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コント台本『休肝日だとしても』

伊沢(男)
28歳会社員。自分で決めたルールには厳しい。家の本棚の単行本は順番バラバラでも気にならないタイプ。

小森(男)
28歳会社員。最近大学時代から付き合っていて結婚も考えていた彼女にフラれた。家に片方しか無い靴下がたくさんあるタイプ。

橋本(女)
31歳雑誌編集者。最近恋をしていない。したい。独り呑みをあげる用のインスタの裏アカがあるタイプ。

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伊沢「そんなさぁ、女にフラれたくらいで落ち込むなって」

小森「そりゃ落ち込むよ…」

伊沢「まぁさ!今日はパーっと飲もうぜ!」

小森「誘ってくれてありがとな」

伊沢「この店で良いか?」

小森「あぁ。」

伊沢、小森、店に入り店員に二人と伝えてカウンターに座る

伊沢「今日はさ、もう嫌な事忘れて朝まで呑み明かそうぜ!」

小森「…そうだよな!飲むか!すみません、僕生ビールで!」

伊沢「俺はコーラで!」

小森「……………?!(え?って感じの表情)」

伊沢「今日はさ!お前の話とことん付き合うから!」

小森「…。(いやいや)」

伊沢「(店員さんに対して)ありがとうございます。さぁ、では!長い夜にかんぱーーーい!」

小森「いやいや…、え?」

伊沢「ん?」

小森「いや…、え?え?」

伊沢「ん?」

小森「……飲まないの?」

伊沢「飲むよ!(コーラのジョッキを上げながら)」

小森「そうじゃなくて、酒。」

伊沢「あー、俺は飲まない!」

小森「え?なんで?」

伊沢「あー、俺最近週に1日飲まない日作っててさ。それが今日!」

小森「え?今日休肝日なの?(笑)」

伊沢「そうだね。」

小森「…今日くらい良くない?(笑)」

伊沢「あーー!全然!お前は気にせずガンガン飲んでくれて良いから!」

小森「いや、そうじゃなくて!今日、お前が飲みに誘ったよな?」

伊沢「うん」

小森「なのにお前が飲まないの?それだと俺もよっしゃ飲もうぜ!!の感じ出ないじゃん…。」

伊沢「別にお前がガンガン飲めば一緒じゃん?」

小森「一緒じゃないのよ!二人で飲むことに意味があるんだから!…あと、今日金曜日よ?金曜日休肝日なの?」

伊沢「うん。そうしてる。」

小森「絶対休肝日に向いてない曜日だって。花金よ?花金休肝日だと…こうなるじゃん。(笑)」

伊沢「こうなる?(笑) まぁ良いじゃん今日は…ん?あ、ごめん電話だ。」

小森「お、おぉう…。」

伊沢「(電話しながら)もしもし、あぁさき。え?ちょっ、そんな急に!おい、さき!おい!(電話を一方的に切られる)」

小森「どうしたの?」

伊沢「…彼女にフラれた。」

小森「え?!マジで?!(笑)」

伊沢「なんなんだよ急に!あいつさぁ!(コーラの残りを一気飲みする)」

小森「おーおー、聞くよ!今日はお前の話も聞くよ!ほら!飲み物頼めよ!」

伊沢「すみません、コーラ1つ!」

小森「コーラぁぁ。今日くらい良いじゃん!逆に良いの?お前は!こんな日にコーラで!夜明かせられる?!」

伊沢「休肝日だからぁ…。あ、また電話」

小森「え?彼女?!」

伊沢「いや、今度は会社。(電話に出て)はい、もしもし。あ、お疲れ様です。はい、はい。…え、いや急にそんな事言われても。詳しい話はまた今度って…。ちょっと、ちょっと待って下さ…!(電話を一方的に切られる)」

小森「…どうしたの?」

伊沢「会社…リストラされた…。」

小森「えーーーーー。(笑)めっちゃ不幸じゃんお前。」

伊沢「もうなんなんだよ!彼女にはフラれ会社もクビ!やってらんねぇよ!(コーラ一気飲み)なぁ、今日は俺の話もして良いかぁ~(泣)」

小森「良いよ!全然良いよ!もう彼女フラれただけの俺の話なんかいいよ!もう今日はお前の話存分に聞いてやるから!!ほら!な!だから!な!(グラス指差しながら)」

伊沢「そうだな…。すみません、コーラで!!!」

小森「どうしてなのよぉぉ。もうここは絶対ビールじゃん!酒じゃん!」

伊沢「今日休肝日だからぁぁぁぁ(泣)」

小森「今日くらい良いじゃぁぁぁぁん(泣)」

橋本、店に入ってきて店員に一人と伝えてその後カウンターの伊沢の隣に座る

伊沢、橋本に気付きその後橋本をチラチラ見る

伊沢「なぁ。」

小森「ん?」

伊沢「(こっそり橋本を指差しながら)…声かけて良いかな?」

小森「お前の頭の切り替えどうなってんの?(笑)」

伊沢「俺、めっちゃタイプだわ。それに嫌な事忘れんのは女と飲むのが一番なんだよ。」

小森「はぁ…。」

伊沢「(橋本に向かって)あのぉ、すみません!…一人ですか?」

橋本「え?あ、はい。」

伊沢「良かった一緒に飲みません?(ジョッキあげながら、少しカッコつけつつ)」

小森「お前よくコーラでそれ言えるな。」

橋本「まぁ、良いですけど…。」

伊沢「やった!えーじゃあ早速、素敵な出会いに乾杯!」

橋本「(乾杯しようとしながら)え?コーラ?」

小森「いや、そりゃそうなるよ。『え?この人カウンターで口説いてきといてソフドリ?』って。」

伊沢「あー、僕今日休肝日なんで気にしないで下さい。」

橋本「え、でも折角なら一緒にお酒を…。」

小森「そうよね。そうよね!」

伊沢「いやいや、僕今日休肝日なんで。」

橋本「いやでも。」

伊沢「休肝日なんで。」

橋本「一緒に飲んだ方が…。」

伊沢「休肝日って言ってるでしょ!!」

小森「えーーーー。」

伊沢「なんなんですかさっきから酒酒って。そんなに酒飲むやつが偉いんですか!」

小森「いや、それ普段飲まないやつが煽られて言うやつだから。お前も普段は酒酒だから。(笑)」

伊沢「あんたも酒ばっか飲んでないでもっと肝臓労りなさいよ!」

橋本、ビックリして固まっている

小森「いやいやいや、なんでお前は口説いた女の人に説教してんの?」

橋本「ふふふ。」

小森「え?」

橋本「なんだかとっても面白い人ですね。…素敵。」

小森「なんか謎に心に刺さったっぽい。」

橋本「確かにたまには肝臓労らないと。ねぇ、二件目行きません?もちろんソフトドリンクでっ。」

伊沢「酒飲まなくて良いなら是非!」

小森「何が起きてんの?」

橋本「私、ソフトドリンクが飲み放題のドリアが美味しいイタリアンのお店知ってるんです。」

小森「…サイゼリヤ?」

橋本「行きましょっ。」

伊沢「ええ。(小森の方向いて)じゃ、そういう事だから!」

橋本、伊沢、店から出ていく

小森「え?え…。(何が起きたか分からない感じで戸惑いつつ店員に)あのーすみません、コーラひとつ。」

おしまい。

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