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みかんの仕組み
『ねえ、カナ。みかんって不思議だよね』
ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれるの。世界の不思議、映画や恋愛、そして心のこと。
今日は喫茶店のマスターがケーキづくりで余った蜜柑を1つずつくれたから、それを二人で食べようとしてたんだ。
『ん?蜜柑の何が不思議なの?』
『みかんの中に、またみかんがあるんだよ』
ミホは蜜柑の皮を剥いて、その中の1つ1つの房をはずしながらそう言った。
『蜜柑の房のこと?』
『うん。1つのみかんの中に、みかんの房があって、みかんの房の中には、またみかんの粒があるでしょ。そして目には見えないけど、みかんの粒の中には、また小さなみかんの細胞が詰まってるのよねー』
ミホはあたりまえのことをそのまま話しているだけで、私は正直ピンとこなかったけど、そういえば植物ってそんな形が多い気がする。
『まあ、そうだよね。そういうの多いよね。木だって枝があって葉っぱがあるし、野菜や果物も1つの根っこから、たくさんの花や実になっているよね』
『そうそう。私、それを言いたかったの。でね、このみかんのような生命の仕組みって、世界の重要な真実を表してると思うんだ』
『重要の真実? みかんの中にみかんの粒があるってことの何が重要なの?』
『だってさ。ひとつの中にたくさんのひとつがあって、それが続いてるかと思えば、また逆から見ればたくさんのひとつの上には大きなひとつがあるんだよ』
『・・・うん?』
『うーんとね。まあ、ひと言で言えば、この世界って一つの集まりなんだ。人も植物も一見ばらばらに見えるけど、遠くから見たら、木は森になるし、地球だって星の一つだし、これって、それを意識しながら世界を見つめたら、私たちも世界の一員で、みんなとひとつなんだーって思えてこない?』
『ミホって、そういうの考えるの好きだよね。たしかに私たちって、1つ1つが集まってこの世界ができてるのよね。世界が本当に平和になるためには、そんな意識が必要なのかもしれないよね』
『うん。それにね、こんなこと考えるのってまるっきり無駄じゃないと思うの。みんなが小学校の時から、そんな風に世界を教えてもらってたら、もっとちがう世界になっていくと思うの。だからね、私、それを広めていきたいんだ』
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