ブリュノ・クレメール主演 メグレ警視21「男の首 Maigret et la tête d'un homme」(1996)紹介と感想
原作:ジョルジュ・シムノン『男の首』(1931)
脚本:クリスチャン・リュリエ
監督:ジェラ・ヘルツ
時間:96分
あらすじ
死刑囚ウルタンは、監獄からの脱獄をした。その後をつけるジャンヴィエたち。全てはメグレの計画だった。
ウルタンは小さなバー・クポールを覗き、方々を彷徨ったのち安ホテルで眠りについた。
ウルタンの尾行を続けているメグレは、背後に別の人物が動いているのを感じ始める。
新聞に情報を流した手紙がクポールで書かれたと思われたため、メグレはクポールへと向かった。
二人の女性を殺した犯人は誰なのか? メグレと真犯人の戦いが始まる。
視聴記録
大筋は原作に沿って展開されますが、クロスビー夫人やエドナ周りの描写が少しだけ増えており、二人の関係もやや冷たくなっています。
また、ある変更により、ラデックが原作以上の悪党となっていました。
物語に影響はありませんが、ウルタンの職業が変わっており、実家周りも変更になっています。
ラデックは小生意気な若造という感じが自然と出ており良かったです。経験ではなく、天才的な知能が社会と上手くかみ合わなかった時、人間はこうなってしまうのだと感じさせてくれます。経験豊富なメグレとの対比が光りました。
メグレがクロスビー達と乾杯をしている様子を皮肉な笑みをたたえながら観ているラデックと、それに気づくメグレの場面が今後の展開を感じさせてくれました。
クポールのBGMの為か、ラデックと話すシーンは、やたらお洒落な雰囲気に包まれており、ウルタンの現在いる場所との対比となっていたと思います。
原作からドラマに向かない所を上手く変えて、原作の良さは変えない。
最初から最後まで緊張感が途切れることなく観れる、面白いドラマです。
観た範囲では90年代中期は傑作が多い印象ですが、この作品もその例に漏れない傑作でした。
キャスト
ジュール・メグレ/ブリュノ・クレメール Bruno Cremer
ジャンヴィエ/ジャン・クロード・フリッサン Jean-Claude Frissung
トランス/エリック・プラット Eric Prat
モリス/ピエール・バイヨ Pierre Baillot
デュフール/ルネ・レンブリエ René Remblier
ラデック/エマニュエル・サランジェ Emmanuel Salinger
クロズビー夫人/マリサ・ベランソン Marisa Berenson
クロズビー/ジェイ・ベネディクト Jay Benedict
ジョゼフ・ウルタン/オリヴィエ・アシャール Olivier Achard
エドナ/ゾラ・ジャンドヴァー Zora Jandová
同一原作の映像化
アリ・ポール主演(仏)
『モンパルナスの夜』(1933)
チャールズ・ロートン主演(米・仏)
『エッフェル塔上の男』(1950)
ルパート・デイヴィス主演シリーズ(英)
シリーズ3 第10話「Death in Mind」(1962) ※日本未紹介
ジャン・リシャール主演シリーズ(仏)
第2話「La tête d'un homme」(1967) ※日本未紹介
第59話「La tête d'un homme」(1983) ※日本未紹介
ブリュノ・クレメール主演シリーズ視聴記録
☆がお気に入り、〇がお気に入りには後一歩だけど楽しめた作品、△が思うところはあるけどドラマとしては悪くない作品です。
全て現時点での評価になります。
〇01「メグレと消えた死体」(1991)
04「モンマルトルのメグレ」(1992)
☆06「メグレと深夜の十字路」(1992)
☆07「ホテル・マジェスティックの地下室」(1993)
☆08「メグレたてつく」(1993)
☆11「メグレと宝石泥棒」(1994)
☆16「メグレと老婦人」(1995)
☆19「サン・フィアクル殺人事件」(1995)
☆21「男の首」(1995)
☆23「パリ連続殺人事件」(1996)
☆25「聖歌隊少年の証言」(1997)
△31「ジュモン51分の停車」(1999)
△32「メグレは二つに見える」(2000)
△37「メグレとワイン商」(2002)
38「メグレと政府高官」(2002)
〇40「メグレと奇妙な女中の謎」(2002)
☆41「メグレと田舎教師」(2002)