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アガサクリスティーについて

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アガサ・クリスティー関係の記事をまとめています
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#テレビドラマ感想文

アガサ・クリスティー『茶色の服の男』The Man in the Brown Suit(1924)+殺しのブラウン・スーツ(1989)紹介と感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『茶色の服の男』早川書房, 2020 今回は、購入以来読めていなかったハヤカワ・ジュニア・ミステリ版で再読しました。 あらすじ 冒険に憧れていたアン・ベディングフェルドは、父親が死んだことを機に、僅かな遺産を持ってロンドンへと出て来た。 ある日のこと、アンは地下鉄のホームから男が落ちて死んだ現場に遭遇し、その死体に近寄った茶色の服の男が落としたメモを拾う。 その後、二人の男はサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミル・ハウスで起こった

アガサ・クリスティー『パーカー・パインの事件簿』紹介と再読感想

アガサ・クリスティ 山田順子訳『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』東京創元社, 2021 アガサ・クリスティー・アワーを再見したため、シリーズ内でドラマ化されたパーカー・パインも再読しました。 また、パーカー・パインは個別短編集の他に2編の短編があり、早川書房では『パーカー・パイン登場』と『黄色いアイリス』に分かれて収録されています。 東京創元社の『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』では、この別に収録されていた2編も合わせて1冊に納めておりクリスティーによる前書きもあ

アガサ・クリスティー『殺人は容易だ』ドラマ作品 紹介と感想

『殺人は容易だ』Murder Is Easy(1982/米) ワーナーが80年代に製作していたクリスティー原作テレビ映画シリーズの1本です。 時代は製作当時の80年代になっており、舞台はイギリスの村ですが、ルークはアメリカ人でコンピューターの専門家になっています。 ルークを事件に呼び込むことになるフラトン(原作のピンカートン)には、同じくワーナー製作版『カリブ海の秘密』『魔術の殺人』でミス・マープルを演じるヘレン・ヘイズが出演しています。 他にも、オリヴィア・デ・ハヴィ

『ゼロ時間へ』映画・ドラマ 紹介と感想

クリスティー原作の中でもメディアミックス展開されている媒体が多い作品の一つが『ゼロ時間へ』になります。BBC製作のミニシリーズで制作も予定されているため、一度整理したいと思いました。 今回は、映画とドラマを紹介します。 映画『ゼロ時間の謎 L'Heure zéro』(2007/仏/108分)  監督:パスカル・トマ  脚本:フランソワ・カヴィグリオリ 物語は原作と同じくトリーヴス弁護士がゼロ時間の考えを語る所から始まりますが、この場にバタイユ警視(原作のバトル警視)が居

アガサ・クリスティー『忘られぬ死』ドラマ+漫画作品 紹介と感想

過去に3本の映像化がありましたが、どれもミステリー部分は原作を踏襲しながら、肉付けに独自の味付けをし過ぎており、原作の魅力を映像化できたものは無かったと思います。 特に、第一の殺人から現在進行形のドラマとして描いてしまい、登場人物描写をドラマの狙いに収まる形で簡略・改変していることが、原作の良さを損なっている要因だと考えられます。 『忘られぬ死』Sparkling Cyanide(1983/米) 陽気な音楽と街並みで始まる本ドラマは、原作から感じる印象と大分変っています

アガサ・クリスティー『招かれざる客』The Unexpected Guest(1958)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『招かれざる客』早川書房, 2011(電子書籍) あらすじ 霧の濃いある晩。サウス・ウェールズにあるウォリック家のリチャードの書斎に、スタークウェッダーという男が訪ねてきた。 車が溝にはまってしまったため助けを求めに来たスタークウェッダーは、車イスの上で死んでいるリチャードを発見した。 書斎の中にはもう一人、リチャードの妻・ローラが銃を手に持ち茫然と立っていた。 彼女は、スタークウェッダーの質問に答える形で自分が殺した事を認めた。 スター

クリスティー短編の魅力を伝える良作『アガサ・クリスティー・アワー』(1982)ドラマ概要+「仄暗い鏡の中に」「車中の娘」 紹介と感想

クリスティーのノンシリーズ短編8話とパーカー・パインから2話をドラマ化したドラマシリーズになります。 どの話も大筋は原作に沿いながら、ドラマとしてのアレンジが上手く面白い話が揃っています。 純粋な謎解きストーリーは無く、サスペンスからホラー、ロマンスを扱った作品が多いのが、他のクリスティー映像化とは違う特徴になります。 また、描かれる時代は、全て執筆当時の1920~30年台です。 ポワロやマープルがいなく、有名作品ではない中でも、しっかり受け入れられ高視聴率を得ていたよう

『アガサ・クリスティー・アワー』(1982) 「第四の男」「マグノリアの香り」 紹介と感想

第4話「第四の男」The Fourth Man 原作:アガサ・クリスティー「第四の男」(1925)    早川書房『死の猟犬』所収 脚本:ウィリアム・コーレット 演出:マイクル・シンプソン あらすじ エジンバラ行の夜行列車のコンパートメントの中に、医者のクラーク、弁護士のデュラン、宗教関係のパーフィットに、もう一人の男と4人が乗っていた。 クラークは、デュランとパーフィットに自身の公演のテーマである二重人格について話していた。 すると、四人目の男・新聞記者であるラウルが

『アガサ・クリスティー・アワー』(1982) 「青い壺の秘密」「赤信号」 紹介と感想

第7話「青い壺の秘密」The Mystery of the Blue Jar 原作:アガサ・クリスティー「青い壺の謎」(1924)    早川書房『死の猟犬』所収 脚本:T.R.ボウエン 演出:シリル・コーク あらすじ ジャックは弁護士の試験勉強をしながらゴルフの練習もするためにホテルに投宿していた。 ある日の早朝、一人でホールを回っていたジャックは、女性の声で「人殺し!助けて!」という叫び声を聞いた。 近くの家に駆けつけると、若い女性が立っていたが、叫び声など聞いてい

『アガサ・クリスティー・アワー』(1982) 「ジェインの求職」「エドワード・ロビンソンは男なのだ」 紹介と感想

第9話「ジェインの求職」Jane in Search of a Job 原作:アガサ・クリスティー「ジェインの求職」(1924)    早川書房『リスタデール卿の謎』所収 脚本:ジェラルド・サヴォリー 演出:クリストファー・ホドソン あらすじ 仕事が見つからず家賃も払えないジェイン。 同じ建物に住むゲストから、タイムズの求人欄にジェインと同じような見た目・年頃でフランス語が堪能の女性を求める求人を紹介される。 試しに面接を受けてみると、多くの合格者を押しのけて見事合格し