々しさが良く描かれており、現在の事件に気づかせない目くらましにもなっていました。

中学時代の小鳩君は、それなりの頭のキレはありながら、〈自分が解ける問題にだけ挑む〉〈自分が理解できる範囲でのみ物事を見ようとする〉という視野の狭いところが目立っていました。
当然、事件は解けず、小鳩君自身も大きな痛手を負うことになってしまいました。

そして、現在の事件により、嫌でも中学時代の影と向き合うことになった小鳩君は、陰で暗躍していた小佐内さんと協力して一歩前に進むことができました。

合間で挟まれる小鳩君の入院パートは、詳細な入院中の小鳩君と病院関係者とのやりとりに小鳩君らしさが出てくる様子を楽しみながら、重要な伏線が幾多も張られていました。

病院にもよりますが、自分も入院していた時は病院食を美味しく食べていた方なので、小鳩君の気持ちが分かりながら読んでいました。

連作として綺麗な締めでありながら、ファンの欲目か続編も期待できそうな終わり方に感じてしまい期待してしまっている自分がいます。

 どうしてわたしたち会えないのかな?

 離れて恋をしているような文面だ。
 だけどもちろん、ぼくたちは恋と関係がない。薄暗がりの病室で、ぼくは小佐内さんの問いを、繰り返し自分に向ける。

米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』東京創元社, 2024, p.196
小佐内さんからのメッセージカードを読んで考えている小鳩君

シリーズ一覧

01.春期限定いちごタルト事件(2004)
02.夏期限定トロピカルパフェ事件(2006)
03.秋期限定栗きんとん事件 (上)(下)(2009)
番.巴里マカロンの謎(2020)
04.冬期限定ボンボンショコラ事件(2024)

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