Kentaro Mori

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最近の記事

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『死霊魂』/ワン・ビン(2018) 驚愕の一作であった。 8時間15分という長さと、「反右派闘争」から巻き起こる理不尽というしかない強制収用・強制労働、飢餓による大量死・・・という内容からビビって見逃していたが、杞憂でありまったく退屈せずに観終え、打ち震えた。 最終的には120人ほどの生存者にインタビューをおこなったようだが、生存者ひとりひとりの語りの分厚さ。ひとつひとつのエピソードが「面白く」、笑いさえ感じてくる時もあった。 語っても語ってもその語りは終わらず、溢れ出す

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      『かづゑ的』/熊谷博子(2023) ハンセン病(らい病)者の宮崎かづゑさんのドキュメンタリー。 ここには何が映っていたのか。  自分をすべて見せなければならないという切迫した覚悟だ。ぜんぶそのまままるっとさらけ出した生き様だ。  生き様とは何か。 それは、今は視力も弱くなりPCでの執筆は難しいため、レコーダーに声を吹き込んで「執筆」している、その声を吹き込む様のことだ。 それは、著書にサインをするときのあの線を引く様のことだ。 これらすべてのことだ。 「ちょっと自惚れさ

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        『トア』/サッシャ・ギトリ(1949) おそろしいほどの企みに満ちた傑作。 現実世界での空間、というか一つの室内が丸ごと劇場の舞台にコピーされて、演劇として上演される。(偶然にも部屋の大きさと舞台の大きさは完全に一致している!) 開演前にギトリが観客に「脅迫状が届いた」という話をすると、観客席から元恋人が舞台のギトリに話しかけ、かけあいが始まる。 舞台の出演者もそのまま本人たちで、セリフも現実にあったことを話す。 観客席から追い出された元恋人は、いつのまにか舞台上に現れ、ギ

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          『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)』/今井一暁(2024) 音楽にあふれていた王国が、ある日現れた「ノイズ」によって滅ぼされてしまう。その失われた王国を救うためにドラえもんたちが「ノイズ」を倒し、再び王国に音楽を取り戻させるーーー 物語としてはこのようなものであり、どうしても「正義」と「悪」にわけられてしまい、この映画の場合は「ノイズ」が悪であるという構図には観ている間不満をもったが、観終わってその考えを立ち止まらせたのがのび太のリコーダーの音だ。 例によ