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老人ホームを舞台とした高齢者が元気なミステリーシリーズを紹介

高齢者が主役のミステリーシリーズは、ミス・マープルを始め数多くありますが、今回はその中でも老人ホームを舞台に、高齢者がチームを組んで事件に立ち向かうシリーズを3つ紹介したいと思います。


《海の上のカムデン騒動記》シリーズ

作者:コリン・ホルト・ソーヤー Corinne Holt Sawyer
舞台:アメリカ

概要

高級老人ホーム〈海の上のカムデン〉に入所しているアンジェラとキャレドニアを主人公に展開されるコージーミステリーになります。
作者自身が老人ホームに入所しており、入所している老人ホームをモデルに描いているとの話です。

ロケーションに恵まれている高級老人ホームは、倹約家で入居者のことを理解していない支配人との戦いがあったり、怖ろしい看護師がいたりとイベントに事欠きません。もちろん、殺人というとんでもないイベントも度々起こってしまいます。
基本は、軽快で毒舌溢れるコメディー調でありながら、ふと描かれる高齢者の悲哀が良いアクセントのシリーズです。

時々外部の事件に関わる事になりますが、基本的には〈カムデン〉が主要な舞台となることが多いため、今回紹介する3つの中で、主役組以外の入居者の印象がもっとも残るシリーズになります。
また、レギュラー捜査陣のマーティネス警部補が優秀で、程よく場を締めてくれるので、素人探偵達の暴走を読みやすいものにしてくれています。

今回紹介する3つの中では、一番「老人ホームミステリー」を味わえる作品だと思います。
また、少し緩めですが推理の手がかりはしっかり記載されており、物語も基本的には事件の謎を追いかけるタイプの話になっているので、伝統的な謎解きミステリー作品が好きな人には、3つの中では一番オススメです。

翻訳済みシリーズ一覧

01.老人たちの生活と推理 The J. Alfred Prufrck Murders(1988)
02.氷の女王が死んだ Murder in Gray and White(1989)
03.フクロウは夜ふかしをする Murder by Owl Light(1992)
04.ピーナッツバター殺人事件 The Peanut Butter Murders(1993)
05.殺しはノンカロリー Murder Has No Calories(1994)
06.メリー殺しマス Ho - Ho Homicide(1995)
07.年寄り工場の秘密 The Geezer Factory Murders(1996)
08.旅のお供に殺人を Murder Olé!(1997)

《犯罪は老人のたしなみ》シリーズ

作者:カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ Catharina Ingelman-Sundberg
舞台:スウェーデン

概要

冷えたご飯に外出制限。ダイヤモンドホームのオーナーが変わってから、経費削減が最優先になり入居者への待遇がどんどん悪くなっていく。それならば、自分たちが誰も傷つけない犯罪で金を稼ぐしかないと、入居者のメッタはコーラス団の仲間4人と協力して、人を傷つけない犯罪で大金を得ようと計画をたてる。
老人犯罪団〈ネンキナー団〉が、金儲けだけを考える連中相手に犯罪を遂行するシリーズです。

ユーモア系の作風で、倫理観薄めの少し抜けた人達ばかりが出てきます。
ネンキナー団の考える犯罪は、うまくいかないことも多く、上手くいっても運が良かっただけだったり、どこか抜けているものが多いです。警察や凶悪犯罪者も少し抜けているところがあり、肩の力を抜いて楽しめます。

日本では2作しか翻訳されていませんが、本国では2022年までに5作発売されており、老人たちの犯罪は続いているようです。

翻訳済みシリーズ一覧

01.犯罪は老人のたしなみ Kaffe med rån(2012)
02.老人犯罪団の逆襲 Låna är silver råna är guld(2014)


《木曜殺人クラブ》シリーズ

作者:リチャード・オスマン Richard Osman
舞台:イギリス

概要

引退者用の高級施設クーパーズ・チェイスで〈木曜殺人クラブ〉を結成する、元スパイのエリザベスを中心とした老人4人組が、犯罪を追いかけるシリーズです。

事件の謎がユーモアと老年の悲哀を交えながら書かれており、そのバランスが絶妙です。基本的にはユーモア寄りのノリですが、時折身近な人がいなくなる不安などが程よく挟まれることが物語上の良いスパイスとなっています。
また、章毎の区切りが短く、視点人物の切り替えも多いですが、散漫にはならず読みやすさに繋がっています。

1作目は施設内の殺人事件でしたが、2作目からはマフィアなども絡む派手なものになっていくエンタメ性の強さも特徴のシリーズです。
しかも、以前出てきたキャラクターは、続編でも出てくる形式なので、どんどん馴染みの登場人物が増えて行きます。

2作目以降は老人ホーム感が少し薄めですが、謎解き要素もあるエンタメ小説が好きであれば間違いなく楽しめると思います。

現在、新作が出るたびに翻訳されているシリーズでもあるので、続編も楽しみです。

翻訳済みシリーズ一覧

01.木曜殺人クラブ THE THURSDAY MURDER CLUB(2020)
02.木曜殺人クラブ 二度死んだ男 The Man Who Died Twice(2021)
03.木曜殺人クラブ 逸れた銃弾 THE BULLET THAT MISSED(2022)




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