ミセス・ハリス シリーズ②『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』Mrs Harris Goes to New York(1960)紹介と感想
ポール・ギャリコ 亀山龍樹訳『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』KADOKAWA, 2023
去年、原作も映画も楽しんだ『ミセス・ハリス、パリへ行く』に続くシリーズ第2弾を読みました。
あらすじ
ハリスおばさんとバターフィールドおばさんの家の間に住んでいる少年・ヘンリーは、一緒に住んでいる里親一家に日常的に虐待されていた。
心を痛めていたハリスおばさんは、得意先であるシュライバー夫妻のアメリカ転勤への同行をチャンスに、ヘンリーをアメリカにいる父親の所へ連れて行こうと画策する。
バターフィールドおばさんも巻き込み、ヘンリーを密航させることには成功したが、その後もハリスおばさんが想像もしていなかった問題が次々と起こっていく。
果たして、無事にヘンリーの父親を見つけて、ハリスおばさんの幻想通りにハッピーエンドを迎えることができるのだろうか。
紹介と感想
前作に続き、大人のおとぎ話としての面白さに溢れており素晴らしかったです。
前回はドレスという物が目的だったので、ある意味ではハリスおばさんの意志で結果を見通し易かったところもありました(とはいえ、簡単にはいかなかった訳ですが)。
しかし、人間が絡む今回は、イギリスからアメリカへの密航、アメリカでの父親捜しなど、ミッションの内容に自分ではコントロールできない要因が多く、さすがのハリスおばさんでも大打撃を受ける場面が何度もありました。
それでも、持ち前の行動力と人を信じ、人に親切にする力で幸運をつかんでいく姿には感動を感じます。
それには、善と善が繋がる物語を説得力と面白さをもって描くことができ、そのような幸せの循環が訪れることを本気で祈って執筆しているだろうギャリコの力が大きいと思います。
ハリスおばさんの危なっかしいけど応援したくなる行動力から、幸運とは、それに見合うだけの行動をした者に訪れるのだと感じました。
また、そんなハリスおばさんと触れ合う人々も大変魅力的でした。
前作から引き続き登場のバターフィールドおばさんやシャサニュ侯爵だけでなく、今作から登場したベイズウォーターさんや大勢のジョージ・ブラウン氏なども善人が多く気持ちよかったです。
クレイボーンも好きではありませんが、虚勢を張っていた小物だと思うとかわいく感じました。
最後は全ての人間関係が丸く収まり、夢のような大団円で幕を閉じる物語にほっこりとした気持ちになりながら、ロンドンへ帰ったハリスおばさんの次の冒険が既に楽しみです。
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