1996年札幌・すすきのプレシャスホール
出演させてもらったヘアショーのイベントも終わり、午前12時も過ぎたころ190センチの男が私に話しかけてきた。それは、忘れもしない1年半前、クレタという大きなハコで行われたイベントでパフォーマンスをしたモデルのBAKUだった。
前編は以下から
「この後、別の店でみんなで飲むんだけど、キノも来る?」
普段は人見知りで初めて会う人とはまともに話ができない性格だが、お酒の力で少し大胆になっていた。BAKU以外は初めて顔を合わせる人たち・・・
メイクアップアーティストやタトゥー職人、モデルなど男女数人にまじって、プレシャスホールから別のバーに移動して飲むことになった。
「キノく~ん💛BAKUくんがなにやらカワイイ男の子連れてきたってみんな大騒ぎしてたんだよ~💕」美容師でBAKUの妹分の"MARI"が私に話しかけてきた。
「僕、BAKUくんとは1年半前にクレタ(90年代すすきのにあったディスコ)のイベントで一緒になったことがあって、今回偶然プレシャスのイベントに出てたから気が付いてくれたみたいなの」
一緒にいた皆が私とBAKUの関係に興味津々で質問攻めとなった。
BAKUは彼女と別れ、ひどく落ち込んで心が空っぽのような状態が数か月も続いていた。
彼の友人たちは、新しい彼女候補を紹介するも「今は興味がもてない」と断られ、少しでも元気を出してもらおうと遊びに誘うが、「今は遊ぶ気にはなれない」と断られ続けた。
人にも遊びにも興味を示さなくなるほど数か月間落ち込んでいたBAKUが、半ば強引に連れられてきたイベントで、出演していた男の子、しかもジェンダーレス男子に興味を持ち、グループに連れて来た事を仲間内では
「BAKUが女に懲りて男に走るかもしれない」とか
「いくら可愛くても男の子は絶対にダメ!」とか
「BAKUくんが選ぶ相手なら男女関係ない!」など・・・
様々な思いで二人を見守っていたと、後日知ることになる。
皆がそんな風に見ていたとは夢にも思わず、「かっこいい友達がたくさんできた」と私は、とても喜んでいた。
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