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アガサクリスティーについて

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アガサ・クリスティー関係の記事をまとめています
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#テレビドラマ感想文

1980年台ワーナー・ブラザーズ製作アガサ・クリスティー作品 全8作紹介

1980年代はアメリカ、イギリスの両国でクリスティーのテレビドラマ化が盛んに行われました。 イギリスでは80年代にトミーとタペンス、ミス・マープル、エルキュール・ポワロと、クリスティー有名探偵達の決定版と言えるシリーズが作られており、とても重要な年代になります。 一方、アメリカではワーナー・ブラザーズがクリスティー映像化を盛んに行っていました。 このワーナー製作のクリスティー作品を一か所にまとめておきたいと思います。 ワーナー製作テレビ映画の特徴 1982年の『殺人は

アガサ・クリスティー『エッジウェア卿の死』映像化作品 紹介と感想

ネタ的に説得力を持って映像で表現するのが難しい所がありながら、女優がメインキャラクターとしていることに惹かれるのか映像化の多い本作。 最近、オースティン・トレバー版も観れたので、ここで感想を残しておきます。 原作の映像化として今から観るのにオススメなのは、スーシェ版とユスティノフ版。戦前のミステリー映画に抵抗が無ければトレバー版も意外と楽しめると思います。 フランスドラマ版は原作ドラマとしては微妙なため、シリーズファン向けというところです。 オースティン・トレヴァー主演 

アガサ・クリスティー『死者のあやまち』映像化作品 紹介と感想

ピーター・ユスティノフ主演 ドラマ版 第2作『死者のあやまち』Dead Man's Folly(1986/米) ヘイスティングスとオリヴァー夫人が夢の競演をするユスティノフ版は、他のドラマ版と変わらず制作当時が舞台となっています。 80年代を舞台としているのが、日本の2時間サスペンスでも良く見る当時を再現するには予算や時間がかかるという都合によるもので、80年代である意味がなく、むしろ雑音であるというのは雰囲気に浸りたい人にはマイナスポイントになるかと思います。 ジーン

ヘレン・ヘイズ主演ミス・マープルシリーズについて(1983・1985)

1980年代にワーナー・ブラザーズ制作のテレビ映画として2作品が作られたヘレン・ヘイズ主演のアメリカ製ミス・マープル。 舞台となっている時代は制作当時の80年代になります。 ミステリーとしてあまり複雑ではない2作品が選ばれ、そこから更に原作よりミステリーとして緩く仕上げてあります。 ヘレン・ヘイズ演じるマープルは原作のマープル像とは違いますが、ヒクソン版以外の映像化も原作のマープル像とは違うマープルの方が多いためさほど気になりません。 2作品とも娯楽ミステリードラマとして充

ドラマ『おしどり探偵』(1983~1984)シリーズ概要+「桃色真珠紛失の謎」「謎を知ってるチョコレート」紹介と感想

ドラマ概要 題名:Agatha Christie's Partners in Crime 製作:LWT/イギリス/1983~1984年 話数:SPドラマ+全10話 時間:51分 レギュラーキャスト    タペンス/フランセスカ・アニス(田島令子)     トミー/ジェームズ・ワーウィック(佐々木功/家中 宏)   アルバート/リース・ディンズデール(中尾隆聖) マリオット警部/アーサー・コックス(水島鉄夫) エピソードリスト SP.秘密機関 01.桃色真珠紛失の謎 0

『おしどり探偵』(1983~1984)「サニングデールの怪事件」「牧師の娘」 紹介と感想

第3話「サニングデールの怪事件」 原作:「サニングデールの謎」 原作通り事件関係者との接触はありませんが、ABCショップは最初だけで、中盤からは実際の事件現場へ二人が足を運ぶ展開になっています。 また、ドリス・エバンスのパートも映像として詳細に描かれています。 原作が持つ、ディスカッションを重ねながら既に起きた事件の真相に近づく面白みが再現されながら、ホテルで楽しそうに過ごすトミーとタペンスという日常パートも楽しめます。 事件の構造的にもサスペンス感は薄いですが、事

『おしどり探偵』(1983~1984)「キングで勝負」「大使閣下の靴の謎」紹介と感想

第5話「キングで勝負」 原作:「キングの裏を書く」「新聞紙の服を着た紳士」 原作の「キングの裏を書く」の部分をテンポよく進めていき、「新聞紙の服を着た紳士」以降の展開を膨らませています。とはいえ、前半部分のホームズとワトソンの仮装をする二人も楽しそうで良きでした。 ミステリーとしては比較的単純な話のため、追加部分の楽しみは、原作よりも増したドラマ性とアルバートの出番になります。 スタッフ 脚本/ジェラルド・サヴォリイ 監督/クリストファー・ホドソン ゲスト アーサ

『おしどり探偵』(1983~1984)「霧の中の男」「鉄壁のアリバイ」紹介と感想

第7話「霧の中の男」 原作:「霧の中の男」 ドラマシリーズでは原作と違い名探偵なりきりについての言及がホームズ以外は全体的に少なくなっていますが、本作品は原作通り神父姿のトミーにブラウン神父の名前も登場しています。 滝口順平さんの名演が光るバルジャーも事件に絡むようになり、事件前には霧の中の幽霊の話も入りミステリアスな雰囲気の熟成も怠りなく仕込んでいます。 地元を離れての事件のためアルバートがいないのは残念ですが、シリーズ短編でも完成度の高い一編を謎解きミステリーと

『おしどり探偵』(1983~1984)「婚約者失踪の謎」「かくれ造幣局の謎」紹介と感想

第9話「婚約者失踪の謎」 原作:「失踪した夫人の謎」 スーザンに会いに行く時にスターベンソンも同行したり、スーザンの怪しい電話をしているところを描いたり、前半で療養所の様子を描写したり、全体的に原作を上手く膨らませています。 特に、原作では2ページ程度でオチに向かっていた療養所の中を調べるシーンを思いっきり膨らませ、タペンスが変装して療養所へ潜入することでサスペンスを盛り、ドキドキ感を煽ってきます。これは、ドラマオリジナルで中盤以降のタペンスの好敵手、クレイバーの厳格

アガサ・クリスティー『茶色の服の男』The Man in the Brown Suit(1924)+殺しのブラウン・スーツ(1989)紹介と感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子訳『茶色の服の男』早川書房, 2020 今回は、購入以来読めていなかったハヤカワ・ジュニア・ミステリ版で再読しました。 あらすじ 冒険に憧れていたアン・ベディングフェルドは、父親が死んだことを機に、僅かな遺産を持ってロンドンへと出て来た。 ある日のこと、アンは地下鉄のホームから男が落ちて死んだ現場に遭遇し、その死体に近寄った茶色の服の男が落としたメモを拾う。 その後、二人の男はサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミル・ハウスで起こった

アガサ・クリスティー『チムニーズ館の秘密』The Secret of Chimneys(1925)紹介と再読感想+漫画・ドラマ感想

アガサ・クリスティ 山田順子訳『チムニーズ館の秘密』東京創元社, 2024 お屋敷ミステリーの側面もある初期の冒険物。創元で新訳が出たので再読しました。 あらすじ 友人のジミーから大物政治家の回顧録を出版社に、とあるご婦人に手紙の束を届けてほしいと頼まれたアントニー・ケイドはイギリスへと降り立った。しかし、回顧録を狙ってヘルツォスロヴァキアの要人やイギリスの政治家など様々な人間が接近してきて、あまつさえ命まで狙われる。 錯綜する状況の中、全ての秘密はチムニーズ館に集まり

アガサ・クリスティー『七つの時計』The Seven Dials Mystery(1929)紹介と再読感想

アガサ・クリスティー 深町眞理子 訳『七つの時計』早川書房, 1981 Netflixでドラマ化が発表された『七つの時計』を再読しました。 かなり久しぶりの再読でしたが、20年代末期の発表だけあり、初期冒険物では意図して謎解きミステリー要素を強めており面白かったです。 あらすじ チムニーズ館に滞在しているビルやジミーら若者達は、寝坊助の友人ジェリー・ウェイドの部屋に、8つの目覚まし時計を仕掛ける悪戯を実行した。 しかし、翌朝目覚ましが鳴り響く中、ジャリーは既に息絶えてお

アガサ・クリスティー『パーカー・パインの事件簿』紹介と再読感想

アガサ・クリスティ 山田順子訳『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』東京創元社, 2021 アガサ・クリスティー・アワーを再見したため、シリーズ内でドラマ化されたパーカー・パインも再読しました。 また、パーカー・パインは個別短編集の他に2編の短編があり、早川書房では『パーカー・パイン登場』と『黄色いアイリス』に分かれて収録されています。 東京創元社の『パーカー・パインの事件簿【新訳版】』では、この別に収録されていた2編も合わせて1冊に納めておりクリスティーによる前書きもあ

アガサ・クリスティー『殺人は容易だ』ドラマ作品 紹介と感想

『殺人は容易だ』Murder Is Easy(1982/米) ワーナーが80年代に製作していたクリスティー原作テレビ映画シリーズの1本です。 時代は製作当時の80年代になっており、舞台はイギリスの村ですが、ルークはアメリカ人でコンピューターの専門家になっています。 ルークを事件に呼び込むことになるフラトン(原作のピンカートン)には、同じくワーナー製作版『カリブ海の秘密』『魔術の殺人』でミス・マープルを演じるヘレン・ヘイズが出演しています。 他にも、オリヴィア・デ・ハヴィ