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『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』(2024)映画&ノベライズ感想

著・脚本:内海照子 監督・脚本原案:今井一暁『小説 映画ドラえもん のび太の地球交響楽』小学館, 2024

観た&読んだ時の感情を優先させたので、読みづらさがあると思いますが、熱は込めました。
結論としては、かなり面白いので、ドラえもんが好きな人、音楽が好きな人は見たほうが良いです。


あらすじ(公式サイト「ストーリー」より)

学校の音楽会に向けて、苦手なリコーダーの練習をしているのび太。

その前にあらわれた不思議な少女・ミッカは、のび太の吹くのんびりのんきな「の」の音を気に入り、音楽がエネルギーになる惑星でつくられた“音楽【ファーレ】の殿堂”にドラえもんたちを招き入れる。

ミッカはこの殿堂を救うため、一緒に演奏をする音楽の達人【ヴィルトゥオーゾ】を探していたのだった!

ひみつ道具「音楽家ライセンス」を使って楽器を選び、ミッカと共に演奏することで、少しずつ殿堂を復活させていくドラえもんたち。

しかし、世界から音楽を消してしまう不気味な生命体が迫ってきて、地球にも危機が・・・!!

はたして、“音楽の未来”、そして地球を救うことができるのか!?


感想

音楽がテーマとなっているだけあって、BGMや効果音へのこだわりがすごく、音の鳴っている時も、音の鳴っていない時も、全編とおして最高でした。

重要な場面でもセリフで長々と語らず、音楽の力を全面に出している場面が多く、音を通して様々な感情が伝わってきます。
そして、音は日常に溢れており、それらが常に音楽を奏でていることを改めて気づかせてくれました。

初めは各々自身の音を出せるようになることから始まり、上手くなってくると人と演奏していても自分が目立ちたくなってくる。
しかし、それでは心地よい音楽にならない事を知り、周りの音を聞きながら演奏できるようになる。
それが、そのまま登場人物たちの成長物語となり、音楽の楽しさを伝える描写にもなっており良かったです。

特に、のび太が徐々にリコーダーを吹けるようになり、音楽の楽しさが分かりながらも、音楽家ライセンスのレベルが一人だけ「ヴィルトゥオーゾ」にならないことで、終盤「の」の音を出すことに繋がるのだと思うと、成長を描きつつ個性も残す塩梅が音楽と上手く絡み合っており感動しました。

物語全体としても、「音を楽しむ」ことに集中できるように、枝葉を広げすぎない展開となっているため、素直に楽しむことができました。

大筋はシンプルでありながら、解決までの伏線を丁寧に貼っており、最終的な納得感もあります。

場面として特に好きなのは、タキレンのために音楽を奏でるシーンで、のび太のリコーダーの音がズレたことを契機に、励ます演奏から寄り添う演奏に変って行くところになります。

もちろん、映像面も今井監督の良さが詰まっており、視覚的に音楽を楽しむことができる素晴らしいものでした。
特に、初めてファーレの殿堂に着いて、楽しく音を鳴らす中で一つの音楽が形作られていく場面は、映像的にも楽しさが伝わってきました。

ゲスト声優陣も皆さん素晴らしかったです。
ミッカ役の平野莉亜菜さんは、初めてのアフレコだと思いますがミッカはこの声しかないと感じさせてくれましたし、かが屋のお二人も世界に自然に溶け込んでいました。
今井監督作品ではお馴染み、悠木碧さんが出演しているのもファンとして嬉しかったです。

秘密道具の中では、「あらかじめ日記」の恐ろしさが改めて印象に残りました。
のび太に説教していたドラえもんも、個人的な欲望のために日記を使っていたので、反省が必要だと思います。

あと、終盤で「コエカタマリン」を使って、いきなり物理攻撃をし始めるドラえもんも好きでした。

音を楽しむ体験が、映像と音の高レベルのセッションで味わえる、老若男女が楽しめる映画でした。
映画ドラえもんのアニメオリジナル脚本の中でも、万遍なくオススメできます。

映画観で見ることで100%楽しめるようなこだわりが詰まっているので、公開中にまた観に行きたいと思います。


※特報映像について
最初は夢幻三剣士かなとも思いましたが、ちょっと違いそうな雰囲気も感じるので、夢幻三剣士リメイク:オリジナルのどちらなのかの自分の中での割合は、今のところ4:6位の気持ちでいます。
リメイクにしてもオリジナルにしても、あの監督が十数年ぶりに映画ドラえもんに戻ってくるのかなと思うので楽しみです。


※ノベライズについて
脚本を担当した内海照子さん自らが執筆したノベライズ版は、映画の流れに忠実に展開しながら、活字ならではの要素として各シーンの登場人物の心理描写が足されていました。

映画と違い、直接音楽が聞こえる訳ではありませんが、文章の力により、どんな気持ちで音楽を奏でてるのか、それがどう音楽へ反映されているのかが分かりやすく伝わってきます。

のび太の出す音が、みんなの音と混ざり合って溶けていくような感覚。
心臓の鼓動が速くなる。体が一つの楽器になって、共鳴しているみたいだ。
最高に気持ちよくて、スリリングで、楽しい!

著・脚本:内海照子 監督・脚本原案:今井一暁『小説 映画ドラえもん のび太の地球交響楽』小学館, 2024, p.226

映画概要

公開:2024年
本編:115分

原作/藤子・F・不二雄

監督・脚本原案・絵コンテ/今井一暁

  脚本/内海照子
脚本協力/佐藤 大

音楽/服部隆之

キャスト
ドラえもん/水田わさび
  のび太/大原めぐみ
  しずか/かかずゆみ
ジャイアン/木村 昴
  スネ夫/関 智一

のび太のママ/三石琴乃
のび太のパパ/松本保典

    先生/高木 渉
   出木杉/萩野志保子
    安雄/慶長佑香
   はる夫/矢口アサミ
クラスメイト/野中 藍
クラスメイト/飯田友子
クラスメイト/畑中万里江

ミッカ/平野莉亜菜

チャペック/菊池こころ

モーツェル/田村睦心

タキレン/チョー
パロパロ/悠木 碧

ネコ/天月

ニュースキャスター/拝 真之介
   アナウンサー/梯 篤司

路上ミュージシャン・ボーカル/Vaundy

 路上ミュージシャン・ベースなど/加賀 翔(かが屋)
路上ミュージシャン・ドラマーなど/賀屋壮也(かが屋)

ミーナ/芳根京子

ワークナー/石丸幹二

マエストロヴェントー/吉川晃司

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