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読書感想文

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2024年3月の記事一覧

阿津川辰海『阿津川辰海読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』紹介と感想

阿津川辰海『阿津川辰海読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』光文社, 2022 本書は、ミステリー作家であり無類の読書好きである著者の、本への愛と博識ぶりが分かる、全3部構成の解説・エッセイ集になります。 その紹介数は総勢362名、1,018作品と驚きの量。 第23回本格ミステリ大賞[評論・研究部門]受賞作です。 「第1部 阿津川辰海は嘘をつかない~阿津川辰海 読書日記~」では、〈ジャーロ〉のサイト内で現在も連載しているエッセイから、2022年3月掲載の第

笹沢左保『東へ走れ男と女』(1967)紹介と感想

笹沢左保『東へ走れ男と女』徳間書店, 1983 前から読みたいと思っていた笹沢左保。読みたいと思っていた本とは違いますが、病棟の本棚に本書があったため手にとってみました。 ドラマ化作品は何作か見ていますが、著者の本を読むのは初になります。 あらすじ 大和田順、30歳。妻は浮気の末に学生と心中し、会社に復帰すると後輩が持ち逃げした60万円の責任を取って返済しろと会社から求められる。 何もかも嫌になった大和田は、会社を辞めると決心した夜に、謎の女に声をかけられ田園調布にある

竹本健治『匣の中の失楽』(1978)紹介と感想

竹本健治『匣の中の失楽』講談社, 1991 『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』の日本三大奇書にプラスして、日本四大奇書と言われる際に追加される本書『匣の中の失楽』。 夢水清志郎の某作品など、様々な作品で名前を知っていながら読む機会がなかったのですが、これまた病棟の本棚にあったため、入院と言う果てしない時間を利用して読了しました。 入院中でなければ読むのに少し時間がかかったかもしれないため、良いタイミングで読めたと思います。 面白かったとも言えるし、作品内で

清水義範『青山物語1974 スニーカーと文庫本』(1994)紹介と感想

清水義範『青山物語1974 スニーカーと文庫本』光文社, 1995 これまた阿津川さんの紹介で読みたくなっていた清水義範の著書が病棟の本棚にあったため、手に取ってみました。 著者の本を読むのは初ですが、ユーモア系の人というイメージだけあります。 あらすじ オイルショックに物価高騰、ユリ・ゲラーがフォークを曲げて、長嶋茂雄は引退し、田中角栄は辞任に追い込まれると、1974年は大変な1年だった。 そんな中、平岡義彦は悩んでいた。 26歳、サラリーマン生活3年目の義彦は、仕事

佐々木譲『笑う警官』(2004)紹介と感想

佐々木譲『笑う警官』角川春樹事務所, 2007 前から読みたいと思っていた〈道警シリーズ〉第1作目を、入院中に読むことができました。 以前感想を書いた阿津川さんの本でも紹介されており、読みたい熱が高まっていたので良かったです。 読んでみると期待以上に面白く、シリーズの続編も読みたくなりました。 あらすじ 大通署刑事課盗犯係の佐伯と新宮は、小樽まで出向き盗難自動車の密輸に関係した男を確保してきたが、道警本部にかすめ取られてしまう。 同日、円山にあるアパートの一室で女性の

黒岩涙香「血の文字」「紳士の行ゑ」+エミール・ガボリオ「バチニョルの小男」 紹介と感想

黒岩涙香著『黒岩涙香探偵小説選Ⅱ』論創社, 2006 各務三郎編『クイーンの定員Ⅰ 傑作短編で編むミステリー史』光文社, 1992, p.127-203 今回は、エミール・ガボリオの作品を翻案した2作品と、「血の文字」原作である「バチニョルの小男」を紹介したいと思います。 カボリオの原作もホームズとライバルたちの時代に負けない面白い物語ですが、それを涙香がどう調理したのかを観ることで、涙香が論理的な考え方を重視していたのが分かるものとなっていました。 エミール・ガボリオ

芥川龍之介 読書記録②(開化の殺人/開化の良人/魔術/黒衣聖母/影/妙な話)

開化の殺人(「中央公論」1918年7月) 語り手が最近手に入れた、ドクトル・北畠義一郎(仮名)が本多子爵夫妻(仮名)に宛てた遺書。その遺書にはドクトルが幼き頃より想いを寄せていた現子爵夫人・明子への強い愛と、愛ゆえに犯した殺人についての告白が書かれていた。 本編は古めかしい遺書の文体で進むため、少し読みづらかったです。 しかし、それでもドクトルの、不貞を行った者を殺し、明子を救うという建前の元に殺人を犯し愉悦に浸る瞬間や、本多子爵へも同じことをしようとしている自分に気づ

2024年2月の読書まとめ

2月は、1月から引き続き『夜明けの図書館』と『税金で買った本』を、寝る前読書として少しずつ読み進めていました。 『夜明けの図書館』は遂に最終巻を残すのみとなり、『税金で買った本』も最新刊に追いつきそうで少し寂しい。 どちらも図書館を題材にしていながら、扱っている内容もノリも違い、楽しく読めてます。 読み終わったら、感想を残しておきたいと思っています。 活字は、気になっていたエッセイ系の本を何冊か読みました。 『阿津川辰海読書日記』は、ミステリー作家であり無類の読書好きで