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NETFLIX『今日もあなたに太陽を~精神科ナースのダイアリー』(2023)紹介と感想

「精神科看護師が主人公なんて珍しいな」位の興味で見始めましたが、見事にハマったドラマについて、良かったという気持ちを残しておきたいと思います。
まとまりがない部分もあると思いますが、観た後の勢いを優先させました。


ドラマ概要

大学病院の内科で勤務して3年目の看護師、チョン・ダウン。患者のことを大切に思うあまり、入れ込みすぎて器用に仕事を行うことができず周囲と上手く馴染むことが出来ずにいた。
精神科病棟へ異動となるが、今までと違う環境に最初はとまどい、自分のよかれと思ってした行いが患者の状態悪化に繋がることもあり落ち込む事も。
それでも、持ち前の真面目さと人柄の良さで徐々に病棟へ馴染んでいく。
同僚の医師や看護師も癖は強いが面白い人ばかりで、忌憚なく話せる幼馴染も居る。最近は、肛門科医師トン・ゴユンとも知り合いになった。

患者だけでなく、医療者や幼馴染も様々な問題で悩みながら日々生活するなかで起こる悲喜交々の人間模様。
精神科ナースとして経験を積んでいくチョン・ダウンの姿を軸に、周囲の人々の生き様も描く群像劇。

原題:정신병동에도 아침이 와요
製作:韓国/2023年
話数:全12話(各話52分~72分)
日本語吹き替えあり

紹介と感想

精神科病棟や精神疾患を、エンタメとしても楽しめるドラマとしてここまで丁寧に描いてる作品は珍しいと思います。
また、群像劇として病院外の出来事も丁寧に描くことで、精神疾患とは特定の人がなるものではなく、誰もがなりうるものだということも丁寧に描いていました。
「何かを失うことで病気になることがある」とは主人公の独白ですが、これは誰にでも起こりうることだと、ドラマを通して描かれています。

外からはわかりづらい精神疾患の症状を、映像面で分かりやすくなるように上手に演出しているため、観ながら苦しくなる場面もあります。
しかし、シリアスに偏る訳でなく、程よくコミカルな場面が入るため、ドラマ全体のバランスは良かったと思いました。

コミカルな描写では、夜勤の時に食べ物を病棟に持ち込む方法が好きでした。介護士+看護助手みたいな立場のユンさんは、誰よりも病棟に詳しく患者からの信頼も篤いと仕事のできる人ですが、出前を頼んで病棟まで持ち込む才能も有能すぎました。

患者側の辛さだけでなく、精神科に来たばかりの主人公を通して、妄想の対象になることの辛さや、主人公からみたら仕事が出きる人にも仕事で泣いた過去があることなど、医療者の大変さも描かれているので、自身の働き始めてからの仕事を振り返ったりしながら観ていました。

第7話より、大切な人を亡くした人達のグループカウンセリングの様子

働く年数が増えると、少しずつ自分の中で仕事の方法が確立するとともに、思考が固着化してしまうところがあり、それが対応にも表れていると感じる時があるため、常に個人と向き合うという事を忘れずにいたいと気が引き締まりました。

不安や悩み、入院だけで解決できる訳ではないことも描写しながら、最後まで見ると未来への希望が感じられるように作られており、ドラマとしてもまとまり良く終わっているため、ある程度スッキリと観終わることができます。

ただ、テーマの関係上、発症までの出来事や症状による辛い描写、社会からの偏見、治療をしても救われない患者や、順調に回復に向かわない患者も描かれているため、あまり元気が無い時や入れ込みすぎる人は注意が必要かもしれません。

シリアスとコミカルのバランスがよく、群像劇として魅力的なキャラクターが多いエンタメとしても楽しめるドラマなので、精神科に詳しくない人にこそ観てもらい、精神科のことを知ってほしいと思いました。

「もう少し自分自身を愛して欲しいです。心苦しいです。ここには良い人しかこないのに」
「だから、看護師さんもここに居るの?ここには良い人しかこないんでしょ」

私たちに必要なのはおそらく〈嫌われる勇気〉だ。それなのに、人に愛されたくて、認めてもらいたくて、周囲の顔色を窺い、魂にナイフを突きつける。そのせいで、いつだって辛くて不幸なのだ。

『今日もあなたに太陽を~精神科ナースのダイアリー~』第2話より
ダウンとキム・ソンシクの会話と、ダウンの思い
現場も楽しそう

印象的だった登場人物

群像劇として多くのレギュラーが出てくる本作。どのキャラクターも最後には好感を持ってみることができますが、その中でも特に好きだったキャラクターについて語りたいと思います。

入院患者編

入院患者では、キム・ソンシクさんとキム・ソワンさんが大好きでした。
どちらも社会の犠牲になったと言えるような人たちながら、他者への優しさを忘れない人柄がとても素晴らしかったです。
でも、良い人ほど悩みも強く回復に結びつかないことも多い現実。ソワンさんの未来が閉ざされたのも辛かったけど、ドラマとしては明るく終わった中で、ソンシクさんに回復傾向が見られなかったのがかなり辛かったです。
ソンシクさんは、回復まで長期化しそうですが、腎臓の方も安定させて、少しずつ自分の居場所を作れるように願っています。
余談ですが、ソンシクさんが佐藤二郎さんに見えてしまったので、もし日本でリメイクがあるとしたら佐藤二郎さんでお願いしたいです。

左がソンシクさん、右がソワンさん

医療者編

医療者では頼れる師長ソン・ヒョシンと病棟の頼れる存在ユン・マンチョンが好きでした。
師長さんは、「こんな師長さんのもとで働けたら良いな」という具現化のような安定感があり、最終回間近で引越し騒動が起きた時には、「誰か師長さんの力になってあげて」と願わずにはいられませんでした。
ユンさんは最後まで頼れる存在であり、自分も病棟で働いている時にどれだけ看護助手さんから助けられ教えてもらえたかを思い出しながら観ていました。
この二人に限らず看護チームの仲の良さとチームワークが素晴らしく良い職場だと思いました。

病棟の人間関係が良くて羨ましい

最初と最後で印象がガラッと変わったランキング1位はファン・ヨファン医師になります。
正直、第2話での主治医単独で完結させている患者対応などから、最初は看護師の立場から観ると全体を観ることができない嫌な医者かと思いましたが、良い育ちだから世間知らずな所もあるけど根はとても良い人というのが見て行くと分かり、ミン・ドゥルレに少年のような純粋さで向かっていく姿がどんどん可愛くなりました。もちろん、医師としての腕間も良かったです。

印象が変わった男 ファン・ヨファン 今はかわいい存在

その他

忘れちゃならないのが幼馴染のソン・ユチャンだと思います。
トン・ゴユンとダウンを巡って恋のライバルとなりますが、全体的に負けヒロイン的な雰囲気が濃厚で、「メシ奢れ」に込められる悲哀に応援を止められませんでした。
また、自身もパニック障害と向き合い、最後は再就職先の会社で勇気を出して行動する姿には、素直に感動しました。ユチャンの行動が、部署全体の空気を変えていけそうな希望が描かれていましたし、そこから更に生きやすい社会にまでつながると良いなと思います。

ユチャンも幸せになってほしい

キャスト

 チョン・ダウン/パク・ボヨン(福圓美里)
  トン・ゴユン/ヨン・ウジン(西村健志)
 ソン・ユチャン/チャン・ドンユン(沢城千春)

 ソン・ヒョシン/イ・ジョンウン(浅井晴美)
  パク・スヨン/イ・サンヒ
ホン・ジョンラン/パク・ジヨン
 ミン・ドゥルレ/イ・イダム
ユン・マンチョン/チョン・ベス

 イム・ヒョクス/キム・ジョンテ
ファン・ヨファン/チャン・ユル
  チャ・ミンソ/コン・ソンハ
  コン・チョル/イム・ジェヒョク

  キム・ソワン/ノ・ジェウォン
 キム・ソンシク/チョ・ダルファン
  ソン・エシン/コ・ソヒ

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